ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
辰巳ポートアイランドの路地裏は、昨日誰かが血を流したとしても変わりなかった。フード付きジャケットのファスナーを直しながら、昨日荒垣が撃たれた場所へと向かう。
少し広くとられた路地裏の広場の地面には、誰にも洗い流されずに荒垣の血痕が残っていた。不良達がそれを携帯で写真に撮ったり踏んづけたりしてはしゃいでいるのを眺めてから、何処かにいるであろう『少年』の姿を捜す。
『前』は確かこの路地裏にいたらしい。天田本人から聞いただけなので路地裏の何処へいたのかまではアマネも流石に知らなかった。
ここへ来る前に寄ったコンビニの袋を揺らして捜し歩いて、彼を見つけたのは事件現場からそう遠くない物影だ。汚れた壁に寄りかかって俯いている天田に、アマネは息を吐いて深くフードを被る。
「『少年』」
声を掛ければハッとした様子で天田が振り返り、アマネを見て警戒心を強めた。しかしそれも直ぐに萎んで、力なくアマネから目を逸らす。
「何の用ですか。用なんて無いでしょう」
「いやご飯。育ち盛りが食事を抜くとか俺は許さねぇよ」
「……何なんですか、本当」
それには答えずにコンビニの袋を漁り、中から三角のおにぎりを取り出して天田へ差し出した。本当はおしぼりとかも欲しかったが、ウェットテッシュは買ってきていない。
逆らう気も出ないらしくゆっくりと天田がおにぎりを受け取る。寄りかかっていた壁の前でしゃがんでその包装を開ける天田に、アマネも隣に並んでしゃがんだ。
弁当でも作ってくれば良かったのかも知れないが、『知らない相手』の手作り弁当なんて嫌だろう。ましてやアマネは昨日、荒垣の知人と認識されているだろうし。
ある意味では、天田と同じ立場なのだろう。天田を荒垣へ置き換え、荒垣を母親へ置きかえ、アマネを天田へ置き換えれば。
けれども当然だがアマネには『復讐しよう』という考えは無い。
パリ、と海苔の割れる音がする。アマネは天田を見ないようにしてその音を聞いていた。
「……母さんが死んだ次の日も、お腹が空いたんです」
「俺もだよ」
「悲しいのに、お腹は空くんだなって、思ってた」
袋からホットのお茶のボトルを取り出し、蓋を緩めてから天田へ渡す。代わりにおにぎりの包装を受け取ってコンビニの袋へ放り込んだ。
「……アナタは、どうして」
涙声のその問いに、アマネも自分の分のボトルを取り出す。ゴミと商品が混じってしまった袋の中には、まだアマネの分のお握りが入っていた。
ただ、天田には食べさせておいてアマネは食べる気になれていない。そういえば昨日の夜から水分以外摂っていなかったなと今更思い出した。
少し広くとられた路地裏の広場の地面には、誰にも洗い流されずに荒垣の血痕が残っていた。不良達がそれを携帯で写真に撮ったり踏んづけたりしてはしゃいでいるのを眺めてから、何処かにいるであろう『少年』の姿を捜す。
『前』は確かこの路地裏にいたらしい。天田本人から聞いただけなので路地裏の何処へいたのかまではアマネも流石に知らなかった。
ここへ来る前に寄ったコンビニの袋を揺らして捜し歩いて、彼を見つけたのは事件現場からそう遠くない物影だ。汚れた壁に寄りかかって俯いている天田に、アマネは息を吐いて深くフードを被る。
「『少年』」
声を掛ければハッとした様子で天田が振り返り、アマネを見て警戒心を強めた。しかしそれも直ぐに萎んで、力なくアマネから目を逸らす。
「何の用ですか。用なんて無いでしょう」
「いやご飯。育ち盛りが食事を抜くとか俺は許さねぇよ」
「……何なんですか、本当」
それには答えずにコンビニの袋を漁り、中から三角のおにぎりを取り出して天田へ差し出した。本当はおしぼりとかも欲しかったが、ウェットテッシュは買ってきていない。
逆らう気も出ないらしくゆっくりと天田がおにぎりを受け取る。寄りかかっていた壁の前でしゃがんでその包装を開ける天田に、アマネも隣に並んでしゃがんだ。
弁当でも作ってくれば良かったのかも知れないが、『知らない相手』の手作り弁当なんて嫌だろう。ましてやアマネは昨日、荒垣の知人と認識されているだろうし。
ある意味では、天田と同じ立場なのだろう。天田を荒垣へ置き換え、荒垣を母親へ置きかえ、アマネを天田へ置き換えれば。
けれども当然だがアマネには『復讐しよう』という考えは無い。
パリ、と海苔の割れる音がする。アマネは天田を見ないようにしてその音を聞いていた。
「……母さんが死んだ次の日も、お腹が空いたんです」
「俺もだよ」
「悲しいのに、お腹は空くんだなって、思ってた」
袋からホットのお茶のボトルを取り出し、蓋を緩めてから天田へ渡す。代わりにおにぎりの包装を受け取ってコンビニの袋へ放り込んだ。
「……アナタは、どうして」
涙声のその問いに、アマネも自分の分のボトルを取り出す。ゴミと商品が混じってしまった袋の中には、まだアマネの分のお握りが入っていた。
ただ、天田には食べさせておいてアマネは食べる気になれていない。そういえば昨日の夜から水分以外摂っていなかったなと今更思い出した。