ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アパートも見張られていたので帰れない。仕方なくネットカフェで一晩を過ごし、学校へ行くのを諦めて追っ手に見つからないように街中を歩き回る。一つの場所へずっと居続けるのは見つけてくれと言っているようなものだ。
昨日のワゴンを走れなくしたことから学んだのか、追っ手の数が増えている。昼間のうちに見つけて捕まえる事が出来れば影時間の適性は関係ないので、勝負は夜だろう。
とはいえ流石に空からの捜索はされていないので、食事や用を足しに行く時以外は人の出入りが無さそうなビルの上へずっと隠れていた。夕方になって学生や会社員の帰宅時間になってから地上へ降りる。
召喚器とウォレットチェーン以外をロッカーへ押し込んだ。ナイフは十月に巌戸台駅前で折ってしまってから、持っていても仕方ないと処分してしまっている。代わりの武器になりそうなものが何も無い状態は心許ないが、交番へ行っても今は幾月から話が行っていて黒沢も売ってくれないだろう。
人混みへ紛れて歩きながら、異彩を放ちながら周囲を見回している数人の集団とすれ違った。その時に少し肩がぶつかり、慌てて振り返り謝る。
「あ、すみませ――!?」
ぶつかった相手を見て慌てて走り出せば、予想通りにアマネを追いかけてきた。人混みを掻き分けて逃げるせいで、なかなか距離を開けられない“振り”をしつつ、追っ手を誘導していく。
男子高校生を追いかける集団というのも怪しいが、追いかけられる高校生も怪しい事は承知している。だからこの行為は“ワザと”だ。
一般人には分からないだろうが、アマネを追ってくる集団は幾月の命令で動いている。しかし今日の影時間には彼の所業が白日の許へ晒されるのだ。それはアマネが動かずともきっと変わらないだろうから確定事項としておく。
晒されなかったとしても『保険』は掛けてあるので問題は無い。
ある程度追っ手が集まったところでアマネは路地に入り、追っ手の視界から外れたところでそこに置かれていた廃材の山を足場にビルの壁へと張り付いた。出っ張りや窓枠を掴んで数メートル程上がったところで眼下を追っ手が走り抜けていく。
去っていくそれを見送ってから入ったばかりの路地を出ると、増援らしい追っ手にぶつかってしまった。
「君っ!」
「失礼!」
アマネを捕まえようと伸ばされた腕を逆に掴み、捻り上げながら男の身体を背負い投げする。コンクリートへ背中から倒れる男は受身を取れなかったのか直ぐには立ち上がらない。
だが増援は当然一人ではなかった。倒した男の他にも数人が至近距離でアマネへと襲いかかろうとしている。
全員を倒してしまうのは簡単だ。だが一人を投げ飛ばしてしまったものの無為に傷付けるのは憚られる。彼等は桐条財閥の者であって、決して幾月の同志などではない。
それでも気絶してもらうかと身構えたところで、バイクの排気音が近付いてきた。
アクセルを吹かして突進してきたバイクに、アマネの周りに居た追っ手達が思わずといった様子で退いたり逃げたりするのに、アマネは冷静にそのバイクを観察した。
デザインよりも機能を重視したバイクだ。昔こんなバイクを愛用していた『幼馴染』がいたなと思い出す。
バイクの運転手は黒く目元が外からは見えない、フルフェイスタイプのヘルメットを着用しており顔は分からない。背中へ安物のボディバッグを背負っているが、その中身は殆ど何も入っていないのかそう膨らんでいなかった。
アマネの傍に居た追っ手を退けたところで、急ブレーキを掛けてバイクを停めた運転手が、アマネを見て自分の背後を示す。話しかけることすらせずリアシートへ飛び乗ると、運転手も何も言わずに急発進させた。
直ぐに追っ手達が背後へと遠ざかっていく。髪を押さえながらそれを振り返って確認したアマネは、ハンドルを握っている運転手へ向けて怒鳴る。怒鳴らなければ風の音で聞こえないのだ。
「下手に手を出す訳にはいかねぇ! 彼等は命じられて俺を追いかけてるだけなんだぁ」
返事の代わりかエンジンを吹かした運転手にアマネはしがみ付く。右折して先ほどの場所を少し進んだ場所へまで戻ろうとするバイクが、赤信号で律儀に停まった。
その停車時間を利用して運転手が、背負っていたボディバッグを外してアマネへと差し出してくる。受け取ってアマネが背負ったところで青信号へ変わり、再びバイクが走り出した。
白いワゴンを追い越したところで、アマネは振り返ってワゴンを確認し運転手へ知らせる。僅かに背後を確認した運転手がスピードを緩めるのに、アマネはこの辺一体の地理を思い出した。
月光館学園からも巌戸台分寮からもそれなりに遠い。影時間まではまだ時間がある。
「日付が変わる少し前に月光館学園の傍を走ってくれるかぁ?」
疑問形にしておきながらも、アマネにはその運転手が付き合ってくれるだろう事も分かっていた。追ってくる車はワゴンだけでは無くなっている。
いっそのことコチラと同じくバイクで追いかけてくれば良かったのにと思わなくも無い。アマネ自身車で追われても、ビルなどを障害に走って逃げ続ける予定ではあったが、やはり移動手段があると楽だ。
影時間まで後数分となったところで運転手へ合図を送れば、盛大にスピードを増して後ろの車を引き剥がす。辰巳ポートアイランドの車の通りが少ない道路でそのスピードが緩められ、アマネはバイクから飛び降りた。
そのまま走り去っていくバイクのテールランプを目印に、アマネが降りたことへ気付いていないワゴンが走り去っていく。
渡されたボディバッグの中にはアマネの“腕輪”と“ナイフ”
「ありがとう。恭弥」
昨日のワゴンを走れなくしたことから学んだのか、追っ手の数が増えている。昼間のうちに見つけて捕まえる事が出来れば影時間の適性は関係ないので、勝負は夜だろう。
とはいえ流石に空からの捜索はされていないので、食事や用を足しに行く時以外は人の出入りが無さそうなビルの上へずっと隠れていた。夕方になって学生や会社員の帰宅時間になってから地上へ降りる。
召喚器とウォレットチェーン以外をロッカーへ押し込んだ。ナイフは十月に巌戸台駅前で折ってしまってから、持っていても仕方ないと処分してしまっている。代わりの武器になりそうなものが何も無い状態は心許ないが、交番へ行っても今は幾月から話が行っていて黒沢も売ってくれないだろう。
人混みへ紛れて歩きながら、異彩を放ちながら周囲を見回している数人の集団とすれ違った。その時に少し肩がぶつかり、慌てて振り返り謝る。
「あ、すみませ――!?」
ぶつかった相手を見て慌てて走り出せば、予想通りにアマネを追いかけてきた。人混みを掻き分けて逃げるせいで、なかなか距離を開けられない“振り”をしつつ、追っ手を誘導していく。
男子高校生を追いかける集団というのも怪しいが、追いかけられる高校生も怪しい事は承知している。だからこの行為は“ワザと”だ。
一般人には分からないだろうが、アマネを追ってくる集団は幾月の命令で動いている。しかし今日の影時間には彼の所業が白日の許へ晒されるのだ。それはアマネが動かずともきっと変わらないだろうから確定事項としておく。
晒されなかったとしても『保険』は掛けてあるので問題は無い。
ある程度追っ手が集まったところでアマネは路地に入り、追っ手の視界から外れたところでそこに置かれていた廃材の山を足場にビルの壁へと張り付いた。出っ張りや窓枠を掴んで数メートル程上がったところで眼下を追っ手が走り抜けていく。
去っていくそれを見送ってから入ったばかりの路地を出ると、増援らしい追っ手にぶつかってしまった。
「君っ!」
「失礼!」
アマネを捕まえようと伸ばされた腕を逆に掴み、捻り上げながら男の身体を背負い投げする。コンクリートへ背中から倒れる男は受身を取れなかったのか直ぐには立ち上がらない。
だが増援は当然一人ではなかった。倒した男の他にも数人が至近距離でアマネへと襲いかかろうとしている。
全員を倒してしまうのは簡単だ。だが一人を投げ飛ばしてしまったものの無為に傷付けるのは憚られる。彼等は桐条財閥の者であって、決して幾月の同志などではない。
それでも気絶してもらうかと身構えたところで、バイクの排気音が近付いてきた。
アクセルを吹かして突進してきたバイクに、アマネの周りに居た追っ手達が思わずといった様子で退いたり逃げたりするのに、アマネは冷静にそのバイクを観察した。
デザインよりも機能を重視したバイクだ。昔こんなバイクを愛用していた『幼馴染』がいたなと思い出す。
バイクの運転手は黒く目元が外からは見えない、フルフェイスタイプのヘルメットを着用しており顔は分からない。背中へ安物のボディバッグを背負っているが、その中身は殆ど何も入っていないのかそう膨らんでいなかった。
アマネの傍に居た追っ手を退けたところで、急ブレーキを掛けてバイクを停めた運転手が、アマネを見て自分の背後を示す。話しかけることすらせずリアシートへ飛び乗ると、運転手も何も言わずに急発進させた。
直ぐに追っ手達が背後へと遠ざかっていく。髪を押さえながらそれを振り返って確認したアマネは、ハンドルを握っている運転手へ向けて怒鳴る。怒鳴らなければ風の音で聞こえないのだ。
「下手に手を出す訳にはいかねぇ! 彼等は命じられて俺を追いかけてるだけなんだぁ」
返事の代わりかエンジンを吹かした運転手にアマネはしがみ付く。右折して先ほどの場所を少し進んだ場所へまで戻ろうとするバイクが、赤信号で律儀に停まった。
その停車時間を利用して運転手が、背負っていたボディバッグを外してアマネへと差し出してくる。受け取ってアマネが背負ったところで青信号へ変わり、再びバイクが走り出した。
白いワゴンを追い越したところで、アマネは振り返ってワゴンを確認し運転手へ知らせる。僅かに背後を確認した運転手がスピードを緩めるのに、アマネはこの辺一体の地理を思い出した。
月光館学園からも巌戸台分寮からもそれなりに遠い。影時間まではまだ時間がある。
「日付が変わる少し前に月光館学園の傍を走ってくれるかぁ?」
疑問形にしておきながらも、アマネにはその運転手が付き合ってくれるだろう事も分かっていた。追ってくる車はワゴンだけでは無くなっている。
いっそのことコチラと同じくバイクで追いかけてくれば良かったのにと思わなくも無い。アマネ自身車で追われても、ビルなどを障害に走って逃げ続ける予定ではあったが、やはり移動手段があると楽だ。
影時間まで後数分となったところで運転手へ合図を送れば、盛大にスピードを増して後ろの車を引き剥がす。辰巳ポートアイランドの車の通りが少ない道路でそのスピードが緩められ、アマネはバイクから飛び降りた。
そのまま走り去っていくバイクのテールランプを目印に、アマネが降りたことへ気付いていないワゴンが走り去っていく。
渡されたボディバッグの中にはアマネの“腕輪”と“ナイフ”
「ありがとう。恭弥」