ペルソナP3P
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学校から家へ帰ると荒垣がいた。既に勝手知ったると言う訳ではなく、アマネを待っていたらしい。
「アキが退院するらしいが、お前も行くか?」
「退院?」
「検査入院してたんだ」
知らない事実にこめかみへ手を当てて考える。アマネが『一度目』に来た時は数日後のゴールデンウィークの後なので、真田が検査入院していたなど知らなかった。
「……行かねぇことにします。下手に付いてって顔を見られても困りますし」
「だろうな」
元より期待していなかったのか荒垣が靴を履いてアマネの家を出て行く。その程度の話なら携帯で済んだだろうにと思ったが、部屋へ入れば『これからの事』が書いてあるノートがテーブルの上に置きっ放しになっていた。気になって確認しに来たのだろう。
鞄を置いてそのノートを手にとって捲り、もうすぐ始まる『アマネが覚えている時間』へ目を通す。それはゴールデンウィークの後の、SEESにとっては二体目の大型シャドウを倒した日から始まっていた。
「……あ、やべ」
読み返して気付いたが、このノートに書いてある名前は有里『湊』のままだ。今の『彼女』のことが当然だが書かれていない。
『彼』が『彼女』であることにどれだけの差異があるのか分からないので、ある意味『湊』のままで書いておくことが大切なのだろうが、何も知らずに読んでいる荒垣はもしかしたら混乱するかもしれない。
追求されたら話すべきか。それともはぐらかすべきか。
とりあえずそのノートの余白に今日の日付と『真田が退院』とだけ書き込んでおく。後で読み返した時に『二度目』である今の事も書いておけば確認がしやすい。
夕方になって再びやってきた荒垣は憮然とした顔で家へ上がりこみ、夕食を作っていたアマネを気にすることなくノートを取り上げて開いていた。
「……おい」
「なんですか」
「この有里『湊』ってのは誰だ」
やはり聞いてきたかという思いが半分、よく気付いたなというのが半分。
「月光館学園高等部二年、SEESのリーダー『だった』人です」
「『リーダー』だった……?」
鍋をかき混ぜるのに使っていた箸を置いて振り返る。
「前にも言ったと思うんですが、おおまかな流れ以外の細かい部分は違っているんですよ。有里『湊』が『奏』であることも、そう言った違いの一つです」
「違いの一つったって、性別だぞ」
「きっと関係無ぇんでしょう。性別なんて」
荒垣が何かを言おうとして口を閉ざした。
「運命とか、宿命とか、そもそも『世界』にとって性別も名前も性格も何もかもが、きっとどうでもいいんでしょう。そういう『役目』を担いさえすりゃ、何だって」
けれども、それを『どうでもいい』と言い捨てられないから、アマネは頑張ろうとしている訳で。
性別や名前が違う理由なんてアマネは知らない。平行世界だからとか、そういう理由だとすれば簡単だが、それ以外の理由があるとすればもうお手上げだ。
分かるのはアマネが『本当に助けたかった人』は、助ける事どころか会う事も出来ないという事。
無言でアマネを見つめている荒垣から、アマネのほうが先に視線を逸らす。鍋へ向き直って箸を握った。
「アキが退院するらしいが、お前も行くか?」
「退院?」
「検査入院してたんだ」
知らない事実にこめかみへ手を当てて考える。アマネが『一度目』に来た時は数日後のゴールデンウィークの後なので、真田が検査入院していたなど知らなかった。
「……行かねぇことにします。下手に付いてって顔を見られても困りますし」
「だろうな」
元より期待していなかったのか荒垣が靴を履いてアマネの家を出て行く。その程度の話なら携帯で済んだだろうにと思ったが、部屋へ入れば『これからの事』が書いてあるノートがテーブルの上に置きっ放しになっていた。気になって確認しに来たのだろう。
鞄を置いてそのノートを手にとって捲り、もうすぐ始まる『アマネが覚えている時間』へ目を通す。それはゴールデンウィークの後の、SEESにとっては二体目の大型シャドウを倒した日から始まっていた。
「……あ、やべ」
読み返して気付いたが、このノートに書いてある名前は有里『湊』のままだ。今の『彼女』のことが当然だが書かれていない。
『彼』が『彼女』であることにどれだけの差異があるのか分からないので、ある意味『湊』のままで書いておくことが大切なのだろうが、何も知らずに読んでいる荒垣はもしかしたら混乱するかもしれない。
追求されたら話すべきか。それともはぐらかすべきか。
とりあえずそのノートの余白に今日の日付と『真田が退院』とだけ書き込んでおく。後で読み返した時に『二度目』である今の事も書いておけば確認がしやすい。
夕方になって再びやってきた荒垣は憮然とした顔で家へ上がりこみ、夕食を作っていたアマネを気にすることなくノートを取り上げて開いていた。
「……おい」
「なんですか」
「この有里『湊』ってのは誰だ」
やはり聞いてきたかという思いが半分、よく気付いたなというのが半分。
「月光館学園高等部二年、SEESのリーダー『だった』人です」
「『リーダー』だった……?」
鍋をかき混ぜるのに使っていた箸を置いて振り返る。
「前にも言ったと思うんですが、おおまかな流れ以外の細かい部分は違っているんですよ。有里『湊』が『奏』であることも、そう言った違いの一つです」
「違いの一つったって、性別だぞ」
「きっと関係無ぇんでしょう。性別なんて」
荒垣が何かを言おうとして口を閉ざした。
「運命とか、宿命とか、そもそも『世界』にとって性別も名前も性格も何もかもが、きっとどうでもいいんでしょう。そういう『役目』を担いさえすりゃ、何だって」
けれども、それを『どうでもいい』と言い捨てられないから、アマネは頑張ろうとしている訳で。
性別や名前が違う理由なんてアマネは知らない。平行世界だからとか、そういう理由だとすれば簡単だが、それ以外の理由があるとすればもうお手上げだ。
分かるのはアマネが『本当に助けたかった人』は、助ける事どころか会う事も出来ないという事。
無言でアマネを見つめている荒垣から、アマネのほうが先に視線を逸らす。鍋へ向き直って箸を握った。