ペルソナP3P
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駅前のロッカーに預けていた鞄を回収し、期待せずにアパートへ帰ると予想は良い方に外れてアパートは荒らされていない様だった。監視カメラなどを仕掛ける為にアパート内へ何度も入られていることを考えると、今更荒らす必要が無かったというだけかもしれない。
ともあれ自分が土足で歩いた分だけ掃除すればとりあえず今夜は寝られるなと考えたところで、深夜だというのにチャイムが鳴った。すわ桐条財閥の迎えかと警戒しつつ玄関を開ければ、そこに居たのは雲雀である。
「久しぶり」
「久しぶりぃ」
「どうでもいいけど狭いアパートだね」
「一人暮らしだからいいんだぁ」
さも当然だとばかりに部屋へ上がる雲雀に、アマネはドアを閉めて薬缶を火に掛けた。雲雀は部屋をぐるりと一瞥した後、許可も取らずにベッドへ腰掛ける。
お湯が沸くまでの間に床の掃除だけでもしてしまおうと、雑巾を濡らして絞ると肩が痛んだ。ベチャリと落ちた雑巾に掃除を諦め、先に治療かと部屋に戻る。
棚から救急箱を取り出して蓋を開け、服を脱ぐ。
「何それ」
「撃たれたんだよ。弾は貫通してる」
「誰がやったの」
「相手は死んだよ。朝刊には載るんじゃねぇの?」
ただし死因は『天文台からの転落死』だ。決して銃殺ではない。
社会的には転落死ではあっても、SEESの面々や幾月の死体を見た関係者は銃殺だと分かるだろう。『前』にもやったことだが、決して武治が幾月を殺したという事実は存在しない。
治療をしている傷が痛んで呻く。思わず手を止めて前屈みになると、雲雀が立ち上がって寄ってきた。手からピンセットを奪われ、動けないように腕を掴まれる。
「笹川了平に聞いたよ。並盛に来たんだって?」
「うん。お前が『風紀財団』作ったっていうニュース見て、確かめたくて」
「僕にも会いに来てくれれば良かったのに」
「そこまでの気力は無かったんだぁ。了平に会ったのも偶然だったしなぁ」
「ふうん……」
「痛てぇ!」
ぐり、と傷を抉られた。思わず振り向いて涙目で雲雀を睨んだが雲雀は何処吹く風である。全く意地悪な幼馴染だ。
途中お湯が沸いたのでお茶を淹れに立ち上がり、二人分淹れた後包帯を巻いてもらって処置を終わらせる。救急箱を片手で棚へ片付けて振り返ると、雲雀がアマネを眺めていた。
「そんなの着けてたっけ」
「あぁ? ああ、これなぁ。貰い物」
腰に着けていたウォレットチェーンを見下ろして軽く飾り部分を叩く。アマネの淹れたお茶を啜って、雲雀は体育座りの様に脚を抱えて膝へ顎を乗せた。
「それで、アマネは今何やってるの」
「世界救ってる」
「また?」
「冗談に本気で返すんじゃねぇよぉ。……助けてぇ人達がいる。世界はそのついでだぁ」
「同じじゃない。今度はどんな赤ん坊を誑かしたのさ」
「たぶっ――バミューダも誑かしてねぇよ!? 断じてそんな覚えは無ぇ! つか誰も誑かした覚えは無ぇよ!」
「デイモンは?」
「甘やかした結果ああなっただけだぁ」
弟の様に可愛がっていた者の名前を出されて即答すると、呆れたように溜息を吐かれた。
「別にいいけど相変わらずだね」
「俺貶されてる? なぁ貶されてんのかぁ?」
「その助けたい人達って、どんな人達?」
「……俺を弟にしてくれた人の、仲間」
『あの人』のことを雲雀へ教えるのは、気まずい様な恥ずかしいような、何処か後ろめたい気がする。それはおそらく雲雀達も『大事』だと宣言している身で、他に『大切』を作ってしまったことが申し訳ないような気がするからだろうか。
浮気した既婚者か、と内心自分に突っ込みつつ雲雀が何を言うのかを待っていれば、雲雀はお茶を啜ってから湯呑みをテーブルへ置いた。
「家族増えたんだ。良かったね」
「……それだけ?」
「他に何を言うのさ」
「いや、ほら、なんかこう、色々」
「アマネが家族増やしたところで、僕の立場は変わらないでしょ。その程度で変わるんだったら、アマネに前世の記憶があるって聞いた時点で『幼馴染』なんてやってられないよ」
「そういや恭弥達『前世の記憶』あるんだなぁ」
「あったら悪い?」
「そんな事は無ぇけど、心配はする」
「安心しなよ。誰も君みたいにウジウジして無いから」
アマネが『前世の記憶』と折り合いをつけるまでの事を遠回しに示し、雲雀が笑う。言葉を詰まらせているアマネに対して何と酷い『幼馴染』か。
だがしかし、雲雀がアマネを詰ることなく普通の態度を取ってくれている事が嬉しくもあった。アマネという存在が居ない間もあった筈なのに変わらないことが、アマネにとっては『おいていかれていない』気がしてありがたい。
そう考えて、嗚呼そうかと思い出して雲雀を見た。
「恭弥」
「なに?」
「また会えて嬉しい。俺の事を覚えていてくれたのも」
「そう思うなら、自分から会いに来て欲しかったんだけど」
「だって居ると思ってなかったんだぜぇ? 俺が居た場所じゃ並盛すら無かったんだからなぁ?」
「? どういう事?」
「最初から話す」
床の掃除はしたいが雲雀はまだ帰るつもりは無いだろう。アマネも肩の痛みでまだ眠れる気がしないので丁度良かった。
ともあれ自分が土足で歩いた分だけ掃除すればとりあえず今夜は寝られるなと考えたところで、深夜だというのにチャイムが鳴った。すわ桐条財閥の迎えかと警戒しつつ玄関を開ければ、そこに居たのは雲雀である。
「久しぶり」
「久しぶりぃ」
「どうでもいいけど狭いアパートだね」
「一人暮らしだからいいんだぁ」
さも当然だとばかりに部屋へ上がる雲雀に、アマネはドアを閉めて薬缶を火に掛けた。雲雀は部屋をぐるりと一瞥した後、許可も取らずにベッドへ腰掛ける。
お湯が沸くまでの間に床の掃除だけでもしてしまおうと、雑巾を濡らして絞ると肩が痛んだ。ベチャリと落ちた雑巾に掃除を諦め、先に治療かと部屋に戻る。
棚から救急箱を取り出して蓋を開け、服を脱ぐ。
「何それ」
「撃たれたんだよ。弾は貫通してる」
「誰がやったの」
「相手は死んだよ。朝刊には載るんじゃねぇの?」
ただし死因は『天文台からの転落死』だ。決して銃殺ではない。
社会的には転落死ではあっても、SEESの面々や幾月の死体を見た関係者は銃殺だと分かるだろう。『前』にもやったことだが、決して武治が幾月を殺したという事実は存在しない。
治療をしている傷が痛んで呻く。思わず手を止めて前屈みになると、雲雀が立ち上がって寄ってきた。手からピンセットを奪われ、動けないように腕を掴まれる。
「笹川了平に聞いたよ。並盛に来たんだって?」
「うん。お前が『風紀財団』作ったっていうニュース見て、確かめたくて」
「僕にも会いに来てくれれば良かったのに」
「そこまでの気力は無かったんだぁ。了平に会ったのも偶然だったしなぁ」
「ふうん……」
「痛てぇ!」
ぐり、と傷を抉られた。思わず振り向いて涙目で雲雀を睨んだが雲雀は何処吹く風である。全く意地悪な幼馴染だ。
途中お湯が沸いたのでお茶を淹れに立ち上がり、二人分淹れた後包帯を巻いてもらって処置を終わらせる。救急箱を片手で棚へ片付けて振り返ると、雲雀がアマネを眺めていた。
「そんなの着けてたっけ」
「あぁ? ああ、これなぁ。貰い物」
腰に着けていたウォレットチェーンを見下ろして軽く飾り部分を叩く。アマネの淹れたお茶を啜って、雲雀は体育座りの様に脚を抱えて膝へ顎を乗せた。
「それで、アマネは今何やってるの」
「世界救ってる」
「また?」
「冗談に本気で返すんじゃねぇよぉ。……助けてぇ人達がいる。世界はそのついでだぁ」
「同じじゃない。今度はどんな赤ん坊を誑かしたのさ」
「たぶっ――バミューダも誑かしてねぇよ!? 断じてそんな覚えは無ぇ! つか誰も誑かした覚えは無ぇよ!」
「デイモンは?」
「甘やかした結果ああなっただけだぁ」
弟の様に可愛がっていた者の名前を出されて即答すると、呆れたように溜息を吐かれた。
「別にいいけど相変わらずだね」
「俺貶されてる? なぁ貶されてんのかぁ?」
「その助けたい人達って、どんな人達?」
「……俺を弟にしてくれた人の、仲間」
『あの人』のことを雲雀へ教えるのは、気まずい様な恥ずかしいような、何処か後ろめたい気がする。それはおそらく雲雀達も『大事』だと宣言している身で、他に『大切』を作ってしまったことが申し訳ないような気がするからだろうか。
浮気した既婚者か、と内心自分に突っ込みつつ雲雀が何を言うのかを待っていれば、雲雀はお茶を啜ってから湯呑みをテーブルへ置いた。
「家族増えたんだ。良かったね」
「……それだけ?」
「他に何を言うのさ」
「いや、ほら、なんかこう、色々」
「アマネが家族増やしたところで、僕の立場は変わらないでしょ。その程度で変わるんだったら、アマネに前世の記憶があるって聞いた時点で『幼馴染』なんてやってられないよ」
「そういや恭弥達『前世の記憶』あるんだなぁ」
「あったら悪い?」
「そんな事は無ぇけど、心配はする」
「安心しなよ。誰も君みたいにウジウジして無いから」
アマネが『前世の記憶』と折り合いをつけるまでの事を遠回しに示し、雲雀が笑う。言葉を詰まらせているアマネに対して何と酷い『幼馴染』か。
だがしかし、雲雀がアマネを詰ることなく普通の態度を取ってくれている事が嬉しくもあった。アマネという存在が居ない間もあった筈なのに変わらないことが、アマネにとっては『おいていかれていない』気がしてありがたい。
そう考えて、嗚呼そうかと思い出して雲雀を見た。
「恭弥」
「なに?」
「また会えて嬉しい。俺の事を覚えていてくれたのも」
「そう思うなら、自分から会いに来て欲しかったんだけど」
「だって居ると思ってなかったんだぜぇ? 俺が居た場所じゃ並盛すら無かったんだからなぁ?」
「? どういう事?」
「最初から話す」
床の掃除はしたいが雲雀はまだ帰るつもりは無いだろう。アマネも肩の痛みでまだ眠れる気がしないので丁度良かった。