ペルソナP3P
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復讐依頼サイトが流行り始めていることについて、復讐代行人を名乗っているストレガの三人を、アマネは早いうちから釘を打っておくかで非常に悩んでいる。
『前』ではそのストレガのチドリは伊織を助ける為に命を落とした。残りの二人のうちジンは、『一月三十一日』のあの日以来会っていないから、助かって生きていたのかも分からない。
タカヤは。タカヤについては、目の前で絶命した。
アマネ達の行動を色々な形で妨害してきたその三人は、『今』もきっと禍根を作るだろう。いつだったかには『俺はお前等が邪魔者になりそうだってんで殺してるかも知れねぇ』と言った事もあるが、だからといって簡単に手を出せるかというと、彼等の事情をも知った今では少し難しい。
それに、彼らにとってはその『死』こそ救いになってしまう。今のままでは。
「……現実逃避はここまでにして」
「なんだよ斑鳩! 言いたいことがあんなら言えよ!」
目の前のクラスメイトが、伏見を謂れのない罪で糾弾していたところへ佐藤と一緒に割り込んだはいいが、やはり伏見に味方が付いたからといって糾弾を止める相手ではない。彼はそんな調子で『前』にもアマネを非難してきている。
昨日の今日で発覚した教材費横領事件は、少しタイムラグが発生して『前』のように放課後ではなく朝のうちにクラス中へ知れ渡った。一人分の金額は大した事は無いが、それが一クラス分ともなれば大金である。
そんな大金を手にした事で目が眩んだ。伏見が母子家庭だから。貧乏人だから。
彼にとってはそれが『常識』なのかもしれない。けれどもやはりアマネにとっては、それは理由にはならないのだ。
伏見と佐藤は必死になって否定している。貧乏だからとは理由にならないと今にも泣きそうな伏見に、アマネは誰にも気付かれないように息を吐いた。
『前』にも聞いた事だと分かっていても。
「……父親が居なくて貧乏だから盗むのなら、両親の居ねぇ俺は殺人でも起こすのかぁ?」
「へ――」
驚いたような声は佐藤から。それを皮切りに騒がしかった教室が静まり返る。
「伏見さんが母子家庭でお前に迷惑掛けたかぁ? そんなちっぽけな理由で伏見さんを疑うテメェの両親はどんな聖人君子だよ。いつかは必ず死んでしまう人が今居ねぇだけで罪人だってんなら俺は極悪人だろぉ。両親も居なけりゃ弟も『兄』として慕ってた人さえ助けられずに生きてる俺なんか、テメェの『常識』じゃそうなるなぁ」
「そ、そこまで……」
「言ってるよ。伏見さんへお前が言ったのはそう言うことだぁ」
二の句が次げなくなったクラスメイトから視線を逸らし、アマネは伏見と佐藤と連れて教室を出た。
「桐条生徒会長、お時間よろしいですか」
「君は?」
「一年の斑鳩と言います。今日は俺のクラスで無くなった教材費の事でお話ししたく」
教室を飛び出した勢いで生徒会室へ向かい、その中で生徒会の仕事をしていた桐条へ話しかける。本来であればこのタイミングで彼女へ話しかける事も彼女へ顔を覚えられるような行為もしたくは無かったが、ここでは彼女の協力を求めるしかない。
正確にはこの学校の後援者一族という肩書きを。
「先生、昨日の放課後に伏見さんが確かに教材費を渡しているのを俺は見たのですが、どうして受け取っていないなどと嘘を吐いたのか説明していただけますか」
二人から三人に増えた同行者を引き連れて職員室に向かい、昨日伏見から教材費を受け取っていた教師へ詰め寄る。周囲には各々の作業をしていた教員達が顔を上げてアマネ達を窺っていた。
事の発端は彼が嘘を吐いた事だ。
仕事をしていて帰りが遅くなり、終電が無くなってしまった為タクシーで帰ろうとしたのだが財布の中身が心許なかった為に、後で返せばいいかと手元にあった教材費を使用した。むしろ彼こそ目の前の金に目が眩んだのである。
アマネに追及されてとうとう真実を口にした教師に桐条が怒ろうとするのを止めた。どうせ桐条が彼を罰すると分かっていても。
「貴方の行動と嘘のせいで伏見さんは理不尽な暴言を受けました。そういう考えがあるから……」
そういう考えがあるから。その先の言葉は、今は関係ないだろうと言えなかった。『前』でも思ったが、マフィアと関係があった最初の人生の、当時の階級社会を思い出したことは誰にも言えないだろう。よく考えればあまり関係も無い。
後の事は自然と桐条へ任せる形になり、アマネは伏見と佐藤を連れて職員室を出る。真実が分かったと教室へ戻って言わねばならないのだが、アマネの足取りは重い。
理由は後ろの二人が気まずげだからだ。おそらくアマネが今まで行っていなかった『両親の死別』を知って、色々考えているのだろう。
別にそれはいいのだ。アマネの両親が長く生きている事は余り無かったし、何度かは捨てられた覚えだってあるので、今更両親からの愛情だ何だと騒ぐつもりは無い。それに今の両親は、亡くなる前は盛大にアマネへ愛情を注いでくれた人達だった。叔父一家も娘を除けば良い人である。
「……あの、さ」
最初に口を開いたのは佐藤だ。
「オレお前が一人暮らししてんのは知ってたけど、実家が遠いからだと思ってた」
「……両親の事は聞かれなかったしぃ」
「普通聞かないだろ! じゃ無くて……その、なんて言うんだ? この度はお日柄もよく?」
思わず吹き出した。
「っ……佐藤、お前……そりゃ祝いの時に言う文句だろぉ?」
「ご、ご愁傷様のこと、かな」
「それだ! ご愁傷様! 斑鳩ご愁傷様!」
「ハイハイ。……考えすぎた俺が馬鹿だったなぁ」
佐藤を、両親がいないと聞いて単純に哀れむ男だと思っていた自分が馬鹿だったらしい。
『前』ではそのストレガのチドリは伊織を助ける為に命を落とした。残りの二人のうちジンは、『一月三十一日』のあの日以来会っていないから、助かって生きていたのかも分からない。
タカヤは。タカヤについては、目の前で絶命した。
アマネ達の行動を色々な形で妨害してきたその三人は、『今』もきっと禍根を作るだろう。いつだったかには『俺はお前等が邪魔者になりそうだってんで殺してるかも知れねぇ』と言った事もあるが、だからといって簡単に手を出せるかというと、彼等の事情をも知った今では少し難しい。
それに、彼らにとってはその『死』こそ救いになってしまう。今のままでは。
「……現実逃避はここまでにして」
「なんだよ斑鳩! 言いたいことがあんなら言えよ!」
目の前のクラスメイトが、伏見を謂れのない罪で糾弾していたところへ佐藤と一緒に割り込んだはいいが、やはり伏見に味方が付いたからといって糾弾を止める相手ではない。彼はそんな調子で『前』にもアマネを非難してきている。
昨日の今日で発覚した教材費横領事件は、少しタイムラグが発生して『前』のように放課後ではなく朝のうちにクラス中へ知れ渡った。一人分の金額は大した事は無いが、それが一クラス分ともなれば大金である。
そんな大金を手にした事で目が眩んだ。伏見が母子家庭だから。貧乏人だから。
彼にとってはそれが『常識』なのかもしれない。けれどもやはりアマネにとっては、それは理由にはならないのだ。
伏見と佐藤は必死になって否定している。貧乏だからとは理由にならないと今にも泣きそうな伏見に、アマネは誰にも気付かれないように息を吐いた。
『前』にも聞いた事だと分かっていても。
「……父親が居なくて貧乏だから盗むのなら、両親の居ねぇ俺は殺人でも起こすのかぁ?」
「へ――」
驚いたような声は佐藤から。それを皮切りに騒がしかった教室が静まり返る。
「伏見さんが母子家庭でお前に迷惑掛けたかぁ? そんなちっぽけな理由で伏見さんを疑うテメェの両親はどんな聖人君子だよ。いつかは必ず死んでしまう人が今居ねぇだけで罪人だってんなら俺は極悪人だろぉ。両親も居なけりゃ弟も『兄』として慕ってた人さえ助けられずに生きてる俺なんか、テメェの『常識』じゃそうなるなぁ」
「そ、そこまで……」
「言ってるよ。伏見さんへお前が言ったのはそう言うことだぁ」
二の句が次げなくなったクラスメイトから視線を逸らし、アマネは伏見と佐藤と連れて教室を出た。
「桐条生徒会長、お時間よろしいですか」
「君は?」
「一年の斑鳩と言います。今日は俺のクラスで無くなった教材費の事でお話ししたく」
教室を飛び出した勢いで生徒会室へ向かい、その中で生徒会の仕事をしていた桐条へ話しかける。本来であればこのタイミングで彼女へ話しかける事も彼女へ顔を覚えられるような行為もしたくは無かったが、ここでは彼女の協力を求めるしかない。
正確にはこの学校の後援者一族という肩書きを。
「先生、昨日の放課後に伏見さんが確かに教材費を渡しているのを俺は見たのですが、どうして受け取っていないなどと嘘を吐いたのか説明していただけますか」
二人から三人に増えた同行者を引き連れて職員室に向かい、昨日伏見から教材費を受け取っていた教師へ詰め寄る。周囲には各々の作業をしていた教員達が顔を上げてアマネ達を窺っていた。
事の発端は彼が嘘を吐いた事だ。
仕事をしていて帰りが遅くなり、終電が無くなってしまった為タクシーで帰ろうとしたのだが財布の中身が心許なかった為に、後で返せばいいかと手元にあった教材費を使用した。むしろ彼こそ目の前の金に目が眩んだのである。
アマネに追及されてとうとう真実を口にした教師に桐条が怒ろうとするのを止めた。どうせ桐条が彼を罰すると分かっていても。
「貴方の行動と嘘のせいで伏見さんは理不尽な暴言を受けました。そういう考えがあるから……」
そういう考えがあるから。その先の言葉は、今は関係ないだろうと言えなかった。『前』でも思ったが、マフィアと関係があった最初の人生の、当時の階級社会を思い出したことは誰にも言えないだろう。よく考えればあまり関係も無い。
後の事は自然と桐条へ任せる形になり、アマネは伏見と佐藤を連れて職員室を出る。真実が分かったと教室へ戻って言わねばならないのだが、アマネの足取りは重い。
理由は後ろの二人が気まずげだからだ。おそらくアマネが今まで行っていなかった『両親の死別』を知って、色々考えているのだろう。
別にそれはいいのだ。アマネの両親が長く生きている事は余り無かったし、何度かは捨てられた覚えだってあるので、今更両親からの愛情だ何だと騒ぐつもりは無い。それに今の両親は、亡くなる前は盛大にアマネへ愛情を注いでくれた人達だった。叔父一家も娘を除けば良い人である。
「……あの、さ」
最初に口を開いたのは佐藤だ。
「オレお前が一人暮らししてんのは知ってたけど、実家が遠いからだと思ってた」
「……両親の事は聞かれなかったしぃ」
「普通聞かないだろ! じゃ無くて……その、なんて言うんだ? この度はお日柄もよく?」
思わず吹き出した。
「っ……佐藤、お前……そりゃ祝いの時に言う文句だろぉ?」
「ご、ご愁傷様のこと、かな」
「それだ! ご愁傷様! 斑鳩ご愁傷様!」
「ハイハイ。……考えすぎた俺が馬鹿だったなぁ」
佐藤を、両親がいないと聞いて単純に哀れむ男だと思っていた自分が馬鹿だったらしい。