ペルソナP3P
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文化祭開催日当日。アパートの窓を激しく叩く雨風に、携帯の向こうで荒垣の声が聞こえ辛い。カーテンを開けると音が強くなり目の前で水滴が窓へ体当たりするのが見える。
『そっちは大丈夫か』
「それなりに。こんな天気だと何処にも行く気になれねぇのがアレですね」
中止になった文化祭は同時に、生徒の登校をも止めさせる為に休校となっていた。それを聞いた時の佐藤達は遊びに行こうと騒いでいたが、こんな天気では外に出るだけで一苦労だろう。もちろんアマネは誘いを断っていた。
『伊織の奴は見舞いに行ったぞ』
「ふふ、風邪薬は買い置きがあるでしょう?」
『馬鹿だから風邪引かねえだろ』
「有里先輩の様子はどうです? 多分まだ高熱でしょうけれど」
聞いたのは文化祭の少し前に風邪を引いてしまったらしい『彼女』のことだ。あの人と同じ『立場』だからという事は決して無いだろうが、同じタイミングで風邪を引くとは可哀想なことである。念の為と思って荒垣へ風邪薬や氷嚢の買い置きを進言しておいて良かった。常備薬は備えておくに限る。
とはいえ、荒垣は台風の前にノートを見に来ていたが。
天田がSEESに加わり、荒垣が加わった事でまた少し書き進めたノートは、台風で文化祭が中止になったことと、『有里』が風邪を引いて高熱を出す事は書いてあった。
けれども十月に起こる事は書いていない。だがそれを、荒垣はアマネが『まだ書いていない』のか『故意に書いていない』のどちらととっているかは分からなかった。
ただ、どちらだとしても荒垣がこの先我が身に起きる事を『知る』事は無い。あんな未来は知らなくていいのだ。
外ではまだ雨が窓を叩いている。カーテンを閉めて珈琲でも淹れようと台所へ向かう。
『文化祭残念だな』
「荒垣さんは開催したら来てくれましたか?」
『……どうだろうな』
返事を曖昧にした荒垣に、晴れたところできっと来なかっただろうなと思った。いや、天田を連れて行くという名目でなら来ただろうか。天田は嫌がりそうだが荒垣が一人で天田を行かせるとも思えない。
あの二人はもっと話せばよかったのだ。そうしたら、もう少しはきっと何かが変わっていた。
通話を切って腰に着けていたウォレットチェーンを軽く叩く。この嵐が過ぎ去り月が変わって直ぐに、アマネにとって最初の『試練』が待ち受けている。
まだ荒垣を助ける為の方法は思いついていない。思考のロジックは行き止まりばかりを目指している。
いっそのことストレガを動けなくしてしまえばいい。そう思いはしても現実的ではないその考えに実行には移せなかった。
ストレガだって、倒す事が目的ではないのだ。
『そっちは大丈夫か』
「それなりに。こんな天気だと何処にも行く気になれねぇのがアレですね」
中止になった文化祭は同時に、生徒の登校をも止めさせる為に休校となっていた。それを聞いた時の佐藤達は遊びに行こうと騒いでいたが、こんな天気では外に出るだけで一苦労だろう。もちろんアマネは誘いを断っていた。
『伊織の奴は見舞いに行ったぞ』
「ふふ、風邪薬は買い置きがあるでしょう?」
『馬鹿だから風邪引かねえだろ』
「有里先輩の様子はどうです? 多分まだ高熱でしょうけれど」
聞いたのは文化祭の少し前に風邪を引いてしまったらしい『彼女』のことだ。あの人と同じ『立場』だからという事は決して無いだろうが、同じタイミングで風邪を引くとは可哀想なことである。念の為と思って荒垣へ風邪薬や氷嚢の買い置きを進言しておいて良かった。常備薬は備えておくに限る。
とはいえ、荒垣は台風の前にノートを見に来ていたが。
天田がSEESに加わり、荒垣が加わった事でまた少し書き進めたノートは、台風で文化祭が中止になったことと、『有里』が風邪を引いて高熱を出す事は書いてあった。
けれども十月に起こる事は書いていない。だがそれを、荒垣はアマネが『まだ書いていない』のか『故意に書いていない』のどちらととっているかは分からなかった。
ただ、どちらだとしても荒垣がこの先我が身に起きる事を『知る』事は無い。あんな未来は知らなくていいのだ。
外ではまだ雨が窓を叩いている。カーテンを閉めて珈琲でも淹れようと台所へ向かう。
『文化祭残念だな』
「荒垣さんは開催したら来てくれましたか?」
『……どうだろうな』
返事を曖昧にした荒垣に、晴れたところできっと来なかっただろうなと思った。いや、天田を連れて行くという名目でなら来ただろうか。天田は嫌がりそうだが荒垣が一人で天田を行かせるとも思えない。
あの二人はもっと話せばよかったのだ。そうしたら、もう少しはきっと何かが変わっていた。
通話を切って腰に着けていたウォレットチェーンを軽く叩く。この嵐が過ぎ去り月が変わって直ぐに、アマネにとって最初の『試練』が待ち受けている。
まだ荒垣を助ける為の方法は思いついていない。思考のロジックは行き止まりばかりを目指している。
いっそのことストレガを動けなくしてしまえばいい。そう思いはしても現実的ではないその考えに実行には移せなかった。
ストレガだって、倒す事が目的ではないのだ。