ペルソナ4
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三人は顔を見合わせ、それから月森が代表して口を開く。
「まず、オレ達はヒーローごっこでテレビの中へ入っている訳じゃありません」
ゆっくりと頭の中で整理しながら順を追って話される理由というものを、途中から頬杖を突きつつ聞いて、彼等の理由を理解した。彼らはこの事件を人為的なものと考えているようだ。
なるほど影時間に馴染みがないなら、非現実的だが自分達も体験している分、そう考えもするだろう。
テレビの中という非現実的空間に入れられた被害者たちを助ける為。それが出来るのが、おそらくは犯人を除いてテレビの中へ入れる自分たちしかいないから。
テレビの中という非現実空間について警察や社会が簡単に信じる話でもない。犯人も周囲が信じられないだろうということを利用しているなら、尚更だ。そして確実に犯人は利用している。
そう考えた彼等の行動はある意味正しいのだろう。それは俺が根拠もなく『愚者』を探すことより明確に正しい。
「でも犯人探しは難しいと思うぜぇ」
「どうしてですか?」
「お前等の行動が全部後手になってることと、本当に人が犯人であるか分からねぇから」
テレビの中へ入れられた被害者は今のところ四人。そのうち二人は亡くなり、残りの二人も救えたとはいえ、犯人への手がかりどころかどうして自分が狙われたのかも分かっていないらしい。
だとしたら、彼等は俺と同じく犯人は『テレビの向こう側の存在』という可能性だって考えられる筈で、非日常的な現象が起こっている分可能性も広がっている。そんな状態で且つ後手に回っている今の状況では、犯人どころか次の被害者も救えないだろう。
テレビの中にはクマ以外の人はいないという話から犯人はこちら側の人間だと推測しても、そのクマが嘘を吐いていたら。
俺はまだいい。テレビへ入れる人物を探していただけだから。被害者を救うというタイムリミットも無い。
「しばらくは被害者を助けることしか出来ねぇと思うぜぇ」
「それでも! 助けることは出来ます!」
「別に助けるなとは言ってねぇよ。むしろ助けて犯人の思う様にさせずに手がかりを求めたほうが良いだろうなぁ。思い通りにいかなくてそのうちボロを出すかも知れねぇし」
「つまり犯人がどう動くとしても、長期戦になると?」
「Si」
空になったカップを握り潰す。
三人もそれぞれ真剣に考えているうえ、俺への疑心も晴れたようだし帰っても良いだろうかと腰を浮かしかけたところで、月森に声を掛けられて再び腰を下ろした。
「お願いがあります。オレたちに力を貸してください」
「ちょっ、月森!?」
月森は驚く花村を無視してまっすぐ見つめてくる。
「オレ達がテレビへ入る瞬間を見たことやマヨナカテレビで天城を見ただけで、テレビの中に人が落とされていることや、その犯人像まで先輩は推理してました。更にはオレ達が犯人かもしれない、犯人じゃないとしてもテレビの中で何をしているのか。そこまで考えてオレ達と話をしてくれました。今後オレ達が犯人を捜すのに当たって、そういう考え方の出来る人は必要だと思うんです」
「お前がやればいいだろぉ」
「オレには無理です。それに先輩もテレビの中へ入れる。ペルソナのことも知っているみたいだし、先輩もペルソナを持ってるんじゃないですか?」
思わず無言になったのは肯定していいのか判断しそこねたからだ。
もしここで肯定すれば、彼等はきっとあのシャドウのいるテレビの中を進む為の戦力として、他の二人も仲間に引き入れようとするだろう。かといって今は持っていないと否定しても、ペルソナを持っていたのは本当だし、それではどうしてテレビの中で動き回れるのかという話になる。
だからここで持っていないと嘘を吐いてもナンセンスだ。
言おうかと口を開きかけたところで、誰のか分からないが携帯が鳴った。場の緊張が一瞬緩む。
鳴り続けていた携帯は花村の物らしく、取り出して着信相手を見ると花村は顔をしかめ席を立った。どうやらバイトか何かの連絡らしい。
状況を打破することが出来たと内心で感謝しながら鞄を持って立ち上がる。
「悪ぃが今日はこれまでにしてくれぇ」
「オレの話は」
「断る」
「どうしてですか!?」
「……里中さん。俺は、ペルソナ持ってねぇんだぁ」
愛想を尽かしてか召喚出来なくなってしまった俺のペルソナ。
「だから、お前らみたいに長時間テレビの中へは居られねぇんだと思う。それに俺の目的はお前らと違うから、協力しても俺に利益は多分無ぇ。そっちの問題に首を突っ込む前に目の前の問題を解かなきゃいけねぇんだぁ」
「目の前の問題?」
月森が首を傾げる。里中も良くは分からなかったようで、その向こうから電話を終えたらしい花村が戻ってくるのが見えたのを機に、その場から逃げる様に離れた。
もし。
もし、俺が彼等に協力して犯人探しをすることになったら、まぁ確かに『愚者』の確認はしやすいだろう。事件に関しても警察より彼等は真実に近い場所にいる。
更には俺の事情を酌んで、あの三人の中にいる『愚者』が俺に手を貸してくれるかもしれない。
だが逆に俺がペルソナ使いであったこととかはバレる。となるとどうして俺がペルソナを持っていたか、それを失うのにどういう経緯があったのかを話す必要が出てくるかもしれない。
そうなったら、俺はそれを話せるのか?
何も出来なかった愚か者であると、言えるのか。
そもそも俺は本当に彼等の力になれるのか?
鞄から音楽プレーヤーを取り出して耳に嵌めた。
やっぱり音が悪い。夕食の材料を買う間ずっと雑音に紛れて責められている気がする。酷く誰かに会いたくなったのだけれど、その誰かには一人として会えないと知っていた。
買い物籠に今日の夕食と数日分の食料を放り込んで、逃げるようにジュネスを後にする。
彼等はまだフードコートにいるのだろうかと、少しだけ思った。
「まず、オレ達はヒーローごっこでテレビの中へ入っている訳じゃありません」
ゆっくりと頭の中で整理しながら順を追って話される理由というものを、途中から頬杖を突きつつ聞いて、彼等の理由を理解した。彼らはこの事件を人為的なものと考えているようだ。
なるほど影時間に馴染みがないなら、非現実的だが自分達も体験している分、そう考えもするだろう。
テレビの中という非現実的空間に入れられた被害者たちを助ける為。それが出来るのが、おそらくは犯人を除いてテレビの中へ入れる自分たちしかいないから。
テレビの中という非現実空間について警察や社会が簡単に信じる話でもない。犯人も周囲が信じられないだろうということを利用しているなら、尚更だ。そして確実に犯人は利用している。
そう考えた彼等の行動はある意味正しいのだろう。それは俺が根拠もなく『愚者』を探すことより明確に正しい。
「でも犯人探しは難しいと思うぜぇ」
「どうしてですか?」
「お前等の行動が全部後手になってることと、本当に人が犯人であるか分からねぇから」
テレビの中へ入れられた被害者は今のところ四人。そのうち二人は亡くなり、残りの二人も救えたとはいえ、犯人への手がかりどころかどうして自分が狙われたのかも分かっていないらしい。
だとしたら、彼等は俺と同じく犯人は『テレビの向こう側の存在』という可能性だって考えられる筈で、非日常的な現象が起こっている分可能性も広がっている。そんな状態で且つ後手に回っている今の状況では、犯人どころか次の被害者も救えないだろう。
テレビの中にはクマ以外の人はいないという話から犯人はこちら側の人間だと推測しても、そのクマが嘘を吐いていたら。
俺はまだいい。テレビへ入れる人物を探していただけだから。被害者を救うというタイムリミットも無い。
「しばらくは被害者を助けることしか出来ねぇと思うぜぇ」
「それでも! 助けることは出来ます!」
「別に助けるなとは言ってねぇよ。むしろ助けて犯人の思う様にさせずに手がかりを求めたほうが良いだろうなぁ。思い通りにいかなくてそのうちボロを出すかも知れねぇし」
「つまり犯人がどう動くとしても、長期戦になると?」
「Si」
空になったカップを握り潰す。
三人もそれぞれ真剣に考えているうえ、俺への疑心も晴れたようだし帰っても良いだろうかと腰を浮かしかけたところで、月森に声を掛けられて再び腰を下ろした。
「お願いがあります。オレたちに力を貸してください」
「ちょっ、月森!?」
月森は驚く花村を無視してまっすぐ見つめてくる。
「オレ達がテレビへ入る瞬間を見たことやマヨナカテレビで天城を見ただけで、テレビの中に人が落とされていることや、その犯人像まで先輩は推理してました。更にはオレ達が犯人かもしれない、犯人じゃないとしてもテレビの中で何をしているのか。そこまで考えてオレ達と話をしてくれました。今後オレ達が犯人を捜すのに当たって、そういう考え方の出来る人は必要だと思うんです」
「お前がやればいいだろぉ」
「オレには無理です。それに先輩もテレビの中へ入れる。ペルソナのことも知っているみたいだし、先輩もペルソナを持ってるんじゃないですか?」
思わず無言になったのは肯定していいのか判断しそこねたからだ。
もしここで肯定すれば、彼等はきっとあのシャドウのいるテレビの中を進む為の戦力として、他の二人も仲間に引き入れようとするだろう。かといって今は持っていないと否定しても、ペルソナを持っていたのは本当だし、それではどうしてテレビの中で動き回れるのかという話になる。
だからここで持っていないと嘘を吐いてもナンセンスだ。
言おうかと口を開きかけたところで、誰のか分からないが携帯が鳴った。場の緊張が一瞬緩む。
鳴り続けていた携帯は花村の物らしく、取り出して着信相手を見ると花村は顔をしかめ席を立った。どうやらバイトか何かの連絡らしい。
状況を打破することが出来たと内心で感謝しながら鞄を持って立ち上がる。
「悪ぃが今日はこれまでにしてくれぇ」
「オレの話は」
「断る」
「どうしてですか!?」
「……里中さん。俺は、ペルソナ持ってねぇんだぁ」
愛想を尽かしてか召喚出来なくなってしまった俺のペルソナ。
「だから、お前らみたいに長時間テレビの中へは居られねぇんだと思う。それに俺の目的はお前らと違うから、協力しても俺に利益は多分無ぇ。そっちの問題に首を突っ込む前に目の前の問題を解かなきゃいけねぇんだぁ」
「目の前の問題?」
月森が首を傾げる。里中も良くは分からなかったようで、その向こうから電話を終えたらしい花村が戻ってくるのが見えたのを機に、その場から逃げる様に離れた。
もし。
もし、俺が彼等に協力して犯人探しをすることになったら、まぁ確かに『愚者』の確認はしやすいだろう。事件に関しても警察より彼等は真実に近い場所にいる。
更には俺の事情を酌んで、あの三人の中にいる『愚者』が俺に手を貸してくれるかもしれない。
だが逆に俺がペルソナ使いであったこととかはバレる。となるとどうして俺がペルソナを持っていたか、それを失うのにどういう経緯があったのかを話す必要が出てくるかもしれない。
そうなったら、俺はそれを話せるのか?
何も出来なかった愚か者であると、言えるのか。
そもそも俺は本当に彼等の力になれるのか?
鞄から音楽プレーヤーを取り出して耳に嵌めた。
やっぱり音が悪い。夕食の材料を買う間ずっと雑音に紛れて責められている気がする。酷く誰かに会いたくなったのだけれど、その誰かには一人として会えないと知っていた。
買い物籠に今日の夕食と数日分の食料を放り込んで、逃げるようにジュネスを後にする。
彼等はまだフードコートにいるのだろうかと、少しだけ思った。