序
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アレン視点
鼻血を出しながら倒れたシルビを医務室に運べば、婦長はまたかといった様子でシルビを寝台に寝かせ手慣れた様子で処置を始める。運んできたことで役目は終わったがシルビが心配なのと何か手伝えることがあるのではないかとアレンが所帯なさげに突っ立っていると、一通りの処置を終えた婦長が口を開いた。
「驚いたでしょう」
「え、あ、はい。シルビはいつものだって言ってましたけど」
「この子は昔からこういうことが多々あるのよ。本人は頭の使い過ぎだって言うけれど、詳しいことは分かってないわ」
頭の使い過ぎと聞いて思い出すのは良く言う知恵熱だろうか。けれどもシルビのそれはおよそそんな可愛らしい物には思えない。
だって倒れる前のシルビはまるで今にも死にそうな様子だった。
他の仕事があるからと立ち去る婦長に、アレンも医務室を去ろうとしてなんとなく寝台で眠っているシルビを振り返る。まるで死人の様に眠っている彼は、どうしてだが少し幸せそうに見えた。
持病だというのならそれはエクソシストとしての活動に支障はないのだろうか。毎回鼻血を出しているのなら貧血の心配はないのかとか、思うところはあるが踏み込む権利はきっとアレンにはないのだろう。
アレンは新参者だ。
「――」
ふとシルビが何かを呟いた。目を覚ましたのだろうかと近づいて見てみるも、目を覚ました訳ではなくどうやら寝言だったらしい。
なんとなく掛布から出ていた手に触れてみれば動揺するくらいに冷たかった。
ただ、アレンが触れた直後僅かに指先が動いてアレンの手を握る。ゆっくりと開かれた瞼の下から、虚空を眺めている様な紫色の眼が現れてアレンを映した。
朝焼けと夕焼けを混ぜ合わせたような色。
「――coccodrillo」
「ぇ」
「ココディーロ。俺もいきたい」
そう言ってシルビは再び目を閉じて深く寝入ってしまう。握ったままの手はけれども握られたままで、それをそっと放しながらアレンは死人みたいなシルビを見下ろした。
病室の外で看護婦達が忙しなく走り回っている足音がする。少し騒がしさが増したのは誰か任務に出ていた者が負傷して帰ってきたのか。
神田だったら微妙なところだけれどリナリーだったら大変だなと思いつつ、アレンは出来るだけ静かに踵を返してシルビの病室を後にする。
シルビの言った『いきたい』という言葉が、『生きたい』なのか『行きたい』なのか、それとも『逝きたい』なのかがやけに気になった。
俺『も』ということはきっと、ココディーロという人はいってしまったのだろう。
シルビを置いて。
鼻血を出しながら倒れたシルビを医務室に運べば、婦長はまたかといった様子でシルビを寝台に寝かせ手慣れた様子で処置を始める。運んできたことで役目は終わったがシルビが心配なのと何か手伝えることがあるのではないかとアレンが所帯なさげに突っ立っていると、一通りの処置を終えた婦長が口を開いた。
「驚いたでしょう」
「え、あ、はい。シルビはいつものだって言ってましたけど」
「この子は昔からこういうことが多々あるのよ。本人は頭の使い過ぎだって言うけれど、詳しいことは分かってないわ」
頭の使い過ぎと聞いて思い出すのは良く言う知恵熱だろうか。けれどもシルビのそれはおよそそんな可愛らしい物には思えない。
だって倒れる前のシルビはまるで今にも死にそうな様子だった。
他の仕事があるからと立ち去る婦長に、アレンも医務室を去ろうとしてなんとなく寝台で眠っているシルビを振り返る。まるで死人の様に眠っている彼は、どうしてだが少し幸せそうに見えた。
持病だというのならそれはエクソシストとしての活動に支障はないのだろうか。毎回鼻血を出しているのなら貧血の心配はないのかとか、思うところはあるが踏み込む権利はきっとアレンにはないのだろう。
アレンは新参者だ。
「――」
ふとシルビが何かを呟いた。目を覚ましたのだろうかと近づいて見てみるも、目を覚ました訳ではなくどうやら寝言だったらしい。
なんとなく掛布から出ていた手に触れてみれば動揺するくらいに冷たかった。
ただ、アレンが触れた直後僅かに指先が動いてアレンの手を握る。ゆっくりと開かれた瞼の下から、虚空を眺めている様な紫色の眼が現れてアレンを映した。
朝焼けと夕焼けを混ぜ合わせたような色。
「――coccodrillo」
「ぇ」
「ココディーロ。俺もいきたい」
そう言ってシルビは再び目を閉じて深く寝入ってしまう。握ったままの手はけれども握られたままで、それをそっと放しながらアレンは死人みたいなシルビを見下ろした。
病室の外で看護婦達が忙しなく走り回っている足音がする。少し騒がしさが増したのは誰か任務に出ていた者が負傷して帰ってきたのか。
神田だったら微妙なところだけれどリナリーだったら大変だなと思いつつ、アレンは出来るだけ静かに踵を返してシルビの病室を後にする。
シルビの言った『いきたい』という言葉が、『生きたい』なのか『行きたい』なのか、それとも『逝きたい』なのかがやけに気になった。
俺『も』ということはきっと、ココディーロという人はいってしまったのだろう。
シルビを置いて。
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