ペルソナP3P
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「彼女はメーディア、自分のペルソナへ依存しているんです」
「依存」
「そうすることで安心感を得ているんです。真田先輩と桐条先輩はそういう依存を知らねぇ人ですから、チドリを理解してやる事は出来ねぇでしょう」
「……出来ねえんじゃなくて、出来な『かった』んだろ」
アマネの言葉を訂正する荒垣の隣を歩きながら、フードを深く被り直してアマネは小さく笑った。病院内の廊下である。
ここには前の満月の日に巌戸台分寮の屋上で捕まった、ストレガの一人であるチドリが入院していた。だが本来であれば、アマネには会いに来る予定はない。
「そうですね。出来ませんでした。あの人達は彼女を現状ただの敵としてしか見れませんから」
「SEESに入るのか?」
「入りません。彼女は――」
言いかけたところで前方の病室から騒ぎ声が聞こえた。荒垣と一緒に足を速めてその病室へ向かえば、中では桐条と真田が寝台の上のチドリを見て慌てている。
寝台で上半身を起こしていたらしいチドリは胸元と布団を握り締め苦しんでおり、その背後へ昼間だというのに薄っすらと彼女のペルソナであるメーディアの姿が見えた。
発作が起こる事は知らなかったが、荒垣から発作が起こるかもしれないと聞いてやってきたのだ。捕まって病院に搬送されてからのチドリは制御剤を服用していない。
苦しんでいるチドリへ駆け寄り、咄嗟に布団を掴んでいる手へ手を伸ばしソレを握り締める。後ろでは桐条と真田がアマネを何者かと言っているが、それはもう荒垣へ任せた。
「『メーディア』! 落ち着けぇ!」
「っ――」
脂汗を滲ませたチドリがアマネを見る。目が合って少しだけ驚いたようだったが苦しくて何も言えないらしい。
やがておとなしく消えていったメーディアと落ち着きを取り戻したチドリに、アマネは彼女の背へ手を添えて寝かせてやる。チドリは何か言いたげにアマネを見ていたが、結局何も言えずに眼を閉じていた。
「どうだ」
「……疲れて眠ったようです。次の発作がいつあるのか分かりませんが、当分は大丈夫でしょう」
振り返れば荒垣が桐条と真田を押さえている。だが目が合うと無理矢理前に出た桐条が詰め寄ってきた。
「君は何者だ?」
単純明快な問い掛けだが、それに対する答え方は多様だ。更に言うなら桐条がアマネの答えを聞いてそれを信じる根拠も調べる術も無い。
だからアマネはフードの陰から荒垣を見た後、真っ直ぐに桐条を見返した。
「答える義務は無い」
「なっ……」
絶句している桐条の脇を抜けて、荒垣の腕を掴んで病室を出る。暫く歩いてエレベーターへ乗り込んでから口を開いた。
「後で追及されるでしょうけれど、あまり知らない奴だとでも答えておいてください」
「それで済むわけネエだろ」
「そもそもここで会うことすら想定外ですから」
荒垣から制御剤のことを聞いていなければ来なかっただろう。荒垣のカストールは静められたがメーディアも出来るとは限らなかった。だが荒垣がアマネに会ってから使わずにいる制御剤は寿命を縮める。使わないに越した事は無い薬だ。
「依存」
「そうすることで安心感を得ているんです。真田先輩と桐条先輩はそういう依存を知らねぇ人ですから、チドリを理解してやる事は出来ねぇでしょう」
「……出来ねえんじゃなくて、出来な『かった』んだろ」
アマネの言葉を訂正する荒垣の隣を歩きながら、フードを深く被り直してアマネは小さく笑った。病院内の廊下である。
ここには前の満月の日に巌戸台分寮の屋上で捕まった、ストレガの一人であるチドリが入院していた。だが本来であれば、アマネには会いに来る予定はない。
「そうですね。出来ませんでした。あの人達は彼女を現状ただの敵としてしか見れませんから」
「SEESに入るのか?」
「入りません。彼女は――」
言いかけたところで前方の病室から騒ぎ声が聞こえた。荒垣と一緒に足を速めてその病室へ向かえば、中では桐条と真田が寝台の上のチドリを見て慌てている。
寝台で上半身を起こしていたらしいチドリは胸元と布団を握り締め苦しんでおり、その背後へ昼間だというのに薄っすらと彼女のペルソナであるメーディアの姿が見えた。
発作が起こる事は知らなかったが、荒垣から発作が起こるかもしれないと聞いてやってきたのだ。捕まって病院に搬送されてからのチドリは制御剤を服用していない。
苦しんでいるチドリへ駆け寄り、咄嗟に布団を掴んでいる手へ手を伸ばしソレを握り締める。後ろでは桐条と真田がアマネを何者かと言っているが、それはもう荒垣へ任せた。
「『メーディア』! 落ち着けぇ!」
「っ――」
脂汗を滲ませたチドリがアマネを見る。目が合って少しだけ驚いたようだったが苦しくて何も言えないらしい。
やがておとなしく消えていったメーディアと落ち着きを取り戻したチドリに、アマネは彼女の背へ手を添えて寝かせてやる。チドリは何か言いたげにアマネを見ていたが、結局何も言えずに眼を閉じていた。
「どうだ」
「……疲れて眠ったようです。次の発作がいつあるのか分かりませんが、当分は大丈夫でしょう」
振り返れば荒垣が桐条と真田を押さえている。だが目が合うと無理矢理前に出た桐条が詰め寄ってきた。
「君は何者だ?」
単純明快な問い掛けだが、それに対する答え方は多様だ。更に言うなら桐条がアマネの答えを聞いてそれを信じる根拠も調べる術も無い。
だからアマネはフードの陰から荒垣を見た後、真っ直ぐに桐条を見返した。
「答える義務は無い」
「なっ……」
絶句している桐条の脇を抜けて、荒垣の腕を掴んで病室を出る。暫く歩いてエレベーターへ乗り込んでから口を開いた。
「後で追及されるでしょうけれど、あまり知らない奴だとでも答えておいてください」
「それで済むわけネエだろ」
「そもそもここで会うことすら想定外ですから」
荒垣から制御剤のことを聞いていなければ来なかっただろう。荒垣のカストールは静められたがメーディアも出来るとは限らなかった。だが荒垣がアマネに会ってから使わずにいる制御剤は寿命を縮める。使わないに越した事は無い薬だ。