序
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あれは弟ではない。
あれは“弟”ではない。
あれは“弟ではない”。
“あれは弟ではない”。
脳裏に浮かぶのは出会ったばかりの少年だ。左目に呪いの印を与えられた少年はしかし、シルビの弟の様に綺麗な銀色を持っていた。
あの子が弟であればシルビは生きていていいだろうか。
否。
あの子を弟の様に思うのは滑稽だろうか。
是。
教団に来てからずっと使っている私室の寝台に寝転がって考えるのは、あのクロス・マリアンが送り込んできたという新入りの事だった。
あの男がシルビのことを考えてあの少年を送り込んできたとは絶対に思えないが、それとは別にシルビは『あの少年には何かがある』と考えている。というのもクロス元帥はシルビの事情をいくつか知っている相手だったからだ。
それらを教えてしまったのはシルビの浅慮だったと今では思うが、知られてしまったものは仕方がないとシルビはクロス元帥の敵に回らないことでその沈黙を守ってもらっていた。クロス元帥もシルビのそういう事情を考慮してか利用できるか計りかねているのか、教団から逃げ回っているくせにシルビには時々連絡を寄越している。
けれどもその手紙に『アレン』の事が記されていたことは無かった。だから正直クロス元帥の弟子が教団に来たと聞いて驚いたし、そんな存在のことを『教えられていなかった』という事実も訝しく思っている。
いや、クロス元帥からすれば当たり前なのかも知れない。シルビは彼以上に『黒の教団を嫌っている』だけではないのだから。
こんな世界が嫌いだ。
こんな組織が嫌いだ。
こんな場所が嫌いだ。
こんな自分が大嫌いだ。
「……ぅえっ」
吐き気を覚えて思わず起き上がって口を手で押さえる。胃液が逆流してくるような痛みと喉の奥に感じる酸っぱさに顔をしかめたところで、部屋のドアがノックされた。
「……どうぞぉ」
声が裏返っているのをどうにか誤魔化して返事をすれば、ドア越しにリナリーの声がする。
『起きてた? 兄さんが新しい任務だから来て欲しいって』
「分かったぁ」
耳を澄まさずともリナリーの立ち去る足音が遠ざかっていくのが聞こえた。それが完全に聞こえなくなってから寝台を降りる。
十数年使用している割には私物が少ないと言われる部屋。死ねない理由はまだ無い。むしろエクシソストなんかになる前より死ねない理由は無くなったように思っている。
団服を着て自身のイノセンスをホルダーに納めて身につけた。だんだんと“生前”の姿に似てくる自分に嫌気が差す。
だというのに武器の形状はナイフなのだから笑えない。
あれは“弟”ではない。
あれは“弟ではない”。
“あれは弟ではない”。
脳裏に浮かぶのは出会ったばかりの少年だ。左目に呪いの印を与えられた少年はしかし、シルビの弟の様に綺麗な銀色を持っていた。
あの子が弟であればシルビは生きていていいだろうか。
否。
あの子を弟の様に思うのは滑稽だろうか。
是。
教団に来てからずっと使っている私室の寝台に寝転がって考えるのは、あのクロス・マリアンが送り込んできたという新入りの事だった。
あの男がシルビのことを考えてあの少年を送り込んできたとは絶対に思えないが、それとは別にシルビは『あの少年には何かがある』と考えている。というのもクロス元帥はシルビの事情をいくつか知っている相手だったからだ。
それらを教えてしまったのはシルビの浅慮だったと今では思うが、知られてしまったものは仕方がないとシルビはクロス元帥の敵に回らないことでその沈黙を守ってもらっていた。クロス元帥もシルビのそういう事情を考慮してか利用できるか計りかねているのか、教団から逃げ回っているくせにシルビには時々連絡を寄越している。
けれどもその手紙に『アレン』の事が記されていたことは無かった。だから正直クロス元帥の弟子が教団に来たと聞いて驚いたし、そんな存在のことを『教えられていなかった』という事実も訝しく思っている。
いや、クロス元帥からすれば当たり前なのかも知れない。シルビは彼以上に『黒の教団を嫌っている』だけではないのだから。
こんな世界が嫌いだ。
こんな組織が嫌いだ。
こんな場所が嫌いだ。
こんな自分が大嫌いだ。
「……ぅえっ」
吐き気を覚えて思わず起き上がって口を手で押さえる。胃液が逆流してくるような痛みと喉の奥に感じる酸っぱさに顔をしかめたところで、部屋のドアがノックされた。
「……どうぞぉ」
声が裏返っているのをどうにか誤魔化して返事をすれば、ドア越しにリナリーの声がする。
『起きてた? 兄さんが新しい任務だから来て欲しいって』
「分かったぁ」
耳を澄まさずともリナリーの立ち去る足音が遠ざかっていくのが聞こえた。それが完全に聞こえなくなってから寝台を降りる。
十数年使用している割には私物が少ないと言われる部屋。死ねない理由はまだ無い。むしろエクシソストなんかになる前より死ねない理由は無くなったように思っている。
団服を着て自身のイノセンスをホルダーに納めて身につけた。だんだんと“生前”の姿に似てくる自分に嫌気が差す。
だというのに武器の形状はナイフなのだから笑えない。