ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
追っ手を振り切ったところまでは良かったが、問題が一つ発生した。
「天文台って、どうやって行くんだっけかぁ」
『前』の時はアマネも武治を庇って撃たれた際に頭を打って気絶していたので運ばれた訳だが、その為天文台への行き方が分からない。
帰りはタルタロスが校舎へ戻り、通常の天文台から地上へ帰ることが出来たのだが、流石に階段を昇る度に部屋の作りが変わるタルタロス内を駆け抜けるのは遠慮したい。そもそもそうしたところで天文台へ辿り着ける気がしなかった。
影時間へと変貌してから到着したタルタロスの入り口には既に誰も居ない。地面へ何かを引き摺った跡が残っているので、既に『彼女』達は天文台へと運ばれたのだろう。となると『前』はどれだけの間意識を失っていたのか分からないが、そう時間は無いと考えるのが無難だ。
困り果てて思わずタルタロスを見上げる。
「……あ」
天文台らしき場所が見えていた。
そういえば今まで一度も確かめた事は無いが、この不気味な塔はエッシャーがデザインしたのかと思わせる程、幾つもの建物や階段が複合したような外見をしている。更に言うなら校舎の一部であるせいかどうかは不明だが、天文台は比較的低い場所へあった。
とはいえ当然そこから落ちたら命は無い高さだ。いや、打ち所がよければ命だけは取り留めるとかそのくらいか。
アマネはその天文台を見上げ、目の前のタルタロスの壁へ視線を移し、駆け寄ってその壁の出っ張りへ足を掛けた。
内側から行けないのなら外から行けばいいだけの話だ。命綱無しのロッククライミングなど昨夜も行なっている。きっと夜間の学校の壁を、こうもよじ登った者など他にいないだろう。
それでもどうにか落下せずに辿り着く事が出来た天文台では、『彼女』達が『前』にも見た十字架のような拘束具へ捕まっていた。既に武治と幾月は対峙していて、今まさに武治が銃を取り出したところの様だ。
『前』では武治が撃たれて命を落とす様を、アマネは動けずに見ていた。死んでいく武治と至近距離で眼が合い、きっと最後に彼が見たのはアマネだったのではと思っている。
だがどうせなら愛娘を見て最後を迎えろと思う。更には孫へ囲まれて大往生だ。
「――……させるかぁあああああっ!」
天文台へ到着すると同時に走り出し、武治と幾月の対立線上へ割り込む。
幾月の撃った銃弾がアマネの右肩へと当たった。奇しくもそれは『前』に撃たれた場所と同じ。
余り肉の無い肩では盾になりきれず、勢いが失われたとしても銃弾はアマネの肩を抜けて武治へも襲い掛かる。
桐条の悲鳴。
「クソッ……揃いも揃って邪魔ばっかりしやがってっ! アイギス、ソイツ等を処刑しろ! 」
武治の撃った銃弾を武治同様その身へ受けた幾月はしかし、武治とは違って倒れたりなどしない。右肩から血を流しながら、アマネは勢い余って倒れた身体を受身を取って直ぐに立ち上がりつつ、倒れた武治の傍へ駆け寄り傷を診る。
『前』とは違い出血はしているものの致命傷ではない。だがこのまま放置しておいてもいい怪我ではないことは確かだ。意識が無いという事がそれを示している。
銃口である指先を拘束されている『彼女』達へ向けるアイギスに、アマネは何もしない。彼女ならアマネが何も手を出すとも自分の“意志”で幾月の命令から逃れる事ができる。
想像通り幾月の命令に逆らって、有里達を殺すのではなく拘束だけを撃ち壊したアイギスに、幾月が悪態を吐く。桐条達が駆け寄ってくるのに武治を任せ、アマネは武治が持っていた銃を取って立ち上がった。
幾月は全てが自分の思惑通りにいかない事へ苛々と不満を訴えながら叫んでいる。この世界はもう駄目だと価値を押し付ける発言に、『前』もアマネは怒っていた。
「こんな世界は――」
「やり直したってこんなモンだよ。ご当主の一人も助けられねぇ。アンタは相変わらず腐ってるし始まりは十年も前でどうしようもねぇ」
幾月の言葉を遮るように口を開く。アマネの言葉に幾月が何かに気付いたように目を見開き、歪んだ笑みを浮かべた。
「はは……そうか。君は――『時を操る神器』を手に入れたんだな!?」
「そんなモノは手に入れてねぇよ。欲しかったモノは全部失ってきた。だから新しく欲しいものを守ると決めた」
銃を右手で構える。腕を上げるだけで撃たれた肩が痛む。
「覚えておけぇ。アンタを殺したのはご当主でも世界でも無い。俺だぁ」
銃声が響く。歪んだ笑みを浮かべたまま幾月が後ろへ倒れていくのに、誰も動かなかった。熱の残る銃を降ろして地面に置き、振り返って桐条に支えられている武治の様子を確かめる。
武治は意識こそ無いが、呼吸もしているし脈もあって心臓もちゃんと動いていた。桐条が武治の傷口を押さえているのに、アマネは荒垣の時と同じくパーカーを脱いで止血へ使う。
本当は自分の肩もどうにかしたかったが、意識が無い分武治を優先する。
「私は……この人を守りたくて」
桐条の後悔など今はどうでもいい。いや良くないが、彼女達が思うよりアマネにとっては悪い結果にはなっていなかった。
だって生きている。『前』ではアマネの直ぐ横で幾月に撃たれて即死していたのに比べれば、これはきっと驚くべき奇跡だ。
「天文台って、どうやって行くんだっけかぁ」
『前』の時はアマネも武治を庇って撃たれた際に頭を打って気絶していたので運ばれた訳だが、その為天文台への行き方が分からない。
帰りはタルタロスが校舎へ戻り、通常の天文台から地上へ帰ることが出来たのだが、流石に階段を昇る度に部屋の作りが変わるタルタロス内を駆け抜けるのは遠慮したい。そもそもそうしたところで天文台へ辿り着ける気がしなかった。
影時間へと変貌してから到着したタルタロスの入り口には既に誰も居ない。地面へ何かを引き摺った跡が残っているので、既に『彼女』達は天文台へと運ばれたのだろう。となると『前』はどれだけの間意識を失っていたのか分からないが、そう時間は無いと考えるのが無難だ。
困り果てて思わずタルタロスを見上げる。
「……あ」
天文台らしき場所が見えていた。
そういえば今まで一度も確かめた事は無いが、この不気味な塔はエッシャーがデザインしたのかと思わせる程、幾つもの建物や階段が複合したような外見をしている。更に言うなら校舎の一部であるせいかどうかは不明だが、天文台は比較的低い場所へあった。
とはいえ当然そこから落ちたら命は無い高さだ。いや、打ち所がよければ命だけは取り留めるとかそのくらいか。
アマネはその天文台を見上げ、目の前のタルタロスの壁へ視線を移し、駆け寄ってその壁の出っ張りへ足を掛けた。
内側から行けないのなら外から行けばいいだけの話だ。命綱無しのロッククライミングなど昨夜も行なっている。きっと夜間の学校の壁を、こうもよじ登った者など他にいないだろう。
それでもどうにか落下せずに辿り着く事が出来た天文台では、『彼女』達が『前』にも見た十字架のような拘束具へ捕まっていた。既に武治と幾月は対峙していて、今まさに武治が銃を取り出したところの様だ。
『前』では武治が撃たれて命を落とす様を、アマネは動けずに見ていた。死んでいく武治と至近距離で眼が合い、きっと最後に彼が見たのはアマネだったのではと思っている。
だがどうせなら愛娘を見て最後を迎えろと思う。更には孫へ囲まれて大往生だ。
「――……させるかぁあああああっ!」
天文台へ到着すると同時に走り出し、武治と幾月の対立線上へ割り込む。
幾月の撃った銃弾がアマネの右肩へと当たった。奇しくもそれは『前』に撃たれた場所と同じ。
余り肉の無い肩では盾になりきれず、勢いが失われたとしても銃弾はアマネの肩を抜けて武治へも襲い掛かる。
桐条の悲鳴。
「クソッ……揃いも揃って邪魔ばっかりしやがってっ! アイギス、ソイツ等を処刑しろ! 」
武治の撃った銃弾を武治同様その身へ受けた幾月はしかし、武治とは違って倒れたりなどしない。右肩から血を流しながら、アマネは勢い余って倒れた身体を受身を取って直ぐに立ち上がりつつ、倒れた武治の傍へ駆け寄り傷を診る。
『前』とは違い出血はしているものの致命傷ではない。だがこのまま放置しておいてもいい怪我ではないことは確かだ。意識が無いという事がそれを示している。
銃口である指先を拘束されている『彼女』達へ向けるアイギスに、アマネは何もしない。彼女ならアマネが何も手を出すとも自分の“意志”で幾月の命令から逃れる事ができる。
想像通り幾月の命令に逆らって、有里達を殺すのではなく拘束だけを撃ち壊したアイギスに、幾月が悪態を吐く。桐条達が駆け寄ってくるのに武治を任せ、アマネは武治が持っていた銃を取って立ち上がった。
幾月は全てが自分の思惑通りにいかない事へ苛々と不満を訴えながら叫んでいる。この世界はもう駄目だと価値を押し付ける発言に、『前』もアマネは怒っていた。
「こんな世界は――」
「やり直したってこんなモンだよ。ご当主の一人も助けられねぇ。アンタは相変わらず腐ってるし始まりは十年も前でどうしようもねぇ」
幾月の言葉を遮るように口を開く。アマネの言葉に幾月が何かに気付いたように目を見開き、歪んだ笑みを浮かべた。
「はは……そうか。君は――『時を操る神器』を手に入れたんだな!?」
「そんなモノは手に入れてねぇよ。欲しかったモノは全部失ってきた。だから新しく欲しいものを守ると決めた」
銃を右手で構える。腕を上げるだけで撃たれた肩が痛む。
「覚えておけぇ。アンタを殺したのはご当主でも世界でも無い。俺だぁ」
銃声が響く。歪んだ笑みを浮かべたまま幾月が後ろへ倒れていくのに、誰も動かなかった。熱の残る銃を降ろして地面に置き、振り返って桐条に支えられている武治の様子を確かめる。
武治は意識こそ無いが、呼吸もしているし脈もあって心臓もちゃんと動いていた。桐条が武治の傷口を押さえているのに、アマネは荒垣の時と同じくパーカーを脱いで止血へ使う。
本当は自分の肩もどうにかしたかったが、意識が無い分武治を優先する。
「私は……この人を守りたくて」
桐条の後悔など今はどうでもいい。いや良くないが、彼女達が思うよりアマネにとっては悪い結果にはなっていなかった。
だって生きている。『前』ではアマネの直ぐ横で幾月に撃たれて即死していたのに比べれば、これはきっと驚くべき奇跡だ。