ペルソナ4
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
SIDE 月森
斑鳩が居たのは屋敷の一階の突き当たり、中庭に面したテラスのある一室だった。屋敷の雰囲気に良く合う、ジュネスでは絶対取り扱う事の無さそうな長椅子へ、身体を預けて眠っている。
霧で視界の霞むテレビの中だったはずなのに、窓から吹き込む風は温かく柔らかい。斑鳩の心が生み出した場所は、今まで見た天城や完二の空間よりもずっと綺麗な場所だった。
なのに。
「……なんかさ、ここ、寂しくない?」
里中の呟きに月森も頷いた。
人の気配が無いせいか、広すぎる空間のせいかは分からない。ただ漠然と、ここはなんて寂しい場所なんだろうと思った。
「ここが、先輩の内面なのかよ……?」
「シャドウもいないし」
眠っている斑鳩以外に人の姿もシャドウの姿もない。斑鳩のシャドウだけではなく、通常の徘徊しているシャドウの姿も一匹も見当たらなかった。だから尚更、ここは静かなのだろう。
月森達は、斑鳩のことを良く知らない。
例えば月森達とはまた別に、テレビの中へ出入りをしていたとか、髪を伸ばしているとか、目の色が珍しい紫色をしているとか。彼と出会ったきっかけの事実と外見の情報しか、斑鳩を判断するものが無かった。
月森だけに関して言うなら、それに加えて半年程前に転校してきたとか、寮生活をしていたとか、その寮生活に何か思うことがあるとは知っているが、それだけだ。
「でも、それじゃ先輩の抑圧されたものって……あ、シルビさん」
入り口で部屋の様子を観察していた月森達の後ろから、シルビがゆっくりと部屋へ足を踏み入れる。その後を付いて行こうとしたクマを月森は制して、シルビの動向を窺った。
もしシルビの正体が月森の気付いたものであるなら、この状況をどんな意味でも変えられるのは彼しかいない。
それに彼は言ったのだ。自分に斑鳩は殺せないと。斑鳩に死んでほしくないとも。
信じていいと思った。
長椅子へ近付いてシルビが腰を曲げて斑鳩の顔を覗き込む。斑鳩は月森の見ている場所からでも分かるほど安らかに眠っていた。幸せな昼寝。そんな言葉が浮かんで消える。
覗き込むのを止めたシルビが一度大袈裟に溜息を吐いた。
「うぉおおおい! いい加減起きろぉおおお!」
大声で怒鳴りながら斑鳩の眠っていた長椅子を蹴り飛ばす。シャドウも一蹴りで消滅させていたシルビの蹴りに、長椅子は吹き飛んだという表現がピッタリな勢いで寝ていた斑鳩ごとひっくり返った。
驚いて声の出ない月森達の視線の先で、ひっくり返った長椅子の向こうから手が出てくる。
長椅子を支えに起き上がったらしい斑鳩が、信じられないようにシルビを見上げた。
「……イブリス?」
斑鳩が居たのは屋敷の一階の突き当たり、中庭に面したテラスのある一室だった。屋敷の雰囲気に良く合う、ジュネスでは絶対取り扱う事の無さそうな長椅子へ、身体を預けて眠っている。
霧で視界の霞むテレビの中だったはずなのに、窓から吹き込む風は温かく柔らかい。斑鳩の心が生み出した場所は、今まで見た天城や完二の空間よりもずっと綺麗な場所だった。
なのに。
「……なんかさ、ここ、寂しくない?」
里中の呟きに月森も頷いた。
人の気配が無いせいか、広すぎる空間のせいかは分からない。ただ漠然と、ここはなんて寂しい場所なんだろうと思った。
「ここが、先輩の内面なのかよ……?」
「シャドウもいないし」
眠っている斑鳩以外に人の姿もシャドウの姿もない。斑鳩のシャドウだけではなく、通常の徘徊しているシャドウの姿も一匹も見当たらなかった。だから尚更、ここは静かなのだろう。
月森達は、斑鳩のことを良く知らない。
例えば月森達とはまた別に、テレビの中へ出入りをしていたとか、髪を伸ばしているとか、目の色が珍しい紫色をしているとか。彼と出会ったきっかけの事実と外見の情報しか、斑鳩を判断するものが無かった。
月森だけに関して言うなら、それに加えて半年程前に転校してきたとか、寮生活をしていたとか、その寮生活に何か思うことがあるとは知っているが、それだけだ。
「でも、それじゃ先輩の抑圧されたものって……あ、シルビさん」
入り口で部屋の様子を観察していた月森達の後ろから、シルビがゆっくりと部屋へ足を踏み入れる。その後を付いて行こうとしたクマを月森は制して、シルビの動向を窺った。
もしシルビの正体が月森の気付いたものであるなら、この状況をどんな意味でも変えられるのは彼しかいない。
それに彼は言ったのだ。自分に斑鳩は殺せないと。斑鳩に死んでほしくないとも。
信じていいと思った。
長椅子へ近付いてシルビが腰を曲げて斑鳩の顔を覗き込む。斑鳩は月森の見ている場所からでも分かるほど安らかに眠っていた。幸せな昼寝。そんな言葉が浮かんで消える。
覗き込むのを止めたシルビが一度大袈裟に溜息を吐いた。
「うぉおおおい! いい加減起きろぉおおお!」
大声で怒鳴りながら斑鳩の眠っていた長椅子を蹴り飛ばす。シャドウも一蹴りで消滅させていたシルビの蹴りに、長椅子は吹き飛んだという表現がピッタリな勢いで寝ていた斑鳩ごとひっくり返った。
驚いて声の出ない月森達の視線の先で、ひっくり返った長椅子の向こうから手が出てくる。
長椅子を支えに起き上がったらしい斑鳩が、信じられないようにシルビを見上げた。
「……イブリス?」