がんもの料理を教えて欲しいとメールが月森から来ていたので、放課後の受験対策の講習が終わった後堂島家へ行けば、思ったより多いがんもを目の当たりにした。

「どうしたんだぁ、これ」
「話の流れで」

聞けば久慈川りせが気になって彼女の祖母の家である豆腐店へ行った時、話をする為に買ったのだという。別にいいが数を考えて買って欲しい。
気になったというのも当然アイドルとしてではなく、次の被害者になるかもしれないからだ。話を聞く限り花村は半分ほど大義名分になってしまっている気がするが、年頃の高校生とはそういうものなのだろう。
がんもの煮付けと、ついでに他のおかずを月森に教えながら作っていれば、家長である堂島氏が帰ってきた。俺がいることに驚いた様だったが、気にしたら負けだ。文句なら食事情を改善したらにして欲しい。
せっかくだからと夕食をご馳走になることになった。といっても俺が作ったものなのだが。
菜々子ちゃんにも手伝ってもらって夕食を並べる。多すぎるがんもは分けておいて、後で暖めて食べられるようにしておいた。電子レンジなら菜々子ちゃんも使えるだろう。
さすがに多すぎたのでおすそ分けとして少し持ち帰ることにしたが。
夕食の席についた堂島氏が、月森へ事件に首を突っ込むなと忠告するのを今日のメインであるがんもを運びながら聞いた。神妙な様子の月森と堂島氏の間に少し不穏な空気が流れる。

「堂島さん。出過ぎたことを言いますが、そういう時は正直に心配だからって言わないと駄目ですよ」
「心配って……だがな斑鳩君」
「親代わりとして保護者として心配だってのは分かります。ですが首を突っ込むな、では子供は反発しようとするものなんですから、いくら月森が聞き分けのいい奴でも言い方が悪いですよ」
「う、む」
「それに色々推理して犯人を捕まえようとしたって、月森は高校生です。危険なことをしようとはするかも知れませんが、警察ほどの情報が無い状態で真実にまでは行き着けないでしょう。良くて今までの事件から法則に気付くくらいです。子供のやることと放置せずに一声かけて下さるのは月森にとっても大切なことですけどね」

その子供であることに変わりない俺が何を言ってるのか、と少しおかしくなったが、堂島氏は俺がそこまで言うとは思っていなかったらしい。
菜々子ちゃんが喧嘩しているのかと不安がるのを堂島氏が否定して、夕食を食べ始める。小さい声で堂島氏が月森に「無茶なことはするな」と言ったのが聞こえた。