ペルソナP3P
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新学期も始まって間もない四月九日、満月の夜。
量販店で買ったサイズの合わない濃紺色のパーカーを着て、武器の代わりの果物ナイフを持ってアマネはアパートを出る。携帯で確認した時刻はもう少しで影時間だ。
途中でコンビニへ寄って夕食を買い、アマネは巌戸台にある巌戸台分寮から少し離れた場所へあるビル脇の路地へと入り込む。そこから屋上を見上げ、もう一度時間を確認してから勢いをつけてビルの窪みへ足を掛けた。
登りきる前に誰かに目撃されないことを祈る。やっていることは都会のロッククライミングとでも言えば何となくかっこいい様な気もするが、実際はダサい行為だ。
この路地はフリーランニングで登るには物が少ないので仕方が無い。他の場所も考えたが監視カメラの配置からして一番近くで人知れず登れる場所がここだったのだ。
とはいえ、屋上に着いてから少し離れた場所からでも、屋上を飛び移ってくれば楽に移動できたなと気付いた。帰りはそうしようと思いながらコンビニの袋へ突っ込んでいた双眼鏡を取り出す。
途端、深夜の静けさが薄緑を帯びた空気へ変わる。歩いていた人が棺型のモノへと変わり、建物や地面へ滴り溢れる謎の赤い液体。
影時間になったことを認識しつつ、アマネは巌戸台分寮の屋上へと双眼鏡を向けた。
今日は、『終わりの始まり』の日。最初の満月だ。
眼下を『赤いベストを着た学生』が走っていく。この不気味で静かな空気を打ち消すように彼だけが動いているのを眺め、寮へと入っていくのを確かめた。
その背後を追う黒い影。それとアマネは初めて見る、何本もの手で構成された姿のシャドウ。
「……魔術師の巨大シャドウって、あんな形だったのかぁ」
何本もの手で壁へしがみついて寮の屋上へと登っていく。寮の屋上へは『ピンクのカーディガンを着た女子生徒』と『制服姿の女生徒』
思わず息を止めかけて、無理やり吐き出した。屋上へシャドウがたどり着き、二人へと襲い掛かる。弾き飛ばされて転がった召喚器。そしてそれを拾い上げる手。
この事について、アマネは何度も悩んだ。あのシャドウを屋上へたどり着かせずに倒してしまえばとか、そもそも先に彼女達へ忠告するとか。
けれどそれでは駄目なのだと気付いて、こうしてただ手出しをせずに見ていることを選んだ。
双眼鏡では分からない、引き金を引く指。アマネは自分のエゴで彼女を『死』へ捧げる。
召喚されたペルソナがシャドウと対峙して、ペルソナの中から現れた『もう一つのペルソナ』がシャドウを残酷なまでに返り討ちにした。棺を運ぶ姿のそれが、咆哮のように叫ぶ。
産まれたことを喜ぶ叫びなのか、悲しむ叫びなのか。アマネには到底分からなかった。
唯一つ言える事は、アマネも『何もしなかった』ことで『彼女』のように引き金を引いたのだということ。
倒れる女子生徒に双眼鏡を降ろす。
フードを引っ張って深く被り直し、アマネは分寮の方角へ背を向けた。
量販店で買ったサイズの合わない濃紺色のパーカーを着て、武器の代わりの果物ナイフを持ってアマネはアパートを出る。携帯で確認した時刻はもう少しで影時間だ。
途中でコンビニへ寄って夕食を買い、アマネは巌戸台にある巌戸台分寮から少し離れた場所へあるビル脇の路地へと入り込む。そこから屋上を見上げ、もう一度時間を確認してから勢いをつけてビルの窪みへ足を掛けた。
登りきる前に誰かに目撃されないことを祈る。やっていることは都会のロッククライミングとでも言えば何となくかっこいい様な気もするが、実際はダサい行為だ。
この路地はフリーランニングで登るには物が少ないので仕方が無い。他の場所も考えたが監視カメラの配置からして一番近くで人知れず登れる場所がここだったのだ。
とはいえ、屋上に着いてから少し離れた場所からでも、屋上を飛び移ってくれば楽に移動できたなと気付いた。帰りはそうしようと思いながらコンビニの袋へ突っ込んでいた双眼鏡を取り出す。
途端、深夜の静けさが薄緑を帯びた空気へ変わる。歩いていた人が棺型のモノへと変わり、建物や地面へ滴り溢れる謎の赤い液体。
影時間になったことを認識しつつ、アマネは巌戸台分寮の屋上へと双眼鏡を向けた。
今日は、『終わりの始まり』の日。最初の満月だ。
眼下を『赤いベストを着た学生』が走っていく。この不気味で静かな空気を打ち消すように彼だけが動いているのを眺め、寮へと入っていくのを確かめた。
その背後を追う黒い影。それとアマネは初めて見る、何本もの手で構成された姿のシャドウ。
「……魔術師の巨大シャドウって、あんな形だったのかぁ」
何本もの手で壁へしがみついて寮の屋上へと登っていく。寮の屋上へは『ピンクのカーディガンを着た女子生徒』と『制服姿の女生徒』
思わず息を止めかけて、無理やり吐き出した。屋上へシャドウがたどり着き、二人へと襲い掛かる。弾き飛ばされて転がった召喚器。そしてそれを拾い上げる手。
この事について、アマネは何度も悩んだ。あのシャドウを屋上へたどり着かせずに倒してしまえばとか、そもそも先に彼女達へ忠告するとか。
けれどそれでは駄目なのだと気付いて、こうしてただ手出しをせずに見ていることを選んだ。
双眼鏡では分からない、引き金を引く指。アマネは自分のエゴで彼女を『死』へ捧げる。
召喚されたペルソナがシャドウと対峙して、ペルソナの中から現れた『もう一つのペルソナ』がシャドウを残酷なまでに返り討ちにした。棺を運ぶ姿のそれが、咆哮のように叫ぶ。
産まれたことを喜ぶ叫びなのか、悲しむ叫びなのか。アマネには到底分からなかった。
唯一つ言える事は、アマネも『何もしなかった』ことで『彼女』のように引き金を引いたのだということ。
倒れる女子生徒に双眼鏡を降ろす。
フードを引っ張って深く被り直し、アマネは分寮の方角へ背を向けた。