ペルソナ4
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「おいてくなイブリス。もういいよ。お前だけでもおいていかないでくれぇ。俺はもう失いたくない」
ゆっくりと長椅子から立ち上がった俺を、手を振り上げていたイブリスが振り返った。
「わがままを言っていいなら、やっぱり俺はこれだけだぁ。おいてかないでくれぇ」
長年、何度も言われていたのに気付けなかった言いたい一言を、やっと口にする。
死んだ母親を見て、おいていかれたと思った。
だから弟や親友や、誰にももうこれ以上おいていかれたくなかった。だから歪んだ。失わないよう、自分が先に失われてしまえばいいと。
それは成功してしまったから俺はそれでいいのだと思っていた。でも本当は間違っていたから結局失ってしまったのだ。
「湊さんのことは諦め切れねぇけど、俺は一人になりたくねぇ。だからイブリス、お願いだから俺をおいてかないでくれぇ」
「……寂しがりやだって、皆が言ってたんだ」
元の、俺の姿へ戻ったイブリスが呆れたように言う。
「でもお前気付かないから皆心配してた。誰もお前のことおいていったりなんかしてない。おいてかれたと思い込んでただけだよ」
「その証拠で生まれたお前だからそう言えんだろぉ」
「でもオレを生んだのはお前だから、オレは元々お前の中にあったものだから」
イブリスが微笑んだ。
「『オレ達』はお前をおいていったりはしないよ」
イブリスの身体が燃え上がり炎の中へ消える。炎が消えた場所には青いタロットカードが宙に浮いたまま回転を繰り返していた。
手を伸ばして触れた途端、カードは手の中へ吸い込まれるように消える。
残されたのは俺と、さっきまでイブリスと戦い続けていたせいでボロボロの後輩達だ。
俺自身は戦う事もなくイブリスを取り戻してしまったし、殆ど俺とイブリスの会話だけだったから月森達はずっと蚊帳の外だった。
助けに来てくれたのだろうに申し訳ないと思うものの、二年前に使っていた召喚器が無いのでイブリスを召喚出来るのか分からない。月森達は召喚器が無くとも召喚出来ているから俺も多分出来るのだろうが、不確定なままで試すのは止めておく。
「……先輩」
「俺を助けに来てくれたんだろぉ。ありがとう」
そう言えばクマが勢い良く駆け寄って飛び付いてきた。遅れて月森や花村達も近付いてくる。
「ちょっ、苦し」
「心配したクマよ! シルビが大丈夫だって言ってたからクマはセンセイたちを待ってたクマけど、クマは心配したクマ!」
ぎゅうぎゅうと腹部をきつく締め上げてくるクマの頭を撫でてやって、出てきた名前に首を傾げた。
「アイツ、シルビって言ってたのかぁ?」
「そうですよ。便宜上、シルビって呼べって」
「……そっかぁ」
花村の言葉にイブリスが本当に俺のペルソナであるという認識が強くなる。なんとなく暖かい胸元を押さえるように、左手を握り締めた。
ゆっくりと長椅子から立ち上がった俺を、手を振り上げていたイブリスが振り返った。
「わがままを言っていいなら、やっぱり俺はこれだけだぁ。おいてかないでくれぇ」
長年、何度も言われていたのに気付けなかった言いたい一言を、やっと口にする。
死んだ母親を見て、おいていかれたと思った。
だから弟や親友や、誰にももうこれ以上おいていかれたくなかった。だから歪んだ。失わないよう、自分が先に失われてしまえばいいと。
それは成功してしまったから俺はそれでいいのだと思っていた。でも本当は間違っていたから結局失ってしまったのだ。
「湊さんのことは諦め切れねぇけど、俺は一人になりたくねぇ。だからイブリス、お願いだから俺をおいてかないでくれぇ」
「……寂しがりやだって、皆が言ってたんだ」
元の、俺の姿へ戻ったイブリスが呆れたように言う。
「でもお前気付かないから皆心配してた。誰もお前のことおいていったりなんかしてない。おいてかれたと思い込んでただけだよ」
「その証拠で生まれたお前だからそう言えんだろぉ」
「でもオレを生んだのはお前だから、オレは元々お前の中にあったものだから」
イブリスが微笑んだ。
「『オレ達』はお前をおいていったりはしないよ」
イブリスの身体が燃え上がり炎の中へ消える。炎が消えた場所には青いタロットカードが宙に浮いたまま回転を繰り返していた。
手を伸ばして触れた途端、カードは手の中へ吸い込まれるように消える。
残されたのは俺と、さっきまでイブリスと戦い続けていたせいでボロボロの後輩達だ。
俺自身は戦う事もなくイブリスを取り戻してしまったし、殆ど俺とイブリスの会話だけだったから月森達はずっと蚊帳の外だった。
助けに来てくれたのだろうに申し訳ないと思うものの、二年前に使っていた召喚器が無いのでイブリスを召喚出来るのか分からない。月森達は召喚器が無くとも召喚出来ているから俺も多分出来るのだろうが、不確定なままで試すのは止めておく。
「……先輩」
「俺を助けに来てくれたんだろぉ。ありがとう」
そう言えばクマが勢い良く駆け寄って飛び付いてきた。遅れて月森や花村達も近付いてくる。
「ちょっ、苦し」
「心配したクマよ! シルビが大丈夫だって言ってたからクマはセンセイたちを待ってたクマけど、クマは心配したクマ!」
ぎゅうぎゅうと腹部をきつく締め上げてくるクマの頭を撫でてやって、出てきた名前に首を傾げた。
「アイツ、シルビって言ってたのかぁ?」
「そうですよ。便宜上、シルビって呼べって」
「……そっかぁ」
花村の言葉にイブリスが本当に俺のペルソナであるという認識が強くなる。なんとなく暖かい胸元を押さえるように、左手を握り締めた。