ペルソナP3P
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もうすぐ試験だということもあって、学校では路地裏で起こった事故の事など直ぐに忘れ去られていく。何処の誰とも知れない他人から流れる血より、自分達の成績の方が大事であるというのは、学生としては正しいだろうが人としてはどうなのか。
一応風邪で休んだという話になっているのでマスクをして学校へ行けば、佐藤がヤケに心配してきた。
「お見舞いとか行ったほうが良かった? でも斑鳩の家知らないしさ。看病って言ってもなにすればいいのか分かんないから行ったら迷惑だと思って止めた」
「英断だなぁ」
正直来られても困る。クラスメイトが休んでいた間のノートを見せてくれたのでそれを写していると、教室の戸口から聞き覚えのある声がした。
天田に口止めをしたところであの人達が探さない訳が無い。佐藤と一緒に何気ない風を装って顔を上げれば、丁度クラスの女子が振り返ってアマネを指差していた。
その前に居るのは、この場合『生徒会長』といえばいいのか。アマネを教えたクラスの女子へお礼を言って、ツカツカと教室へ入ってきた桐条が、アマネの席の直ぐ傍で足を止める。
教室にいた同級生達が何事かと振り返っていて、注目の的である事に桐条は気付いているのか疑問だ。
「何か用でしょうか。桐条生徒会長」
「君が『アマネ』だな?」
「……生憎初対面も同然の方に、名前を呼び捨てられる様な覚えは無いのですが」
佐藤が驚いているのはアマネが語尾を延ばすような大声で喋っていないからだろう。敬語が使えない訳が無いのだから、そう驚かれる事は心外である。
桐条はアマネの返しに、僅かに眉を潜めた。
「では、苗字を教えてもらえるか。私は桐条美鶴だ」
「知っています。俺の苗字は斑鳩と言います。どうぞ『斑鳩』と呼んでください。それで、生徒会長が何の用でしょうか」
「君に訪ねたいことがある。悪いが少し時間をもらえるだろうか」
「申し訳ありませんが承諾しかねます。見ての通り俺は一昨日昨日と病欠していたので、試験範囲でもある授業内容をクラスメイトからノートを借りて写しているところなのです。よって時間が無い」
言い返されると思っていなかった、という様子だ。相手を年下だと思って少し油断していたのだろう。だが残念な事に十数ヶ月前のアマネは『今』の桐条と同じ高三だったうえに、体感年齢だけで言うなら話にもならない差がある。
その差を知らずにアマネを『普通の高校一年生』として見て話し始めたら、直ぐに足元を掬われて当然だ。現に桐条との会話の主導権はアマネが握っている。
桐条の話を断ったせいでクラスメイトが驚いている。こんな人目がある場所では、桐条は自分の知名度をもう少し理解してから話しかけるべきだ。『前』は同じ寮に住んでいたという共通点があったから周囲の視線も理解があったが、『今』は無い。
「失礼ですが話の内容次第ではこの場でお聞きします」
「ここで話せる内容ではないんだ」
「では申し訳ありませんがまた次の機会にしていただけますか。休んだ分の勉強もしたいのですが、会長の様子ではそう短い話でも無いようですし」
そう言ってもう話に付き合う意思は無いと態度で示す。当然だが桐条がアマネのことを『アマネだな』と聞いてきた時点で、話の内容は影時間ないしストレガやそれに関わる事だと分かった。
となればそれは、普通の学生である佐藤達のいる場所では話せない。アマネが桐条の申し出に乗ったとすれば場所を移動していただろう。逆に考えれば、席を立たなければこの場での尋問は回避出来るのだ。
桐条もそれに気付いたのか他の方法を考えていたようだが、もうすぐ次の授業が始まると気付いて諦めたようだった。
「なら、悪いが時間がある時に君の方から来てくれないか?」
「……試験が近いので分かりませんが、それでしたら近いうちに」
教室を去っていく桐条と入れ替わりに、何処かへ行っていたらしい伏見が戻ってくる。周りで話の一部始終を聞いていたクラスメイト達は、アマネの対応に対して賛否両論のようだが関係ない。
「伏見さん、桐条会長の携帯番号知ってるかぁ?」
「え、し、知ってるけど?」
席へ着こうとしていた伏見に声を掛け尋ねる。
「話があるらしいんだけど俺から行くにしても会長の都合もあるだろうし、会いに行く前には連絡入れてぇから番号教えてもらっていいかぁ? あとで会長へ俺に教えた事だけ言っておいてくれると助かるんだけどぉ」
「その程度なら」
携帯を取り出して桐条のアドレスを送ってもらう。荒垣のときと同じくアマネの携帯には既に『前』の桐条のアドレスが入っているが、そちらは消さずに登録した。
これで桐条とは連絡が取れるようになったわけである。深く踏み込みすぎの様にも思えなくは無いが、アマネにとっての次の『試練』までもう一ヶ月も無い。
そしてその『試練』に関わってくるのは桐条の父親なのだ。
「試験中だと迷惑だよなぁ」
「そう思うなら断らなければ良かった」
「だってノート今しか貸してくれねぇだろぉ?」
「そんなことねーよ! 写し終えるまで待つよ!?」
桐条の申し出を断った理由として、クラスメイトから借りたノートのせいとしておく。でないとただ断っただけの悪者になってしまうからだ。今更『そんな事はない』と言ってくれるクラスメイト達には悪いが、桐条が帰ってしまった後なので、アマネへ向けて訂正しても意味が無かった。
一応風邪で休んだという話になっているのでマスクをして学校へ行けば、佐藤がヤケに心配してきた。
「お見舞いとか行ったほうが良かった? でも斑鳩の家知らないしさ。看病って言ってもなにすればいいのか分かんないから行ったら迷惑だと思って止めた」
「英断だなぁ」
正直来られても困る。クラスメイトが休んでいた間のノートを見せてくれたのでそれを写していると、教室の戸口から聞き覚えのある声がした。
天田に口止めをしたところであの人達が探さない訳が無い。佐藤と一緒に何気ない風を装って顔を上げれば、丁度クラスの女子が振り返ってアマネを指差していた。
その前に居るのは、この場合『生徒会長』といえばいいのか。アマネを教えたクラスの女子へお礼を言って、ツカツカと教室へ入ってきた桐条が、アマネの席の直ぐ傍で足を止める。
教室にいた同級生達が何事かと振り返っていて、注目の的である事に桐条は気付いているのか疑問だ。
「何か用でしょうか。桐条生徒会長」
「君が『アマネ』だな?」
「……生憎初対面も同然の方に、名前を呼び捨てられる様な覚えは無いのですが」
佐藤が驚いているのはアマネが語尾を延ばすような大声で喋っていないからだろう。敬語が使えない訳が無いのだから、そう驚かれる事は心外である。
桐条はアマネの返しに、僅かに眉を潜めた。
「では、苗字を教えてもらえるか。私は桐条美鶴だ」
「知っています。俺の苗字は斑鳩と言います。どうぞ『斑鳩』と呼んでください。それで、生徒会長が何の用でしょうか」
「君に訪ねたいことがある。悪いが少し時間をもらえるだろうか」
「申し訳ありませんが承諾しかねます。見ての通り俺は一昨日昨日と病欠していたので、試験範囲でもある授業内容をクラスメイトからノートを借りて写しているところなのです。よって時間が無い」
言い返されると思っていなかった、という様子だ。相手を年下だと思って少し油断していたのだろう。だが残念な事に十数ヶ月前のアマネは『今』の桐条と同じ高三だったうえに、体感年齢だけで言うなら話にもならない差がある。
その差を知らずにアマネを『普通の高校一年生』として見て話し始めたら、直ぐに足元を掬われて当然だ。現に桐条との会話の主導権はアマネが握っている。
桐条の話を断ったせいでクラスメイトが驚いている。こんな人目がある場所では、桐条は自分の知名度をもう少し理解してから話しかけるべきだ。『前』は同じ寮に住んでいたという共通点があったから周囲の視線も理解があったが、『今』は無い。
「失礼ですが話の内容次第ではこの場でお聞きします」
「ここで話せる内容ではないんだ」
「では申し訳ありませんがまた次の機会にしていただけますか。休んだ分の勉強もしたいのですが、会長の様子ではそう短い話でも無いようですし」
そう言ってもう話に付き合う意思は無いと態度で示す。当然だが桐条がアマネのことを『アマネだな』と聞いてきた時点で、話の内容は影時間ないしストレガやそれに関わる事だと分かった。
となればそれは、普通の学生である佐藤達のいる場所では話せない。アマネが桐条の申し出に乗ったとすれば場所を移動していただろう。逆に考えれば、席を立たなければこの場での尋問は回避出来るのだ。
桐条もそれに気付いたのか他の方法を考えていたようだが、もうすぐ次の授業が始まると気付いて諦めたようだった。
「なら、悪いが時間がある時に君の方から来てくれないか?」
「……試験が近いので分かりませんが、それでしたら近いうちに」
教室を去っていく桐条と入れ替わりに、何処かへ行っていたらしい伏見が戻ってくる。周りで話の一部始終を聞いていたクラスメイト達は、アマネの対応に対して賛否両論のようだが関係ない。
「伏見さん、桐条会長の携帯番号知ってるかぁ?」
「え、し、知ってるけど?」
席へ着こうとしていた伏見に声を掛け尋ねる。
「話があるらしいんだけど俺から行くにしても会長の都合もあるだろうし、会いに行く前には連絡入れてぇから番号教えてもらっていいかぁ? あとで会長へ俺に教えた事だけ言っておいてくれると助かるんだけどぉ」
「その程度なら」
携帯を取り出して桐条のアドレスを送ってもらう。荒垣のときと同じくアマネの携帯には既に『前』の桐条のアドレスが入っているが、そちらは消さずに登録した。
これで桐条とは連絡が取れるようになったわけである。深く踏み込みすぎの様にも思えなくは無いが、アマネにとっての次の『試練』までもう一ヶ月も無い。
そしてその『試練』に関わってくるのは桐条の父親なのだ。
「試験中だと迷惑だよなぁ」
「そう思うなら断らなければ良かった」
「だってノート今しか貸してくれねぇだろぉ?」
「そんなことねーよ! 写し終えるまで待つよ!?」
桐条の申し出を断った理由として、クラスメイトから借りたノートのせいとしておく。でないとただ断っただけの悪者になってしまうからだ。今更『そんな事はない』と言ってくれるクラスメイト達には悪いが、桐条が帰ってしまった後なので、アマネへ向けて訂正しても意味が無かった。