ペルソナP3P
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荒垣視点
自分の罪を見つめるように、自分が暴走してしまった場所を見つめ続ける日々に現れた髪の長い男は、荒垣の隣で何をするでもなく座っていた。
最初に飛びついてきた時のように感情を高ぶらせるでもなく、だが何かをいつも言いたげにしている様子は、気にならないといえば嘘になる。元より荒垣は放っておけない性格なのだ。
その日も健全な学生が出歩くには遅い時間に、路地裏の不良の溜まり場へとやってきたその男が、今日の出来事といって学校であった事を話している。荒垣がどんなに邪険にしようとも無視しようとも気にしていないらしい部分には、幼馴染の明彦と似た感覚を覚えた。だがそれだけだ。
荒垣にはその男がどうしてこんなに自分へ構ってもらいに来るのか分からなかった。
不良の何が楽しいのか分からない笑い声が遠ざかっていく。時計を確認するともうすぐ深夜零時で、影時間が来るなと荒垣は隣へ座っている男を振り向いた。
「お前、そろそろ帰れ」
「え? ……ああ、大丈夫です」
腕時計で時間を確認した男はそうのたまう。何が大丈夫なのかと訝しく思った。影時間には象徴化するからか。
いや、適応していない者は影時間の存在すら知らないのだから、自分が象徴化することすらそもそも知らない筈だ。なので男の言う『大丈夫』が影時間へ向けて言われたものではある筈が無い。
おそらく他の不良へ因縁をつけられるとか、そう言う意味に取ったのだろう。それもそれで危ない事に変わりは無いが、こんな夜遅くに不良の溜まり場へ来ている時点で、あまり危なくも無いのかと不思議に思った。
いずれにせよ帰った方が良いことには変わりはないのだが。
男はいつも、一時間以上は必ず荒垣の隣へ座っている。大抵はあくびを漏らしたところで荒垣へも帰るように言って去っていくが、それで真っ直ぐに家へ帰っているのかも知らない。
それに今日はいつもより遅く来かたから、帰る時間だっていつもよりずらすのではないか。そう思うと荒垣は舌打ちを溢した。
「荒垣さん?」
「……送ってやるから、もう帰れ」
「別に一人で帰れますけど」
「危ねえだろ。不良どもや……」
「影時間になってからのシャドウが、ですか?」
男を送っていく為に立ち上がって、男の言葉に男を見下ろす。
「……なんで、それを」
遠くから怒声と笑い声。潮の香り。フードに隠されて男の表情は読めない。
「俺は――」
「……ッゲホ、ゲホッ!」
男の言葉を遮るように咳が出て荒垣は口を押さえる。こんな時に発作かと思い内ポケットの抑制薬を取り出そうとして、立ち上がった男の手がそれを阻止した。
何するんだと睨んだ先の男は荒垣の背後を見上げている。
「……『カストール』。暴れちゃ駄目だぁ」
男の声に従うように、咳と動悸が治まっていった。手の平には少し吐き出した血がついている。
それを困ったように見た男が、やはり困ったように微笑んだ。
自分の罪を見つめるように、自分が暴走してしまった場所を見つめ続ける日々に現れた髪の長い男は、荒垣の隣で何をするでもなく座っていた。
最初に飛びついてきた時のように感情を高ぶらせるでもなく、だが何かをいつも言いたげにしている様子は、気にならないといえば嘘になる。元より荒垣は放っておけない性格なのだ。
その日も健全な学生が出歩くには遅い時間に、路地裏の不良の溜まり場へとやってきたその男が、今日の出来事といって学校であった事を話している。荒垣がどんなに邪険にしようとも無視しようとも気にしていないらしい部分には、幼馴染の明彦と似た感覚を覚えた。だがそれだけだ。
荒垣にはその男がどうしてこんなに自分へ構ってもらいに来るのか分からなかった。
不良の何が楽しいのか分からない笑い声が遠ざかっていく。時計を確認するともうすぐ深夜零時で、影時間が来るなと荒垣は隣へ座っている男を振り向いた。
「お前、そろそろ帰れ」
「え? ……ああ、大丈夫です」
腕時計で時間を確認した男はそうのたまう。何が大丈夫なのかと訝しく思った。影時間には象徴化するからか。
いや、適応していない者は影時間の存在すら知らないのだから、自分が象徴化することすらそもそも知らない筈だ。なので男の言う『大丈夫』が影時間へ向けて言われたものではある筈が無い。
おそらく他の不良へ因縁をつけられるとか、そう言う意味に取ったのだろう。それもそれで危ない事に変わりは無いが、こんな夜遅くに不良の溜まり場へ来ている時点で、あまり危なくも無いのかと不思議に思った。
いずれにせよ帰った方が良いことには変わりはないのだが。
男はいつも、一時間以上は必ず荒垣の隣へ座っている。大抵はあくびを漏らしたところで荒垣へも帰るように言って去っていくが、それで真っ直ぐに家へ帰っているのかも知らない。
それに今日はいつもより遅く来かたから、帰る時間だっていつもよりずらすのではないか。そう思うと荒垣は舌打ちを溢した。
「荒垣さん?」
「……送ってやるから、もう帰れ」
「別に一人で帰れますけど」
「危ねえだろ。不良どもや……」
「影時間になってからのシャドウが、ですか?」
男を送っていく為に立ち上がって、男の言葉に男を見下ろす。
「……なんで、それを」
遠くから怒声と笑い声。潮の香り。フードに隠されて男の表情は読めない。
「俺は――」
「……ッゲホ、ゲホッ!」
男の言葉を遮るように咳が出て荒垣は口を押さえる。こんな時に発作かと思い内ポケットの抑制薬を取り出そうとして、立ち上がった男の手がそれを阻止した。
何するんだと睨んだ先の男は荒垣の背後を見上げている。
「……『カストール』。暴れちゃ駄目だぁ」
男の声に従うように、咳と動悸が治まっていった。手の平には少し吐き出した血がついている。
それを困ったように見た男が、やはり困ったように微笑んだ。