はっきりと映っていたマヨナカテレビが消える。ああやっぱり、なんて思いながらも何か飲もうとしていたら家の電話が鳴った。完二からである。

『先輩っ！ 今の見たッスか！？』
「久慈川りせ、だろうなぁ。ところで最近のアイドルってハイレグって着るもんなのかぁ？」
『え！？ いや、知らないッスよそんなん！』
「知ってるかぁ、アレって制服よりも防御性が高かったりするんだぜぇ。何故か」
『……先輩、眠いんスか？』
「自分がああいうアイドルに一切ときめかなかった事に少し凹んだ」

とりあえず久慈川りせがテレビの中へ突き落とされたことは、あの番組で確定で良いだろう。となると当然あの時捕まえた男はただのアイドル追っ掛けで、誤認逮捕になるのだろうかこの場合。
まぁ、それは高校生の勢いに釣られて逮捕してしまった足立刑事が悪いということにする。
問題は久慈川りせがテレビの中へ突き落とされたという事実だ。
彼女はアイドルだった。色んな番組が彼女の休業宣言を取り上げ、彼女にプライバシーは無いとばかりに彼女の祖母の家である豆腐店もバレている。故に店の前には多くの人が彼女の姿を見ようと訪れていた。
現に花村達が捕まえた男だってその部類だ。
もしそれに紛れて犯人が彼女の事を見ていたのだとしたら。
犯人が人間だとすれば、確実に俺達は犯人の姿を見ている筈である。
今までの共通点で現実的なのは稲羽市に居たということ。そしてテレビの中へ入れられるのだからある程度大きなテレビがある場所を知っていて、そこまで誰にも見られずに人を運べる人間となる。となれば地元民だろう。それはいい。
では俺達が出入りに使っているジュネスの家電売り場にあるテレビのような、人を突き落とせるある程度大きいテレビは、他にあるだろうか。
個人で持っていれば解決する答えだ。だが買うに当たって細かい問題は出てくる。ここは田舎で、近所の目はなかなか侮れない。大きいテレビを買って家に入れたことがあると、何故か違う地区の老婆が知っていることもある。
それを差し引いても、被害者を運ぶ移動手段として車が必需だ。

「車……ワゴン？」

久慈川りせを尾行しながら警護をしていたとき、そんなものは無かった。あったのはもっと小さい軽自動車とかトラックだ。
何か引っ掛かる物を感じたのだが、それが何かまでは分からない。
今分かるのはジュネス以外に人が入れるようなテレビを持っている、もしくはある場所を知っている車の運転の出来る大人。地元民。
ジュネスの販売目録的なものを花村に頼んで見せてもらおうかと思いながら、今日は寝ることにした。