テレビでアイドルが休業だのなんだのと報道している。実のところアイドルに全然といって良いほど興味が無い自分からすれば、そんなことより事件報道などを優先してほしい。
他の番組がバラエティしかないので、そのうち違うニュースをするだろうことに賭けて点けたままにしていたテレビから、気になる話が流れる。
休業するアイドルの祖母の家だかが、この稲羽市らしい。
だから地方のローカル版でも、このアイドルの話をしているのかと納得してテレビを消した。
次の日、学校へ向かうと話題はどれも休業して戻ってくるというアイドルで、普段なら俺に話しかけようともしない同級生まで興奮して俺に話しかけてくる。

「だからさ、その久慈川りせの家。あの商店街にある久慈川豆腐店らしいんだよ！ これはもう運命だね！ オレと出会う運命なのさ！」
「煩せぇ」
「斑鳩、お前こそ興奮しないのかよ！？ あのりせちーだぜ？」
「興味無ぇ。っていうかお前今日英語当たるだろぉ。手伝わねぇぞぉ」

泣きながら机へ戻る同級生に手を振りはしても応援はしなかった。
昼休み、屋上で合流した月森達もどうやらその久慈川りせというアイドルが気になるらしい。一番騒がしいのは花村だ。

「聞いてくださいよ先輩ぃ。月森の奴りせちー知らないって言うんすよ！」
「悪ぃ。俺も興味無ぇ」
「あんた等何なんだよ！」

花村が憤りを感じる意味が分からない。

「俺はアイドルに夢中になったほうがいいのかぁ？」
「え？ いえ、そんなことは……」
「ほら天城さんもこう言ってるぜぇ」
「男と女じゃ意見が違うんすよ！」

畜生この美形コンビめ、なんて呟く花村に首を傾げながら遅れてきた完二と合流する。といっても昼食を食べながら少し話をするだけだが。

「こんなタイミングでりせちーも稲羽市に戻ってくるなんてね」
「殺人事件とか誘拐事件とかが多発してるッスもんねぇ」
「思ったんすけど、マヨナカテレビに映った人物が狙われてるんじゃないすかね」
「ああ？」

聞き返せば花村が考えた仮説について説明しだす。
亡くなった最初の犠牲者である女性アナウンサーは、仕事柄常にテレビへ映っていた。その次の犠牲者である小西という女生徒もそのアナウンサーの第一発見者としてインタビューを受けていたらしい。天城もそのアナウンサーが泊まった旅館の関係者として、俺も生放送のインタビューを受け、完二もテレビに映ったそうだ。
俺は完二がテレビに映っているところは見ていないが、天城が映っているのは確かに見ている。そしてその後マヨナカテレビへ映ったことも。
すると五人の共通点はテレビに映ったこと、マヨナカテレビへ映ったこと。
そしてここ、稲羽市に居たということだ。