日常編
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綱吉視点
「笹川」
一日の授業が全て終わって放課後、綱吉が帰り支度をしている傍で珍しく獄寺が綱吉以外のクラスメイトに自分から話しかけていた。その話しかけた相手が綱吉の片思いの相手である笹川京子だったこともあって、綱吉はちょっとした好奇心と緊張せずに話しかけられる羨ましさといった嫉妬から、出来うる限り自然に二人の会話へ聞き耳を立てる。
「おまえの知り合いで長い黒髪の、紫の眼をした女みたいな男居んだろ」
「アマネちゃんのこと?」
長い黒髪、紫色の眼。それから『アマネ』という名前に綱吉の脳裏にも一人の人物が思い浮かんだ。以前持田先輩と騒ぎを起こした時に出会った、京子の幼馴染だという先輩だ。
獄寺が言った通り長い黒髪と珍しい紫色の眼が特徴的な先輩で、綱吉もあの日道場で声を聴くまで正直女の人だと思っていた。
悪い人ではないと思う。むしろ優しそうな人だと綱吉は認識していた。
会話をするどころかちゃんと顔を見たのだってあの時だけだというのに、綱吉は不思議なくらいにあの人を信頼している感じがする。
内心で何故だろうと首をひねる綱吉を置いて、獄寺と京子の会話は続いていた。
「アマネっつーのかあの人」
「うん。斑鳩アマネちゃん。私とお兄ちゃんの幼馴染だよ」
「屋上で会ったんだが頭痛そうにしてたからよ、大丈夫なのか気になって」
いつも綱吉を十代目十代目と誉めそやし、友人の山本に対しても辛辣な態度を取っている獄寺が、頭痛で辛そうにしていたというだけでアマネのことを気に掛けている。
珍しい。
「ああ、アマネちゃん偏頭痛持ちなの。少し休めば大丈夫っていつも言ってるけど、気になるなら私からも聞いておくね。あ、獄寺君が心配してたこともちゃんと伝えておくよ!」
「いい! 伝えんな!」
自分が心配していたことは伝えないで欲しいらしいが、それはそれとして京子から安否を尋ねてもらう提案は否定しなかった。やはり獄寺の行動にしては珍しく思えて、綱吉はさり気無く二人の話に割り込んだ。
「珍しいね、獄寺君が心配するなんて」
前言撤回。全くさり気無くない。
「十代目! そう言えばアイツも十代目を存じておられました」
「ああうん。上着を貸してもらったんだ」
そういえばあの時借りた上着はどうしたのだったか。返した記憶が綱吉に無かった。
リボーンに死ぬ気弾を撃たれるのも慣れたくはないがもう慣れたものの、正気に戻ってから裸でパンツ一枚だけの姿なことには未だに慣れない。ましてやあの頃はまだリボーンが来たばかりで今よりも全裸になることに抵抗があった。
そんな時に全裸の綱吉を変に馬鹿にすることもなく、上着を貸してくれたのはあの人だけだ。だというのに綱吉はお礼の一つもまだしていない。
「親しき仲にも礼儀ありだゾ」
「おわっ!? リボーン!」
「チャオっす」
いつの間にかリボーンが京子の机の上に座っていて綱吉達は驚いた。当のリボーンはそんな綱吉達の驚きなど意に介した様子もなく立ち上がって綱吉達を見上げる。
赤ん坊だから机の上で立っても綱吉達を見下ろす状態にはならない。
「あの髪の長いヤツの話か」
「髪の長いヤツって、あの人は斑鳩アマネっていうオレらの先輩! 失礼だろ」
「斑鳩、アマネ……か。京子、アイツは生粋の日本人か?」
「? アマネちゃんのお父さんとお母さんは亡くなってるけど、二人とも日本人だったよ?」
唐突なリボーンの質問に対する答えで不躾にアマネの事情を聞いてしまって綱吉は何となく気まずく思った。しかし京子と獄寺は気まずいとは思っていないらしい。
急にアマネが日本人かを訊いたリボーンの意図は全く分からなかった。ただリボーンは思うところがあるのか少し俯いて何かを考えている。
「眼の色が珍しいからかな? 私も昔気になって聞いたことがあるけど、珍しいけど絶対に無い訳じゃない色なんだってね」
「確か緑の眼よりも確率が低いんだったはずだ。オレも実物見るのはアイツが初めてだな」
「へぇー、詳しいんだね」
「お、おう。でも紫の眼は色素異常が原因だったから髪があんな黒いのは、それはそれでおかしい気もするんだが。つかなんであんなに伸ばしてんだアイツ?」
「『弟が伸ばしててお揃いが好きだったから』なんだって。でもアマネちゃんに弟はいないんだよ。不思議だよね」
雑談からどんどんアマネの事情が掲示されていく。それを聞いているのかいないのかリボーンはまだ考え込んでいた。
山本や京子の兄である了平みたいにマフィアボンゴレを継ぐ綱吉の部下候補に、なんて考えているのなら止めなければと思って綱吉はリボーンに話しかける。
「リボーン。アマネ先輩は大丈夫だよ」
言って、言おうと思ったことではない発言に当事者のくせに驚いた。そんな綱吉を獄寺と京子は不思議そうに、リボーンはやはり何かを考える様に見て、けれども三人とも綱吉の言葉を否定しない。
道場で見たアマネの紫色の眼が脳裏に浮かぶ。朝焼けと夕焼けとが混ぜ込んで溶けるような色合いと言えばいいのだろうか。あの眼の色を上手く表現するには綱吉の現国の成績は良くない。
一度会っただけの人だというのにどうしてこんなに信頼しているのだろうかと不思議に思う。けれども綱吉の勘は何度考え直してもあの人を悪い人だとは思わなかった。
「笹川」
一日の授業が全て終わって放課後、綱吉が帰り支度をしている傍で珍しく獄寺が綱吉以外のクラスメイトに自分から話しかけていた。その話しかけた相手が綱吉の片思いの相手である笹川京子だったこともあって、綱吉はちょっとした好奇心と緊張せずに話しかけられる羨ましさといった嫉妬から、出来うる限り自然に二人の会話へ聞き耳を立てる。
「おまえの知り合いで長い黒髪の、紫の眼をした女みたいな男居んだろ」
「アマネちゃんのこと?」
長い黒髪、紫色の眼。それから『アマネ』という名前に綱吉の脳裏にも一人の人物が思い浮かんだ。以前持田先輩と騒ぎを起こした時に出会った、京子の幼馴染だという先輩だ。
獄寺が言った通り長い黒髪と珍しい紫色の眼が特徴的な先輩で、綱吉もあの日道場で声を聴くまで正直女の人だと思っていた。
悪い人ではないと思う。むしろ優しそうな人だと綱吉は認識していた。
会話をするどころかちゃんと顔を見たのだってあの時だけだというのに、綱吉は不思議なくらいにあの人を信頼している感じがする。
内心で何故だろうと首をひねる綱吉を置いて、獄寺と京子の会話は続いていた。
「アマネっつーのかあの人」
「うん。斑鳩アマネちゃん。私とお兄ちゃんの幼馴染だよ」
「屋上で会ったんだが頭痛そうにしてたからよ、大丈夫なのか気になって」
いつも綱吉を十代目十代目と誉めそやし、友人の山本に対しても辛辣な態度を取っている獄寺が、頭痛で辛そうにしていたというだけでアマネのことを気に掛けている。
珍しい。
「ああ、アマネちゃん偏頭痛持ちなの。少し休めば大丈夫っていつも言ってるけど、気になるなら私からも聞いておくね。あ、獄寺君が心配してたこともちゃんと伝えておくよ!」
「いい! 伝えんな!」
自分が心配していたことは伝えないで欲しいらしいが、それはそれとして京子から安否を尋ねてもらう提案は否定しなかった。やはり獄寺の行動にしては珍しく思えて、綱吉はさり気無く二人の話に割り込んだ。
「珍しいね、獄寺君が心配するなんて」
前言撤回。全くさり気無くない。
「十代目! そう言えばアイツも十代目を存じておられました」
「ああうん。上着を貸してもらったんだ」
そういえばあの時借りた上着はどうしたのだったか。返した記憶が綱吉に無かった。
リボーンに死ぬ気弾を撃たれるのも慣れたくはないがもう慣れたものの、正気に戻ってから裸でパンツ一枚だけの姿なことには未だに慣れない。ましてやあの頃はまだリボーンが来たばかりで今よりも全裸になることに抵抗があった。
そんな時に全裸の綱吉を変に馬鹿にすることもなく、上着を貸してくれたのはあの人だけだ。だというのに綱吉はお礼の一つもまだしていない。
「親しき仲にも礼儀ありだゾ」
「おわっ!? リボーン!」
「チャオっす」
いつの間にかリボーンが京子の机の上に座っていて綱吉達は驚いた。当のリボーンはそんな綱吉達の驚きなど意に介した様子もなく立ち上がって綱吉達を見上げる。
赤ん坊だから机の上で立っても綱吉達を見下ろす状態にはならない。
「あの髪の長いヤツの話か」
「髪の長いヤツって、あの人は斑鳩アマネっていうオレらの先輩! 失礼だろ」
「斑鳩、アマネ……か。京子、アイツは生粋の日本人か?」
「? アマネちゃんのお父さんとお母さんは亡くなってるけど、二人とも日本人だったよ?」
唐突なリボーンの質問に対する答えで不躾にアマネの事情を聞いてしまって綱吉は何となく気まずく思った。しかし京子と獄寺は気まずいとは思っていないらしい。
急にアマネが日本人かを訊いたリボーンの意図は全く分からなかった。ただリボーンは思うところがあるのか少し俯いて何かを考えている。
「眼の色が珍しいからかな? 私も昔気になって聞いたことがあるけど、珍しいけど絶対に無い訳じゃない色なんだってね」
「確か緑の眼よりも確率が低いんだったはずだ。オレも実物見るのはアイツが初めてだな」
「へぇー、詳しいんだね」
「お、おう。でも紫の眼は色素異常が原因だったから髪があんな黒いのは、それはそれでおかしい気もするんだが。つかなんであんなに伸ばしてんだアイツ?」
「『弟が伸ばしててお揃いが好きだったから』なんだって。でもアマネちゃんに弟はいないんだよ。不思議だよね」
雑談からどんどんアマネの事情が掲示されていく。それを聞いているのかいないのかリボーンはまだ考え込んでいた。
山本や京子の兄である了平みたいにマフィアボンゴレを継ぐ綱吉の部下候補に、なんて考えているのなら止めなければと思って綱吉はリボーンに話しかける。
「リボーン。アマネ先輩は大丈夫だよ」
言って、言おうと思ったことではない発言に当事者のくせに驚いた。そんな綱吉を獄寺と京子は不思議そうに、リボーンはやはり何かを考える様に見て、けれども三人とも綱吉の言葉を否定しない。
道場で見たアマネの紫色の眼が脳裏に浮かぶ。朝焼けと夕焼けとが混ぜ込んで溶けるような色合いと言えばいいのだろうか。あの眼の色を上手く表現するには綱吉の現国の成績は良くない。
一度会っただけの人だというのにどうしてこんなに信頼しているのだろうかと不思議に思う。けれども綱吉の勘は何度考え直してもあの人を悪い人だとは思わなかった。