ペルソナP3P
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「一月三十一日。世界が滅ぶ可能性がある、といったら貴方は笑いますか?」
荒垣は隣の布団の上で無言でアマネを見ている。
「正確には一人の命があって世界の破滅は回避されます。なので未来は普通に存在してました。……俺が、その『未来』から来たと言ったら、貴方は笑いますか」
「……未来から『来た』?」
「俺は未来を『知ってる』んじゃなくて、一度『経験している』んです」
敷かれた布団の上で鞄を漁りながら座って話すアマネに、荒垣が胡散臭いとばかりの目を向けてきた。そういう反応が当たり前だとも思うので、アマネは苦笑を浮かべる。
荒垣の反応は決して変ではない。むしろアマネの発言の方が本来はおかしいのだ。アマネ自身は何度も『転生』さえしているので今更驚きはしないが、通常であればこんな事を言い出せばそれだけで精神病院行きを勧められる。
鞄の中からアマネ専用の召喚器を取り出し荒垣へ放り投げれば、荒垣がそれをキャッチした。三年間、正確には一年間使っていなかった期間があるとしても、荒垣がSEESに加わって使っていた頃に比べれば随分と使い込まれているだろう。
更には、携帯を取り出して唯一コチラへ持ってこられた『月森』の映る写真を画面へ出す。卒業式の時に取ったもので、卒業証書の筒を小脇へ抱え、写真の中のアマネは微笑んでいた。これ以外に、月森との思い出があるものは持ってこれていない。
手を伸ばして携帯を受け取りそこへ出ている画像を確認した荒垣は、何ともいえない顔になる。
「……つまり、テメェは本当なら同い年だってか」
「いえ、結局貴方より年下であることに変わりは無ぇです」
本当は、荒垣は亡くなってそれ以上年を取る事は亡くなっていたから同い年とも取れなくは無いが、そこはあまり重要じゃない。
「俺はそこで、あのノートに書いた通りのことを経験してきました。そして何が起こるのかとか、どうなるのかとかも知ってるんです。俺にはその結末を変えることは無理ですが、その過程で起こる事を最悪じゃなくすることはきっと出来ると思いました。俺の『事情』と『目的』はそれだけなんです」
携帯を返してきた荒垣はまだアマネの召喚器を弄ぶように検分している。それでも話は聞いているのだろう事は分かったので何も言わなかった。
使い続けているうちに小さい傷や凹みや塗装のハゲが出来てしまった召喚器。それは同時にアマネがそれだけの間シャドウと戦ってきた証拠だ。
それから、『湊さん』と出会って、それだけの年月が経ったという事。
「俺の事情と目的は多分誰にも理解されません。病院へ行けと言われるような事情と、俺以外には意味の分かんねぇ目的です。それでも、俺は『諦めたくない』」
「……信じると思ってんのか」
「信じなくていいです。でも俺が言える理由は本当にそれだけで、疑われようが嫌われようが憎まれようが、俺はそれを貫きてぇと思ってる。俺だけが知っている未来は、俺だけが覚えていればいい」
きっとあれ以上の最悪のシナリオは存在しないと信じている。だからあの未来を変えるつもりで動いているのだ。
荒垣が死んで真田と天田が悲しみ、桐条のご当主が死んで桐条が悲しんで、チドリが死んで伊織が泣いて、望月がいなくなり、『湊さん』が死んで皆が泣いた。
そんな未来を、また経験する必要なんて無い。せっかく何も知らないのなら知らないままでいて欲しいのだ。
グリップをアマネへ向けて召喚器を返してきた荒垣から召喚器を受け取る。胸に抱くように抱えたそれの中で、『黄昏の羽根』が輝いていた。
「お前、馬鹿だろ」
「生憎こういう生き方以外が良く分からなくて」
「分かった」
「何がです?」
呆れたように頭を掻いた荒垣に尋ねる。精神病院へ行った方が良いということがだろうかと思っていると不意に頭を撫でられた。
え、と思う間もなくすぐに頭から退かされた手は、アマネの額を小突いて離れていく。だから荒垣の力は強いのだから手加減をして欲しい。
「もう少し周りに頼ったっていいだろ。少なくともオレは、……仕方ねえからその話を信用してやる」
そう言われた時の思いをどうすればいいのかアマネには分からなかった。やはりこの人は損をしそうなくらい優しい人だと思ってよかったのか、とにかくお礼を言ったほうがいいのかとか、分からなくてとりあえず頭を下げる。荒垣はやはり困っているのか呆れたのか分からない調子でアマネを見ていた。
アマネの知る『シナリオ』では彼は死んでしまう。けれどもそれはやはり回避したい。自分勝手で傲慢な思いかもしれないが、アマネも荒垣も自分の思いだけで動ける『傲慢』な人間だ。
「……でも今のスタンスは変えられません。俺が知ってる未来のことにはいつか必ず荒垣さんも関わってくる。その時の為に未来を教えて俺がどうしようもねぇ未来に変わっちまったらそれも困るので」
「オレの未来はどうなるのかは……」
「言いません。その部分と、貴方に関する事はあのノートへも書きません」
顔を上げて宣言すれば、荒垣は何か言いたげながらも了承した。
自分が死ぬ未来を知っても荒垣なら受け入れてしまいそうだし、天田に復讐されそうだと知った時点でそれを受け入れていた荒垣は、きっとアマネが言っても同じ未来を選ぶのだろう。だから言わない。
言わずに助ける。
荒垣は隣の布団の上で無言でアマネを見ている。
「正確には一人の命があって世界の破滅は回避されます。なので未来は普通に存在してました。……俺が、その『未来』から来たと言ったら、貴方は笑いますか」
「……未来から『来た』?」
「俺は未来を『知ってる』んじゃなくて、一度『経験している』んです」
敷かれた布団の上で鞄を漁りながら座って話すアマネに、荒垣が胡散臭いとばかりの目を向けてきた。そういう反応が当たり前だとも思うので、アマネは苦笑を浮かべる。
荒垣の反応は決して変ではない。むしろアマネの発言の方が本来はおかしいのだ。アマネ自身は何度も『転生』さえしているので今更驚きはしないが、通常であればこんな事を言い出せばそれだけで精神病院行きを勧められる。
鞄の中からアマネ専用の召喚器を取り出し荒垣へ放り投げれば、荒垣がそれをキャッチした。三年間、正確には一年間使っていなかった期間があるとしても、荒垣がSEESに加わって使っていた頃に比べれば随分と使い込まれているだろう。
更には、携帯を取り出して唯一コチラへ持ってこられた『月森』の映る写真を画面へ出す。卒業式の時に取ったもので、卒業証書の筒を小脇へ抱え、写真の中のアマネは微笑んでいた。これ以外に、月森との思い出があるものは持ってこれていない。
手を伸ばして携帯を受け取りそこへ出ている画像を確認した荒垣は、何ともいえない顔になる。
「……つまり、テメェは本当なら同い年だってか」
「いえ、結局貴方より年下であることに変わりは無ぇです」
本当は、荒垣は亡くなってそれ以上年を取る事は亡くなっていたから同い年とも取れなくは無いが、そこはあまり重要じゃない。
「俺はそこで、あのノートに書いた通りのことを経験してきました。そして何が起こるのかとか、どうなるのかとかも知ってるんです。俺にはその結末を変えることは無理ですが、その過程で起こる事を最悪じゃなくすることはきっと出来ると思いました。俺の『事情』と『目的』はそれだけなんです」
携帯を返してきた荒垣はまだアマネの召喚器を弄ぶように検分している。それでも話は聞いているのだろう事は分かったので何も言わなかった。
使い続けているうちに小さい傷や凹みや塗装のハゲが出来てしまった召喚器。それは同時にアマネがそれだけの間シャドウと戦ってきた証拠だ。
それから、『湊さん』と出会って、それだけの年月が経ったという事。
「俺の事情と目的は多分誰にも理解されません。病院へ行けと言われるような事情と、俺以外には意味の分かんねぇ目的です。それでも、俺は『諦めたくない』」
「……信じると思ってんのか」
「信じなくていいです。でも俺が言える理由は本当にそれだけで、疑われようが嫌われようが憎まれようが、俺はそれを貫きてぇと思ってる。俺だけが知っている未来は、俺だけが覚えていればいい」
きっとあれ以上の最悪のシナリオは存在しないと信じている。だからあの未来を変えるつもりで動いているのだ。
荒垣が死んで真田と天田が悲しみ、桐条のご当主が死んで桐条が悲しんで、チドリが死んで伊織が泣いて、望月がいなくなり、『湊さん』が死んで皆が泣いた。
そんな未来を、また経験する必要なんて無い。せっかく何も知らないのなら知らないままでいて欲しいのだ。
グリップをアマネへ向けて召喚器を返してきた荒垣から召喚器を受け取る。胸に抱くように抱えたそれの中で、『黄昏の羽根』が輝いていた。
「お前、馬鹿だろ」
「生憎こういう生き方以外が良く分からなくて」
「分かった」
「何がです?」
呆れたように頭を掻いた荒垣に尋ねる。精神病院へ行った方が良いということがだろうかと思っていると不意に頭を撫でられた。
え、と思う間もなくすぐに頭から退かされた手は、アマネの額を小突いて離れていく。だから荒垣の力は強いのだから手加減をして欲しい。
「もう少し周りに頼ったっていいだろ。少なくともオレは、……仕方ねえからその話を信用してやる」
そう言われた時の思いをどうすればいいのかアマネには分からなかった。やはりこの人は損をしそうなくらい優しい人だと思ってよかったのか、とにかくお礼を言ったほうがいいのかとか、分からなくてとりあえず頭を下げる。荒垣はやはり困っているのか呆れたのか分からない調子でアマネを見ていた。
アマネの知る『シナリオ』では彼は死んでしまう。けれどもそれはやはり回避したい。自分勝手で傲慢な思いかもしれないが、アマネも荒垣も自分の思いだけで動ける『傲慢』な人間だ。
「……でも今のスタンスは変えられません。俺が知ってる未来のことにはいつか必ず荒垣さんも関わってくる。その時の為に未来を教えて俺がどうしようもねぇ未来に変わっちまったらそれも困るので」
「オレの未来はどうなるのかは……」
「言いません。その部分と、貴方に関する事はあのノートへも書きません」
顔を上げて宣言すれば、荒垣は何か言いたげながらも了承した。
自分が死ぬ未来を知っても荒垣なら受け入れてしまいそうだし、天田に復讐されそうだと知った時点でそれを受け入れていた荒垣は、きっとアマネが言っても同じ未来を選ぶのだろう。だから言わない。
言わずに助ける。