ペルソナP3P
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白河通りはビルが乱立しているが、その殆どが連れ込み宿である事を考えると、やはり二年後にビジネスホテルになるとはいえ高校生を泊まらせるホテルにする事はおかしい。アミューズメントホテルとかほざいていた理事長も、学校経営には向いていなかったのだろう。SEESの為だったとしても、彼を教育機関の理事にしたのは絶対に間違っていたと今なら思えた。
少し離れたビルの屋上から双眼鏡で件のホテルの入り口と、その向かいに立つビルの屋上を監視する。山岸という探索に特化したペルソナを持つ者が仲間になった為、前にも増してアマネは注意しなければならない。
いっそストレガのチドリの様に、探索機能を錯乱させる能力があれば楽だったのだが、ない物強請りは馬鹿げていた。
入り口から『彼女』とSEESの面々が四人、ホテルの中へと入っていく。多分大丈夫だろうと思うことにして、アマネはSEESを観察しているストレガの三人へ双眼鏡を向けた。
「監視する奴等を監視って、ウォッチメンかってんだよなぁ」
外国のSF映画を思い出して呟くも、返ってくる相槌などは存在しない。むしろ存在したら怖い。
ストレガの三人は静かにホテル入り口で待機しているメンバーを見下ろしていた。流石にホテル内で行なわれているであろう大型シャドウ討伐は見えまい。もし見えているのなら『湊さん』達が無言を貫いた『何か』を是非教えてもらいたいものである。
影時間が終わる頃になってホテルの中から少し憔悴した様子の『彼女』達が出てきて、アマネが知らない何事かが起こる事も無く淡々と終了したようだった。桐条と真田が去っていき、残った二年生が立ち話をしてから去っていく。
それをおそらくずっと黙って見ていたであろうストレガの三人を確かめ、アマネは双眼鏡を降ろしてビルの手摺りへと登った。
落ちれば軽傷では済まないだろう高さのあるビルとビルの間を飛び越え、少しずつ確実に近付いていきながら、持って来た仮面を身に付けてストレガが居る隣のビルへと着地する。
その足音で気付いたらしい三人がアマネを振り返るのに、アマネは精精悠然とした態度を作って立ち上がった。
仮面越しにタカヤと目が合う。パーカーのフードが脱げてしまっている事に気付いたが、今更直せまい。
「……今日は、色々とユニークな方へ会いますね」
チドリとジンが身構えるのを制してタカヤが言う。その顔は青白く、ペルソナの制御が上手くいかない故の抑制剤の使用で、身体も蝕まれているのだと分かる。
なのに半裸なのがやっぱり納得いかない。
「貴方は我々の敵ですか? それとも味方?」
「……唯一お前の言葉を否定も肯定も出来る者、だろうなぁ」
ジンが手榴弾を投げようとするのをタカヤが制す。手榴弾を持った段階でアマネが構えた召喚器の銃口は、ぶれることなくタカヤへと向けられていた。
「……面白いですね。肯定も否定も出来る、とはどういうことかお聞きしても?」
「死ぬのは恐ろしい事じゃねぇ。怖ぇのはもっと別の事。けれど生きる意味を望んだ事も確かだろぉ?」
『前』にも思ったことだが、ただタカヤへ信奉しているジンやチドリとは違い、実際に『死んだ』経験のあるアマネだけが、おそらく今この場ではタカヤを一番理解も同情もしてやれた。そして同時に、『世界を救った』経験を持つアマネだけが、真っ向から否定も出来る。
構えている召喚器を、ジンの手が下がると同時に降ろす。敵意は無いのだという意思表示をどう受け取ったのか、タカヤはやはり笑みを浮かべていた。
アマネはタカヤだって嫌いではない。『前』では相容れない意見でぶつかりあったが、それでも『可能性』はあったと今でも思っている。
「俺には俺の目的がある。その目的は多分お前等とは逆の目的だぁ。出来れば邪魔をしねぇで欲しい」
「逆の目的だといわれて、わたし達が引き下がるとでも?」
「思ってねぇよ。これは宣戦布告を兼ねた忠告だぁ。俺はきっとお前等の目的の邪魔をする。ソレを見て、それでも抵抗を続けたっていいし諦めたって構わねぇ。俺としては諦めて欲しいが――タカヤ。お前は諦めてくれねぇだろぉ?」
「……そうですね。きっと諦めないでしょう」
「それでも俺は、お前達『も』諦めねぇよ」
意味の半分も通じていれば、タカヤが馬鹿にするなと怒りそうなことを言って、アマネはフードを被り直した。影時間が終わり、深夜の歓楽街に似た騒がしさが戻ってくる。
踵を返したアマネの背中へ、ジンが怒鳴って呼び止めようとしたが無視して手摺りを飛び越えた。そのままビルから飛び降り、下の階の窓枠を伝って地上へと降りる。
路地を出て見上げれば、タカヤがじっと見下ろしていたので手を振った。すぐにビルから逃げる為か見えなくなったそれに、アマネもそれ以上見ているなんて事もせず歩き出す。
真っ直ぐ家へ帰れば尾行される恐れもあるので、程ほどに時間を潰してから帰ることにする。今日の目的はとりあえず一通り済んだ。
たった一度の会話で、彼らを説得できるなんて最初から思っていない。今日の目的はタカヤにアマネへの興味を持たせることだ。
『つまらない話は終わりにしましょう。前言を撤回します。貴方も……話が分からない人だ』
少し離れたビルの屋上から双眼鏡で件のホテルの入り口と、その向かいに立つビルの屋上を監視する。山岸という探索に特化したペルソナを持つ者が仲間になった為、前にも増してアマネは注意しなければならない。
いっそストレガのチドリの様に、探索機能を錯乱させる能力があれば楽だったのだが、ない物強請りは馬鹿げていた。
入り口から『彼女』とSEESの面々が四人、ホテルの中へと入っていく。多分大丈夫だろうと思うことにして、アマネはSEESを観察しているストレガの三人へ双眼鏡を向けた。
「監視する奴等を監視って、ウォッチメンかってんだよなぁ」
外国のSF映画を思い出して呟くも、返ってくる相槌などは存在しない。むしろ存在したら怖い。
ストレガの三人は静かにホテル入り口で待機しているメンバーを見下ろしていた。流石にホテル内で行なわれているであろう大型シャドウ討伐は見えまい。もし見えているのなら『湊さん』達が無言を貫いた『何か』を是非教えてもらいたいものである。
影時間が終わる頃になってホテルの中から少し憔悴した様子の『彼女』達が出てきて、アマネが知らない何事かが起こる事も無く淡々と終了したようだった。桐条と真田が去っていき、残った二年生が立ち話をしてから去っていく。
それをおそらくずっと黙って見ていたであろうストレガの三人を確かめ、アマネは双眼鏡を降ろしてビルの手摺りへと登った。
落ちれば軽傷では済まないだろう高さのあるビルとビルの間を飛び越え、少しずつ確実に近付いていきながら、持って来た仮面を身に付けてストレガが居る隣のビルへと着地する。
その足音で気付いたらしい三人がアマネを振り返るのに、アマネは精精悠然とした態度を作って立ち上がった。
仮面越しにタカヤと目が合う。パーカーのフードが脱げてしまっている事に気付いたが、今更直せまい。
「……今日は、色々とユニークな方へ会いますね」
チドリとジンが身構えるのを制してタカヤが言う。その顔は青白く、ペルソナの制御が上手くいかない故の抑制剤の使用で、身体も蝕まれているのだと分かる。
なのに半裸なのがやっぱり納得いかない。
「貴方は我々の敵ですか? それとも味方?」
「……唯一お前の言葉を否定も肯定も出来る者、だろうなぁ」
ジンが手榴弾を投げようとするのをタカヤが制す。手榴弾を持った段階でアマネが構えた召喚器の銃口は、ぶれることなくタカヤへと向けられていた。
「……面白いですね。肯定も否定も出来る、とはどういうことかお聞きしても?」
「死ぬのは恐ろしい事じゃねぇ。怖ぇのはもっと別の事。けれど生きる意味を望んだ事も確かだろぉ?」
『前』にも思ったことだが、ただタカヤへ信奉しているジンやチドリとは違い、実際に『死んだ』経験のあるアマネだけが、おそらく今この場ではタカヤを一番理解も同情もしてやれた。そして同時に、『世界を救った』経験を持つアマネだけが、真っ向から否定も出来る。
構えている召喚器を、ジンの手が下がると同時に降ろす。敵意は無いのだという意思表示をどう受け取ったのか、タカヤはやはり笑みを浮かべていた。
アマネはタカヤだって嫌いではない。『前』では相容れない意見でぶつかりあったが、それでも『可能性』はあったと今でも思っている。
「俺には俺の目的がある。その目的は多分お前等とは逆の目的だぁ。出来れば邪魔をしねぇで欲しい」
「逆の目的だといわれて、わたし達が引き下がるとでも?」
「思ってねぇよ。これは宣戦布告を兼ねた忠告だぁ。俺はきっとお前等の目的の邪魔をする。ソレを見て、それでも抵抗を続けたっていいし諦めたって構わねぇ。俺としては諦めて欲しいが――タカヤ。お前は諦めてくれねぇだろぉ?」
「……そうですね。きっと諦めないでしょう」
「それでも俺は、お前達『も』諦めねぇよ」
意味の半分も通じていれば、タカヤが馬鹿にするなと怒りそうなことを言って、アマネはフードを被り直した。影時間が終わり、深夜の歓楽街に似た騒がしさが戻ってくる。
踵を返したアマネの背中へ、ジンが怒鳴って呼び止めようとしたが無視して手摺りを飛び越えた。そのままビルから飛び降り、下の階の窓枠を伝って地上へと降りる。
路地を出て見上げれば、タカヤがじっと見下ろしていたので手を振った。すぐにビルから逃げる為か見えなくなったそれに、アマネもそれ以上見ているなんて事もせず歩き出す。
真っ直ぐ家へ帰れば尾行される恐れもあるので、程ほどに時間を潰してから帰ることにする。今日の目的はとりあえず一通り済んだ。
たった一度の会話で、彼らを説得できるなんて最初から思っていない。今日の目的はタカヤにアマネへの興味を持たせることだ。
『つまらない話は終わりにしましょう。前言を撤回します。貴方も……話が分からない人だ』