ペルソナP3P
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
廊下を歩いて階段を上がろうと踊り場を曲がったところで、上の階から来た人とぶつかってしまった。咄嗟によろけたその人へ手を差し出して倒れてしまうのを阻止したところで、内心しまったと考える。
金髪の、カチューシャとして誤魔化しているが人ではありえない耳。振り返ってアマネを見上げる碧の、アマネとはまた違う作り物じみた眼。
実際に“彼女”の眼は人工物だけれど。人とは違う僅かな稼働の振動が制服越しに響く。
「放してください」
「あ、そうですね。……怪我はありませんか?」
「私は建築物へ激突した程度では擦過傷も出来ないであります」
久しぶりに聞く声はしかし、人とは感覚が違う表現をしている。『昔』もその感覚の違いが大変だったなと思い出しつつ、アマネは“アイギス”の手を握って微笑んだ。
「激突したら人は痛みを感じます。だから目の前で自分以外の誰かが激突したら、痛いのではと考えて声を掛けます」
「……なるほどなー」
「それと、人同士はあまり勢いが無いので『ぶつかった』と表現した方がいいでしょう」
「了解であります」
抑揚の無い、けれども感心と新認識を示す言葉。今の自分はそれを聞いても上手く笑えているだろうかと、アイギスをわざとあまり意識しない様に考えた。
まだ彼女とはあまり話が出来ない。彼女は何も覚えていないし、時が来て思い出したとしてもその中にアマネの記憶がある訳がなく。
人の素肌と同じ感触を追求した手を離し、アマネは脇へ避けて道を譲った。道を譲られた事は理解したのか御礼を言って階段を降りていこうとするアイギスが、ふと足を止めて振り返る。
何かあっただろうかと首を傾げれば、アイギスも同じ様に首を傾げた。
「貴方は痛くありませんでしたか?」
他意はきっと無いのだろう。自分が『固い』と分かっているからの言葉だ。
「貴女に心配されたので、痛くなくなりました」
「? どういう事でしょうか?」
「大丈夫だということです」
今はそこまででいい。これ以上追求の為に話しているとアマネの方がボロを出しそうだったのでアイギスの視線を振り払って階段を駆け上る。全てが最初に戻ってしまって忘れられているという事が、アマネ自身の為だけでは無く少し辛く思えた。
きっとアイギスはアマネが知っているのと同じ“過ち”を十年前に起こしていて、今はそれを忘れているが思い出す。そして『彼』ではなく『彼女』を改めて守ろうとするのだ。
ただアマネが“頑張れば”、彼女は嬉し涙を流せることは分かっている。だからアマネはまだ頑張れる筈だ。
金髪の、カチューシャとして誤魔化しているが人ではありえない耳。振り返ってアマネを見上げる碧の、アマネとはまた違う作り物じみた眼。
実際に“彼女”の眼は人工物だけれど。人とは違う僅かな稼働の振動が制服越しに響く。
「放してください」
「あ、そうですね。……怪我はありませんか?」
「私は建築物へ激突した程度では擦過傷も出来ないであります」
久しぶりに聞く声はしかし、人とは感覚が違う表現をしている。『昔』もその感覚の違いが大変だったなと思い出しつつ、アマネは“アイギス”の手を握って微笑んだ。
「激突したら人は痛みを感じます。だから目の前で自分以外の誰かが激突したら、痛いのではと考えて声を掛けます」
「……なるほどなー」
「それと、人同士はあまり勢いが無いので『ぶつかった』と表現した方がいいでしょう」
「了解であります」
抑揚の無い、けれども感心と新認識を示す言葉。今の自分はそれを聞いても上手く笑えているだろうかと、アイギスをわざとあまり意識しない様に考えた。
まだ彼女とはあまり話が出来ない。彼女は何も覚えていないし、時が来て思い出したとしてもその中にアマネの記憶がある訳がなく。
人の素肌と同じ感触を追求した手を離し、アマネは脇へ避けて道を譲った。道を譲られた事は理解したのか御礼を言って階段を降りていこうとするアイギスが、ふと足を止めて振り返る。
何かあっただろうかと首を傾げれば、アイギスも同じ様に首を傾げた。
「貴方は痛くありませんでしたか?」
他意はきっと無いのだろう。自分が『固い』と分かっているからの言葉だ。
「貴女に心配されたので、痛くなくなりました」
「? どういう事でしょうか?」
「大丈夫だということです」
今はそこまででいい。これ以上追求の為に話しているとアマネの方がボロを出しそうだったのでアイギスの視線を振り払って階段を駆け上る。全てが最初に戻ってしまって忘れられているという事が、アマネ自身の為だけでは無く少し辛く思えた。
きっとアイギスはアマネが知っているのと同じ“過ち”を十年前に起こしていて、今はそれを忘れているが思い出す。そして『彼』ではなく『彼女』を改めて守ろうとするのだ。
ただアマネが“頑張れば”、彼女は嬉し涙を流せることは分かっている。だからアマネはまだ頑張れる筈だ。