素っ気ない天井と窓からの心地良い風。ああ昼寝をしていたのかとまだ眠気のとれない頭で考えて、もう少し寝ていても大丈夫だろうかと算段を立てる。仕事が終わったから二世と可愛い弟へ会いに行ったのに、二人とも用事で出掛けていたなんて残念だった。
だからジョットの屋敷の方に来て昼寝をしていたのだ。
ドアが開く音に首を巡らせれば、ジョットとアラウディが入って来る。

「ジョット。アラウディ」

呼びかければ二人がシルビを見た。二人とも、何だかいつもより幼いような気もしたけれど気のせいだろう。特にジョットは案外年齢不詳だ。

「二世とココディーロは帰ってきたかぁ？ まだならもう少し寝てていい？」

ここは居心地がいい。少なくとも自分の寝床よりは遥かに。あそこはココディーロが独り立ちしてから引っ越した場所だけれど殆ど穴倉のような場所だった。一人暮らしだからと様々なものを面倒くさがって選んだのが悪かったと反省している。その分安全性は高いけれど。
恨まれる仕事だ。寝ている時くらいは安全を確保したかった。もうあの男もいないのに。
深く息を吐いて目を閉じる。本当にここは心地が良い。

「生まれ変わった夢を見てたよ。お前らの子孫って子供とか、似てるヤツとかがワチャワチャしてたぁ」

十代目だと言っていたからジョット達が作り上げたボンゴレは少なくとも十代先まではしっかりと続くのだろう。
民衆を圧制から守る自警団。シルビは知らない誰かを守るのは真っ平だとマフィアになろうとは思わなかったけれど、知っている誰かなら守りたいと思った。
だからココディーロがマフィアの一員になっても文句は言わず、あの子の仕事を遠からず手助け出来る様に殺し屋になったのだ。守れるなら何でも良かった。あの子の笑顔を守りたかっただけだから。
それがそのうちあの子の笑顔だけではなくなって、二世やジョット、デイモンやバミューダの事も守れたらなんて思い上がってしまったのはいつからだろう。
産まれた瞬間から死ぬことを望まれた子供。シルビにそんな資格も権利も無かっただろうに。
死ぬことを望まれていつか必ず死ななければならないのであれば、この命は他の命を守る為に使おうと決めている。それが二世とココディーロの命になるとは思っていなかったけれど。

「――？」

何か引っ掛かりを覚えたがそれよりもぶり返してきた眠気が勝る。ジョットもアラウディも何も言わないから、まだ寝てしまっていても問題は無いのだろう。
ここは、心地が良い。