ペルソナ4
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SIDE 月森
「あの、ね。菜々子、声をかけられたの。黄色いマフラーのお兄ちゃんと、青いお兄ちゃん。青いお兄ちゃんが約束のこと、忘れたの? って。菜々子、ちゃんとクマさんやお兄ちゃんとの約束、思い出したよ。そしたら、黄色いマフラーのお兄ちゃんが、こっちだよって」
走ってくる駆け音が止まって斑鳩が入り口に姿を現すのを、月森は何処か現実味のないままに振り向いて見た。菜々子が再び息をしている事も、その菜々子が口にしたことも、全部信じられないぐらいにぼんやりする。
嬉しかった。涙が出ないほどの嬉しさに、戸惑いながら菜々子の頭をそっと撫でる事しか出来ず、必死に掛ける言葉を捜す。
「……そっか。約束だもんな」
「うん」
再び目を閉じてしまう菜々子に一瞬恐怖を感じたが、安らかな呼吸に眠ってしまっただけだと分かり安心した。
医者が検査や点滴を打つからとやんわり病室を追い出される。里中達は泣いていて、完二や直斗も泣きはせずとも菜々子が息を吹き返した事を喜んでいた。
それを見てやっと、生田目をテレビの中へ突き落とさなくて良かったと思う。
最後に来た斑鳩は、閉められた病室の扉を見つめていた。その横顔が酷く安堵に包まれたもので、彼も喜んでくれていたのだと分かる。
菜々子が言っていた二人の「お兄ちゃん」については気になったけれど、菜々子が覚えていれば後で聞けばいい。
嬉しさの後には冷静を取り戻し始めた頭が、そう言えば菜々子が入院してから今まで、一度も斑鳩と会ってもいなかったし話をしていなかった事を思い出した。
あの時、斑鳩がわざと皆に憎まれたと理解している。菜々子が苦しんでいるのを代わってやる事は出来なかったし、斑鳩の言う通り、月森達にあの時出来ることはもう無かった。
けれど誰かに叱咤されなければ動けなかったのも確かで。
何も言わず踵を返して歩き出した斑鳩の腕を掴む。彼は驚いたようだったし、月森の行動に気付いた花村達が顔を上げた。
「……ありがとう、ございました」
「俺は何もしてねぇ」
「いいえ。オレたちを叱ってくれました」
斑鳩は月森を見た後、困ったように視線を逸らす。
「先輩があの時帰るように言ってくれなければ、オレは色々抱え込んだままでした」
リーダーとして、先輩として。不安や後悔を皆の前では隠していなければいけなくて、察してくれた花村と二人きりになって初めて、それを少しでも吐き出すことが出来た。
何か言いたそうな顔をした斑鳩は、花村や久慈川を見て深く息を吐き出す。
「……俺も、同じ様なことがあったんだぁ」
「あの、ね。菜々子、声をかけられたの。黄色いマフラーのお兄ちゃんと、青いお兄ちゃん。青いお兄ちゃんが約束のこと、忘れたの? って。菜々子、ちゃんとクマさんやお兄ちゃんとの約束、思い出したよ。そしたら、黄色いマフラーのお兄ちゃんが、こっちだよって」
走ってくる駆け音が止まって斑鳩が入り口に姿を現すのを、月森は何処か現実味のないままに振り向いて見た。菜々子が再び息をしている事も、その菜々子が口にしたことも、全部信じられないぐらいにぼんやりする。
嬉しかった。涙が出ないほどの嬉しさに、戸惑いながら菜々子の頭をそっと撫でる事しか出来ず、必死に掛ける言葉を捜す。
「……そっか。約束だもんな」
「うん」
再び目を閉じてしまう菜々子に一瞬恐怖を感じたが、安らかな呼吸に眠ってしまっただけだと分かり安心した。
医者が検査や点滴を打つからとやんわり病室を追い出される。里中達は泣いていて、完二や直斗も泣きはせずとも菜々子が息を吹き返した事を喜んでいた。
それを見てやっと、生田目をテレビの中へ突き落とさなくて良かったと思う。
最後に来た斑鳩は、閉められた病室の扉を見つめていた。その横顔が酷く安堵に包まれたもので、彼も喜んでくれていたのだと分かる。
菜々子が言っていた二人の「お兄ちゃん」については気になったけれど、菜々子が覚えていれば後で聞けばいい。
嬉しさの後には冷静を取り戻し始めた頭が、そう言えば菜々子が入院してから今まで、一度も斑鳩と会ってもいなかったし話をしていなかった事を思い出した。
あの時、斑鳩がわざと皆に憎まれたと理解している。菜々子が苦しんでいるのを代わってやる事は出来なかったし、斑鳩の言う通り、月森達にあの時出来ることはもう無かった。
けれど誰かに叱咤されなければ動けなかったのも確かで。
何も言わず踵を返して歩き出した斑鳩の腕を掴む。彼は驚いたようだったし、月森の行動に気付いた花村達が顔を上げた。
「……ありがとう、ございました」
「俺は何もしてねぇ」
「いいえ。オレたちを叱ってくれました」
斑鳩は月森を見た後、困ったように視線を逸らす。
「先輩があの時帰るように言ってくれなければ、オレは色々抱え込んだままでした」
リーダーとして、先輩として。不安や後悔を皆の前では隠していなければいけなくて、察してくれた花村と二人きりになって初めて、それを少しでも吐き出すことが出来た。
何か言いたそうな顔をした斑鳩は、花村や久慈川を見て深く息を吐き出す。
「……俺も、同じ様なことがあったんだぁ」