ペルソナP3P
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寂れた駅で降りれば外は既に暗くなりつつある。このまま天城旅館へ行けばそのままチェックイン出来るだろう。
駅の外の寂れた雰囲気にか周囲を見回す荒垣へ声を掛け、天城旅館のある方向へ向かうバスへ乗り込む。ローカル線で本数が少ないので、乗り遅れる事がなくてよかった。
「ここは元々炭鉱として栄えた町だったんですが、エネルギー標準が石油に移っていった事で廃れた場所なんです。隣の沖那市との併合の話もあったらしいんですけど、立ち消えたのか住民による反対があったのかは忘れました」
「詳しいんだな」
「……一応、調べたので」
暗くなる前に辿り付けた天城旅館の受付でチェックインをすれば、桃色の着物を着た少女が忙しなく走り回っているのを見かけた。まだアマネが見た事のあるほど髪は長くなく、赤いカチューシャでもないその少女にそれでも懐かしさを覚える。
『天城雪子』。この旅館の一人娘であり、ゆくゆくは女将になるのだろう事を期待されている少女。
けれどもその期待はまだ若い彼女にとっては重圧にも感じられて、その兆しは二年前である今にももうあるようだった。何も無い場所で躓き持っていた花瓶を落としそうになった彼女を、今のアマネは気軽に呼びかける事も出来やしない。
初夏だというのに厚手のコートを着ている荒垣と、制服姿のアマネを内心では不思議に思っているだろうに、顔色へは全く出さずに案内した仲居は流石だと思う。男同士だしそう金も無いので一緒でいいかと取った二人部屋へ案内され、一通りの事を説明してから出て行く仲居を見送り、アマネは制服の上着だけを脱いで荷物の中からいつものパーカーを出した。
「夕食までまだ時間があるので出掛けてきます」
「……気をつけろよ」
それしか言わない荒垣はきっと、アマネがこの場所でも何かをしなければならないことを分かっていたのだろう。ならばどうして付いて来たんだとも思うが、多分それはそれでアマネの事を案じているとかそういうことだ。
不言実行の男である。もしくはやはり聡いと言うべきか。
客室を出てロビーへ行けば、『前』とは違うテレビが鎮座していた。おそらく二年の間でアナログから地上テジタルへ移行するにあたり、買い換えたのだろう。『前』に見たものより小さいそれに、この大きさならテレビの中へ押し込められる事は無かったのだろうかと思ってしまった。
いや、どんな大きさでも彼はやってしまっただろうし、どんな大きさでも入れてしまったのだろう。
パーカーのフードを被って旅館を出る。最初はとりあえず、住んでいたアパートでも確認するかと歩き出した。
駅の外の寂れた雰囲気にか周囲を見回す荒垣へ声を掛け、天城旅館のある方向へ向かうバスへ乗り込む。ローカル線で本数が少ないので、乗り遅れる事がなくてよかった。
「ここは元々炭鉱として栄えた町だったんですが、エネルギー標準が石油に移っていった事で廃れた場所なんです。隣の沖那市との併合の話もあったらしいんですけど、立ち消えたのか住民による反対があったのかは忘れました」
「詳しいんだな」
「……一応、調べたので」
暗くなる前に辿り付けた天城旅館の受付でチェックインをすれば、桃色の着物を着た少女が忙しなく走り回っているのを見かけた。まだアマネが見た事のあるほど髪は長くなく、赤いカチューシャでもないその少女にそれでも懐かしさを覚える。
『天城雪子』。この旅館の一人娘であり、ゆくゆくは女将になるのだろう事を期待されている少女。
けれどもその期待はまだ若い彼女にとっては重圧にも感じられて、その兆しは二年前である今にももうあるようだった。何も無い場所で躓き持っていた花瓶を落としそうになった彼女を、今のアマネは気軽に呼びかける事も出来やしない。
初夏だというのに厚手のコートを着ている荒垣と、制服姿のアマネを内心では不思議に思っているだろうに、顔色へは全く出さずに案内した仲居は流石だと思う。男同士だしそう金も無いので一緒でいいかと取った二人部屋へ案内され、一通りの事を説明してから出て行く仲居を見送り、アマネは制服の上着だけを脱いで荷物の中からいつものパーカーを出した。
「夕食までまだ時間があるので出掛けてきます」
「……気をつけろよ」
それしか言わない荒垣はきっと、アマネがこの場所でも何かをしなければならないことを分かっていたのだろう。ならばどうして付いて来たんだとも思うが、多分それはそれでアマネの事を案じているとかそういうことだ。
不言実行の男である。もしくはやはり聡いと言うべきか。
客室を出てロビーへ行けば、『前』とは違うテレビが鎮座していた。おそらく二年の間でアナログから地上テジタルへ移行するにあたり、買い換えたのだろう。『前』に見たものより小さいそれに、この大きさならテレビの中へ押し込められる事は無かったのだろうかと思ってしまった。
いや、どんな大きさでも彼はやってしまっただろうし、どんな大きさでも入れてしまったのだろう。
パーカーのフードを被って旅館を出る。最初はとりあえず、住んでいたアパートでも確認するかと歩き出した。