ペルソナP3P
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アマネはその日も、変装代わりの濃紺色をしたサイズが合わないパーカーを着て、髪型も無造作な一つ結わえでなくし一人暮らしをしているアパートを出た。
腰に付けたウォレットチェーンが歩く度に揺れる。
今夜は日付が変わっても帰る予定は無かったので、貴重品は夜食を買える程度の金額が入った小銭入れだけだ。
そうしていつもより遅い時間に向かった先の不良の溜り場となっている路地で、アマネは目当ての人物を見つけてふと息を吐く。
「こんばんは」
「……テメェか」
四月も半ばを過ぎ既に黄金週間を目前に控えた頃であるというのに、ニット帽と厚手のコートに身を包んだその青年は、アマネへ声を掛けられて呆れたように振り返った。
「また来たのかよ」
「ええ。荒垣さんだって来てるじゃねぇですか」
ニット帽の男、荒垣の隣へ腰を降ろしてアマネはフードを深く被りなおす。見られて困る顔ではないが、そこら辺の不良に覚えられるのは勘弁願いたい。
路地の向こうから、反響を何度も繰り返したかのようなモノレールの走行音。それと嫌にぬるまったい海の香りが周囲の悪臭と混ざっていて、帰ったら必ず風呂へ入ろうと来る度に思う。
「今日はそうですね、学校であったことなんですけど……」
聞いてください、という前置きもなく話し始めるアマネを荒垣は止めない。
最初のうちは話し始める度に止めたり、話す理由を尋ねてきたりとしてきたが、とうとう諦めたのか最近では黙って聞いて時々相槌を返すだけになった。
「部活へ入れと言われました。どうしたもんかと思うんですが、一応陸上部に入ろうかと思ってるんです」
「陸上部」
「ええ。バイトはしてねぇし、一人暮らしだから誰かに迷惑掛けるわけでもねぇ。『前』は何の部活もやっていなかったけど、余裕が無ければ辞めればいいし」
「……中学の時か?」
「あー、そうですね」
荒垣の言葉に慌てて誤魔化しをいれて、アマネは苦笑する。その『前』というのが『今年』だなんて言っても意味が無い。
夜はどんどん過ぎていく。腕時計の秒針が一定の間隔を保って巡り続けるのを確認し、アマネは空を見上げた。路地裏の隙間から窺える空は、海に面しているとはいえ都会であるからかそうハッキリとはしていない。
「荒垣さんは、学校はいつまで休学しているつもりなんですか?」
「……テメェに休学していることを話したか?」
訝しげな視線を貰いアマネは内心やってしまった、と思ったものの、笑みを浮かべて誤魔化す。
「聞きましたよ、俺は」
「……ふん」
どうでもいいと思いなおしたのか、荒垣はそれ以上聞いてこなかった。
腰に付けたウォレットチェーンが歩く度に揺れる。
今夜は日付が変わっても帰る予定は無かったので、貴重品は夜食を買える程度の金額が入った小銭入れだけだ。
そうしていつもより遅い時間に向かった先の不良の溜り場となっている路地で、アマネは目当ての人物を見つけてふと息を吐く。
「こんばんは」
「……テメェか」
四月も半ばを過ぎ既に黄金週間を目前に控えた頃であるというのに、ニット帽と厚手のコートに身を包んだその青年は、アマネへ声を掛けられて呆れたように振り返った。
「また来たのかよ」
「ええ。荒垣さんだって来てるじゃねぇですか」
ニット帽の男、荒垣の隣へ腰を降ろしてアマネはフードを深く被りなおす。見られて困る顔ではないが、そこら辺の不良に覚えられるのは勘弁願いたい。
路地の向こうから、反響を何度も繰り返したかのようなモノレールの走行音。それと嫌にぬるまったい海の香りが周囲の悪臭と混ざっていて、帰ったら必ず風呂へ入ろうと来る度に思う。
「今日はそうですね、学校であったことなんですけど……」
聞いてください、という前置きもなく話し始めるアマネを荒垣は止めない。
最初のうちは話し始める度に止めたり、話す理由を尋ねてきたりとしてきたが、とうとう諦めたのか最近では黙って聞いて時々相槌を返すだけになった。
「部活へ入れと言われました。どうしたもんかと思うんですが、一応陸上部に入ろうかと思ってるんです」
「陸上部」
「ええ。バイトはしてねぇし、一人暮らしだから誰かに迷惑掛けるわけでもねぇ。『前』は何の部活もやっていなかったけど、余裕が無ければ辞めればいいし」
「……中学の時か?」
「あー、そうですね」
荒垣の言葉に慌てて誤魔化しをいれて、アマネは苦笑する。その『前』というのが『今年』だなんて言っても意味が無い。
夜はどんどん過ぎていく。腕時計の秒針が一定の間隔を保って巡り続けるのを確認し、アマネは空を見上げた。路地裏の隙間から窺える空は、海に面しているとはいえ都会であるからかそうハッキリとはしていない。
「荒垣さんは、学校はいつまで休学しているつもりなんですか?」
「……テメェに休学していることを話したか?」
訝しげな視線を貰いアマネは内心やってしまった、と思ったものの、笑みを浮かべて誤魔化す。
「聞きましたよ、俺は」
「……ふん」
どうでもいいと思いなおしたのか、荒垣はそれ以上聞いてこなかった。