ペルソナ4
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稲羽市は昨日に引き続き雨だった。俺が出た時は止んでいて曇り空だったが、そのせいで失敗した事に気付いてしまう。
傘が無い。
駅から俺が住んでいるアパートは少し遠く、走っていくのは少し遠慮したかった。
しかたなく傘を買えるところまで走るか、電話してタクシーを呼ぶかを考えていると、ポケットの中の携帯が鳴り出す。
「もしもし」
『先輩! 孝介のとこに新しい脅迫状が来て、それがアイツの叔父さんにバレて警察署に連れて行かれたって……!』
「はぁ!?」
変な方向に進展したらしい状況に、急いで電話を切ってタクシーを呼び、警察署へ向かってもらう。行き先が警察署という事で運転手は興味津々な様子だったが、一睨みで黙らせた。
警察署に辿り着いても当然建物の何処に月森が居るかは分からない。どうするか一瞬迷ってから、同じアパートの住人を思い出した。
「スイマセン、足立透刑事の知り合いなんですけど、通っても大丈夫ですか?」
「足立……ああ、足立さんね。彼なら今、取調室だと思いますけど、呼び出しましょうか?」
「いえ、頼まれた荷物を置いたら帰りますから大丈夫です」
受付に嘘の挨拶をして、奥へと向かう。持っていたアタッシュケースを良い感じに荷物と勘違いしてくれたようだし、丁寧にも足立のいる場所を口にしてくれた。
廊下を歩く人の気配に気を付け出来るだけ署員と遭遇しないように取調室のある一角を目指す。こんな時間に取り調べもやらないのか、はたまた堂島氏が職権乱用しているのか、人の気配がしたのは一つだけだった。
そのドアの前に、足立がいる。
「足立さん」
「あれ、斑鳩くん」
「月森はこの中ですか?」
「そうだけど、駄目だよ。堂島さんが閉じ込めておけって」
「職権乱用と監禁と、警察の名誉を重んじるならすぐに出したほうがいいでしょう。ああそれと、俺がここに来る為に貴方の名前を出しました。事後報告ですご了承ください。月森ぃ!」
「え、ちょっとぉ」
鍵の掛けられているドアへ向かって月森を呼ぶ。中からの返事は無かったが別に暴行を受けたとかそういう事はないと思いたい。
「さっきまで堂島さんと話してたから、少し疲れてるんじゃないかな?」
「疲れさせるような話し方をしたんですか」
「だから、僕に言われても困るよ」
「堂島さんは何処へ行きましたか?」
「多分、喫煙室じゃないかな?」
喫煙室の場所を尋ねると足立はすぐに教えてくれた。月森のことは心配だが今は堂島氏に業腹で仕方が無い。
「堂島さん、歯ぁ食いしばれぇ!」
「……ぁ? っ!?」
喫煙室ではなく廊下で見つけた堂島氏に声を掛けて、振り返ると同時に頬を引っ叩いた。
流石に手加減はしている。
「っ、斑鳩くん!?」
「俺は怒ってます多分貴方より怒っています。どうして貴方は甥を疑うんですかどうして首を突っ込むなと頭ごなしに叱り付けてちゃんと話を聞いてやろうとはしねぇんだよぉ! アンタは月森の家族としてまず怒鳴りつけずに話を聞いてやったかぁ? 最初から疑ってます怒ってますって雰囲気垂れ流しにしてりゃ子供は分かるモンなんだよぉ! 菜々子ちゃんがいっつも喧嘩してんのかって不安がってたじゃねぇかぁ。アンタ気付いてたかぁ!?」
一息で怒鳴りつけて、とりあえず呼吸を整える。途中から敬語が外れてしまったがどうでもいい。
「月森の話をちゃんと聞いてやりましたか?」
「部外者は」
「部外者ではありませんので口出しします。脅迫状が来たそうですね。出したのは連続誘拐事件の犯人だと俺達は考えています。ですが考えていただければ分かりますが、脅迫状を犯人が送ってくるほど月森達は真相に近い場所にいます」
考えて居なかったのか、堂島の顔が険しくなる。俺が叩いた頬が赤くなり始めていた。
「でも堂島さんという信頼している相手に今まで言えなかった。月森が黙っていたと知って堂島さんはどう考えましたか?」
「まだ首を突っ込んでいたのかと」
「でしょうね。普通はそう考えます。でももしくは今まで言えない理由があったんじゃないかとは考えなかったんですか? 無論月森が犯人だとかそんな馬鹿げた考えは論外で。彼には警察や大人に分かってもらえない理由があって、黙っていざるを得なかったとか」
ここで堂島氏がそうなのか、とか言ったらもう一度殴るつもりだった。
脅迫状と今まで月森達が事件について調べていた、という二点だけでも色々な想像は出来る。最初から事件に関わる何かを目撃していて、それを知った犯人にずっと脅迫状を送られてきていて警察にはいえなかったとか。
荒唐無稽でもありえるそれらしい理由はいくつでも浮かぶのだ。
月森が、俺が来る前にどこまで堂島氏に話したのか分からない為、俺から下手に嘘をついても矛盾を生じさせ余計疑いを生む。
だからこの会話でも妙な事は言えないが、堂島氏は少しでも考えを改める気になったらしい。彼の事件へ対する真摯な姿勢は尊敬すべきだが、その分視野が狭くなったり心が狭くなっている。
「俺でよければもう少し話が出来ると思いますが、どうしますか?」
「……孝介の元に戻る」
傘が無い。
駅から俺が住んでいるアパートは少し遠く、走っていくのは少し遠慮したかった。
しかたなく傘を買えるところまで走るか、電話してタクシーを呼ぶかを考えていると、ポケットの中の携帯が鳴り出す。
「もしもし」
『先輩! 孝介のとこに新しい脅迫状が来て、それがアイツの叔父さんにバレて警察署に連れて行かれたって……!』
「はぁ!?」
変な方向に進展したらしい状況に、急いで電話を切ってタクシーを呼び、警察署へ向かってもらう。行き先が警察署という事で運転手は興味津々な様子だったが、一睨みで黙らせた。
警察署に辿り着いても当然建物の何処に月森が居るかは分からない。どうするか一瞬迷ってから、同じアパートの住人を思い出した。
「スイマセン、足立透刑事の知り合いなんですけど、通っても大丈夫ですか?」
「足立……ああ、足立さんね。彼なら今、取調室だと思いますけど、呼び出しましょうか?」
「いえ、頼まれた荷物を置いたら帰りますから大丈夫です」
受付に嘘の挨拶をして、奥へと向かう。持っていたアタッシュケースを良い感じに荷物と勘違いしてくれたようだし、丁寧にも足立のいる場所を口にしてくれた。
廊下を歩く人の気配に気を付け出来るだけ署員と遭遇しないように取調室のある一角を目指す。こんな時間に取り調べもやらないのか、はたまた堂島氏が職権乱用しているのか、人の気配がしたのは一つだけだった。
そのドアの前に、足立がいる。
「足立さん」
「あれ、斑鳩くん」
「月森はこの中ですか?」
「そうだけど、駄目だよ。堂島さんが閉じ込めておけって」
「職権乱用と監禁と、警察の名誉を重んじるならすぐに出したほうがいいでしょう。ああそれと、俺がここに来る為に貴方の名前を出しました。事後報告ですご了承ください。月森ぃ!」
「え、ちょっとぉ」
鍵の掛けられているドアへ向かって月森を呼ぶ。中からの返事は無かったが別に暴行を受けたとかそういう事はないと思いたい。
「さっきまで堂島さんと話してたから、少し疲れてるんじゃないかな?」
「疲れさせるような話し方をしたんですか」
「だから、僕に言われても困るよ」
「堂島さんは何処へ行きましたか?」
「多分、喫煙室じゃないかな?」
喫煙室の場所を尋ねると足立はすぐに教えてくれた。月森のことは心配だが今は堂島氏に業腹で仕方が無い。
「堂島さん、歯ぁ食いしばれぇ!」
「……ぁ? っ!?」
喫煙室ではなく廊下で見つけた堂島氏に声を掛けて、振り返ると同時に頬を引っ叩いた。
流石に手加減はしている。
「っ、斑鳩くん!?」
「俺は怒ってます多分貴方より怒っています。どうして貴方は甥を疑うんですかどうして首を突っ込むなと頭ごなしに叱り付けてちゃんと話を聞いてやろうとはしねぇんだよぉ! アンタは月森の家族としてまず怒鳴りつけずに話を聞いてやったかぁ? 最初から疑ってます怒ってますって雰囲気垂れ流しにしてりゃ子供は分かるモンなんだよぉ! 菜々子ちゃんがいっつも喧嘩してんのかって不安がってたじゃねぇかぁ。アンタ気付いてたかぁ!?」
一息で怒鳴りつけて、とりあえず呼吸を整える。途中から敬語が外れてしまったがどうでもいい。
「月森の話をちゃんと聞いてやりましたか?」
「部外者は」
「部外者ではありませんので口出しします。脅迫状が来たそうですね。出したのは連続誘拐事件の犯人だと俺達は考えています。ですが考えていただければ分かりますが、脅迫状を犯人が送ってくるほど月森達は真相に近い場所にいます」
考えて居なかったのか、堂島の顔が険しくなる。俺が叩いた頬が赤くなり始めていた。
「でも堂島さんという信頼している相手に今まで言えなかった。月森が黙っていたと知って堂島さんはどう考えましたか?」
「まだ首を突っ込んでいたのかと」
「でしょうね。普通はそう考えます。でももしくは今まで言えない理由があったんじゃないかとは考えなかったんですか? 無論月森が犯人だとかそんな馬鹿げた考えは論外で。彼には警察や大人に分かってもらえない理由があって、黙っていざるを得なかったとか」
ここで堂島氏がそうなのか、とか言ったらもう一度殴るつもりだった。
脅迫状と今まで月森達が事件について調べていた、という二点だけでも色々な想像は出来る。最初から事件に関わる何かを目撃していて、それを知った犯人にずっと脅迫状を送られてきていて警察にはいえなかったとか。
荒唐無稽でもありえるそれらしい理由はいくつでも浮かぶのだ。
月森が、俺が来る前にどこまで堂島氏に話したのか分からない為、俺から下手に嘘をついても矛盾を生じさせ余計疑いを生む。
だからこの会話でも妙な事は言えないが、堂島氏は少しでも考えを改める気になったらしい。彼の事件へ対する真摯な姿勢は尊敬すべきだが、その分視野が狭くなったり心が狭くなっている。
「俺でよければもう少し話が出来ると思いますが、どうしますか?」
「……孝介の元に戻る」