序
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アレン視点
アレンが『彼』を見たのは、黒の教団に来て初の任務だったマテールから帰ってきた夜のことだ。
地下水路で船を降りた直後に遭遇したコムリン暴走騒動の最中。リナリーを庇ってアレンがコムリンに捕まった後、麻酔の効果が薄くなって目を覚ましたリナリーと一緒にコムリンを倒してくれたのが彼こと『シルビ』だった。
コムイ室長に打たれた痺れ薬とコムリンによる改造手術(未遂)のせいもあって、互いの紹介が出来たのはアレンが目を覚ました後だったけれど。
「リナ。コムリンの分解とコムイの回収してきたぜぇ」
「あ、シルビ。アレン君も目を覚ましたよ」
目を覚ましたアレンとリナリーの元にやってきた彼は、団服とも科学班の白衣も違う、ラフな私服姿の一見女性かと見間違える女顔の若者だった。
任務で一緒だった神田と同じように長い黒髪をけれども神田と違って首筋の辺りで結わえ、声を聞いていなければ女性だと思っていただろう。独特な雰囲気をまとっていて、何よりもその眼の色が印象的な紫色をしている。
ただリナリーや目を覚ましたアレンを見るその眼は一瞬、虚空を見つめているような気がした。
寂しい眼の色だ、と漠然と思うも、彼が口角を上げて書類だらけの床に担いでいたコムイを降ろしてアレンを見た時には、もうその色はなくなっている。気のせいかなと考えていれば彼はコムイを跨いでアレンへと近付いてきた。
「君が新入りエクソシストぉ? 俺はシルビ・T・グラマト」
「あ……アレン・ウォーカーです。初めまして。……あの?」
シルビは長椅子から起き上がった姿勢のままだったアレンの傍でしゃがみ、何故かマジマジとアレンの顔を覗き込んでくる。そんなにずっと見つめられたままでいるのも気恥ずかしくて顔を逸らそうとすれば、しかしシルビがアレンの顔を両手で掴んだことで阻止された。
初対面で顔を掴まれたことにも驚いたが、それ以上に彼が見ているのが“左目の傷”ではない事に気付いて、アレンは少しだけ動揺する。
顔の傷、ましてや何かの印の様なそれは目立つ。今までにも何度も奇妙に思われたり呪われていることを忌避されたことはあったが、こうしてそれ以外の部分に目を向けられたのは初めてかも知れない。
そんな困惑に揺れたアレンの目を見て、シルビのそれが細められる。
虚空のような眼。
「――coccodrillo」
「え――?」
「おーいシルビ。悪いんだけど向こうの部屋の掃除手伝ってくれるか? アレンの新しい部屋なんだけど」
科学班の一人の声にシルビがパッとアレンの顔から手を離した。その時には既に元通りの眼になっていて、リナリーが床に転がるコムイを起こそうとしている。
「アレン君? どうかした?」
「あ、いえ……」
アレンが『彼』を見たのは、黒の教団に来て初の任務だったマテールから帰ってきた夜のことだ。
地下水路で船を降りた直後に遭遇したコムリン暴走騒動の最中。リナリーを庇ってアレンがコムリンに捕まった後、麻酔の効果が薄くなって目を覚ましたリナリーと一緒にコムリンを倒してくれたのが彼こと『シルビ』だった。
コムイ室長に打たれた痺れ薬とコムリンによる改造手術(未遂)のせいもあって、互いの紹介が出来たのはアレンが目を覚ました後だったけれど。
「リナ。コムリンの分解とコムイの回収してきたぜぇ」
「あ、シルビ。アレン君も目を覚ましたよ」
目を覚ましたアレンとリナリーの元にやってきた彼は、団服とも科学班の白衣も違う、ラフな私服姿の一見女性かと見間違える女顔の若者だった。
任務で一緒だった神田と同じように長い黒髪をけれども神田と違って首筋の辺りで結わえ、声を聞いていなければ女性だと思っていただろう。独特な雰囲気をまとっていて、何よりもその眼の色が印象的な紫色をしている。
ただリナリーや目を覚ましたアレンを見るその眼は一瞬、虚空を見つめているような気がした。
寂しい眼の色だ、と漠然と思うも、彼が口角を上げて書類だらけの床に担いでいたコムイを降ろしてアレンを見た時には、もうその色はなくなっている。気のせいかなと考えていれば彼はコムイを跨いでアレンへと近付いてきた。
「君が新入りエクソシストぉ? 俺はシルビ・T・グラマト」
「あ……アレン・ウォーカーです。初めまして。……あの?」
シルビは長椅子から起き上がった姿勢のままだったアレンの傍でしゃがみ、何故かマジマジとアレンの顔を覗き込んでくる。そんなにずっと見つめられたままでいるのも気恥ずかしくて顔を逸らそうとすれば、しかしシルビがアレンの顔を両手で掴んだことで阻止された。
初対面で顔を掴まれたことにも驚いたが、それ以上に彼が見ているのが“左目の傷”ではない事に気付いて、アレンは少しだけ動揺する。
顔の傷、ましてや何かの印の様なそれは目立つ。今までにも何度も奇妙に思われたり呪われていることを忌避されたことはあったが、こうしてそれ以外の部分に目を向けられたのは初めてかも知れない。
そんな困惑に揺れたアレンの目を見て、シルビのそれが細められる。
虚空のような眼。
「――coccodrillo」
「え――?」
「おーいシルビ。悪いんだけど向こうの部屋の掃除手伝ってくれるか? アレンの新しい部屋なんだけど」
科学班の一人の声にシルビがパッとアレンの顔から手を離した。その時には既に元通りの眼になっていて、リナリーが床に転がるコムイを起こそうとしている。
「アレン君? どうかした?」
「あ、いえ……」