閑話20
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レオナルド視点
「詳しいことは聞いてないが、彼も少年と同じで失った物を探しに来たんだよ」
病院の待合室でシルビが戻ってくるのを待つ間、レオの質問へスティーブンはそう答えた。
「紐育がHLになるよりも前の話さ。シルビには悪いが秘密裏に調べたところ牙狩り本部にもその事件のことは記録されていたよ。一応ね」
「事件?」
「本人が言おうとしてないから僕も言えない。ただシルビはそれに巻き込まれて色んな物を奪われたんだろう。よく疲れているのもその影響かな」
「色んな物って、一つじゃないんですか」
「残り三つだと聞いていた。ここで一つが見つかったのなら、あと二つなのだろう」
クラウスの言葉にレオはそっと自分の【神々の義眼】を覆う瞼へ触れる。この下にあるレオの眼は、妹のミシェーラから視力を奪う代わりに押しつけられたものだ。言葉通りミシェーラからは視力を、レオからはきっと平穏を奪ったモノでもある。
シルビに自分が【神々の義眼】を手に入れた話はしたことがあった。その時シルビは一言も自分のことは言わなかったように思う。【義眼】のことも、調べるのに協力してくれるとも言ってくれて。
けれどもシルビは、シルビ自身のことをレオには言わなかった。
それはおそらくレオの苦労を慮ってのことなのだろうし、シルビにもシルビの事情があって話さなかったのだろうことは想像に難くないけれど。
「教えて欲しかった、ってのはわがままっすかね」
クラウスとスティーブンがレオを振り返る。
「……レオ。私達も全てを教えてもらった訳ではない。君の事情へ配慮したのだろうし、シルビの事情は君が思うより複雑だ」
そう言われてしまえば返す言葉もない。レオとシルビではライブラ内の立場も背負っているモノも違う。けれどもさっき、『駄目』と拒絶されたのが地味にショックだった。
救急患者が次々と運ばれていく病院の奥から、シルビが何人にも分裂して病院内を走り回っている女医、ルシアナ・エステヴェスの一人と何かを話しながら戻ってくる。レオ達に気付いて上げられた顔と目が合い、その紫の色彩が煌めきと色濃さを増している気がした。
レオが呼ぶ前にシルビの方から笑みを浮かべ、ハグをするように飛びついてくる。
「うわっ、シルビ!?」
「先に帰ってても良かったのに、待っててくれたのかぁ? ありがとぉ」
パシパシとふざけるようにレオの背中を叩くノリはいつもと変わらないが、抱きついてきた体温が少し低い気がした。離れて微笑みながらレオを身長の関係で見下ろしてくるシルビの顔色も、あまり良いとは言えない。
ここで大丈夫か、と尋ねるのがいつもの自分なのだろうけれど。
今のレオには出来なかった。
「詳しいことは聞いてないが、彼も少年と同じで失った物を探しに来たんだよ」
病院の待合室でシルビが戻ってくるのを待つ間、レオの質問へスティーブンはそう答えた。
「紐育がHLになるよりも前の話さ。シルビには悪いが秘密裏に調べたところ牙狩り本部にもその事件のことは記録されていたよ。一応ね」
「事件?」
「本人が言おうとしてないから僕も言えない。ただシルビはそれに巻き込まれて色んな物を奪われたんだろう。よく疲れているのもその影響かな」
「色んな物って、一つじゃないんですか」
「残り三つだと聞いていた。ここで一つが見つかったのなら、あと二つなのだろう」
クラウスの言葉にレオはそっと自分の【神々の義眼】を覆う瞼へ触れる。この下にあるレオの眼は、妹のミシェーラから視力を奪う代わりに押しつけられたものだ。言葉通りミシェーラからは視力を、レオからはきっと平穏を奪ったモノでもある。
シルビに自分が【神々の義眼】を手に入れた話はしたことがあった。その時シルビは一言も自分のことは言わなかったように思う。【義眼】のことも、調べるのに協力してくれるとも言ってくれて。
けれどもシルビは、シルビ自身のことをレオには言わなかった。
それはおそらくレオの苦労を慮ってのことなのだろうし、シルビにもシルビの事情があって話さなかったのだろうことは想像に難くないけれど。
「教えて欲しかった、ってのはわがままっすかね」
クラウスとスティーブンがレオを振り返る。
「……レオ。私達も全てを教えてもらった訳ではない。君の事情へ配慮したのだろうし、シルビの事情は君が思うより複雑だ」
そう言われてしまえば返す言葉もない。レオとシルビではライブラ内の立場も背負っているモノも違う。けれどもさっき、『駄目』と拒絶されたのが地味にショックだった。
救急患者が次々と運ばれていく病院の奥から、シルビが何人にも分裂して病院内を走り回っている女医、ルシアナ・エステヴェスの一人と何かを話しながら戻ってくる。レオ達に気付いて上げられた顔と目が合い、その紫の色彩が煌めきと色濃さを増している気がした。
レオが呼ぶ前にシルビの方から笑みを浮かべ、ハグをするように飛びついてくる。
「うわっ、シルビ!?」
「先に帰ってても良かったのに、待っててくれたのかぁ? ありがとぉ」
パシパシとふざけるようにレオの背中を叩くノリはいつもと変わらないが、抱きついてきた体温が少し低い気がした。離れて微笑みながらレオを身長の関係で見下ろしてくるシルビの顔色も、あまり良いとは言えない。
ここで大丈夫か、と尋ねるのがいつもの自分なのだろうけれど。
今のレオには出来なかった。