ペルソナ4
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乱暴に起こされて目を覚ますと、俺を睨むように見下ろしていた人物に驚いた。一年前の三月三十一日に見た、自分の姿をしたペルソナがそこにいたからだ。
「……イブリス?」
思わずペルソナだったときの名前を呼ぶと、彼は長椅子に足を掛けて引き起こす。床に残された俺を見つめる目はまだ怒っているようで、今にも舌打ちしそうだ。
毎日鏡で見る自分の顔だから分かるが、あれは説教をしようと考えている顔である。
「まぁ座れぇ」
諭すのではなく命令されて、大人しく立ち上がって長椅子へ腰を降ろした。彼の後ろには月森達が居て、唖然と俺と彼の様子を見ている。
目の前に立った彼が腕を組んで溜息を吐く。
「……で、この一年で何か分かったのかぁ?」
分からなかったので黙っていた。
「じゃあお前、何しようとしてたんだぁ?」
「……『愚者』を探して、湊さんを助けようって」
「馬鹿」
頭を叩かれる。
「オレさぁ、前にお前に『初心に戻れ』的なことを言った気がすんだよ。でもよ、先輩を救えなかったって落ち込む前に戻れって誰が言ったんだぁ? むしろもっと戻れよ」
「もっと?」
思わず聞き返したが、頭は叩かれない。
「そう。この場所何処だか分かんだろぉ? お前が一番、まともだった頃の象徴だよ。ここで親友や弟達と笑っていた頃のお前は、自分を万能だと思っていなかったし歪みにも軌道修正が入れられてた。まぁ、ここは見た目だけなんだけどなぁ」
部屋を見回すと、覚えのある部屋だと気付いた。
屋敷の中庭に面した部屋。ここで眠っていれば、誰かが必ず起こしに来てくれて。ここで眠っていれば、中庭に居た皆の声が聞こえていた。
俺がまだ『シルビ』として最初の生を過ごし、次の生で始めて『斑鳩 周』になっても受け入れられた場所。
あの頃は、一人じゃなかった。
「お前のそれは思い上がった勘違いによる失敗からの逃避だぁ。頭では理解していても、完全には納得出来ていなかったんだよ。だから未だに落ち込んでる」
「落ち込んでる落ち込んでるって……」
「実際そうだろうが。……なぁ、なんでお前落ち込んでんの?」
「それは……湊さんを救えなかったから」
「なんでお前救おうとしたの?」
「湊さんが犠牲になる必要は無ぇと思ったから」
「犠牲って何だよ」
「世界の異物。いらないもの」
「先輩は要らなかった?」
「そんな訳……」
「そもそも世界って何? 誰にとっての世界? いらないものを排除する秩序があるとしても、それを決めんのは誰だよ。お前が今まで助けなかった奴等は全部犠牲か? 違うだろ」
彼の目が光る。
「お前は、犠牲って言葉で失うのが怖いんだろ」
「……イブリス?」
思わずペルソナだったときの名前を呼ぶと、彼は長椅子に足を掛けて引き起こす。床に残された俺を見つめる目はまだ怒っているようで、今にも舌打ちしそうだ。
毎日鏡で見る自分の顔だから分かるが、あれは説教をしようと考えている顔である。
「まぁ座れぇ」
諭すのではなく命令されて、大人しく立ち上がって長椅子へ腰を降ろした。彼の後ろには月森達が居て、唖然と俺と彼の様子を見ている。
目の前に立った彼が腕を組んで溜息を吐く。
「……で、この一年で何か分かったのかぁ?」
分からなかったので黙っていた。
「じゃあお前、何しようとしてたんだぁ?」
「……『愚者』を探して、湊さんを助けようって」
「馬鹿」
頭を叩かれる。
「オレさぁ、前にお前に『初心に戻れ』的なことを言った気がすんだよ。でもよ、先輩を救えなかったって落ち込む前に戻れって誰が言ったんだぁ? むしろもっと戻れよ」
「もっと?」
思わず聞き返したが、頭は叩かれない。
「そう。この場所何処だか分かんだろぉ? お前が一番、まともだった頃の象徴だよ。ここで親友や弟達と笑っていた頃のお前は、自分を万能だと思っていなかったし歪みにも軌道修正が入れられてた。まぁ、ここは見た目だけなんだけどなぁ」
部屋を見回すと、覚えのある部屋だと気付いた。
屋敷の中庭に面した部屋。ここで眠っていれば、誰かが必ず起こしに来てくれて。ここで眠っていれば、中庭に居た皆の声が聞こえていた。
俺がまだ『シルビ』として最初の生を過ごし、次の生で始めて『斑鳩 周』になっても受け入れられた場所。
あの頃は、一人じゃなかった。
「お前のそれは思い上がった勘違いによる失敗からの逃避だぁ。頭では理解していても、完全には納得出来ていなかったんだよ。だから未だに落ち込んでる」
「落ち込んでる落ち込んでるって……」
「実際そうだろうが。……なぁ、なんでお前落ち込んでんの?」
「それは……湊さんを救えなかったから」
「なんでお前救おうとしたの?」
「湊さんが犠牲になる必要は無ぇと思ったから」
「犠牲って何だよ」
「世界の異物。いらないもの」
「先輩は要らなかった?」
「そんな訳……」
「そもそも世界って何? 誰にとっての世界? いらないものを排除する秩序があるとしても、それを決めんのは誰だよ。お前が今まで助けなかった奴等は全部犠牲か? 違うだろ」
彼の目が光る。
「お前は、犠牲って言葉で失うのが怖いんだろ」