―Day In Day Out―
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「猫ぉ?」
「オリエンタルショートヘアーだって」
「それよりレオ君はその顔平気なのかぁ?」
「シルビはやっぱザップさんと違うね!」
殴られでもしたのか顔を腫らしたレオと、泣きながら股間を押さえて仰け反っているザップという組み合わせは、正直普段であれば見慣れたものだが状況が分からない。
聞けばザップはセフレだか何だかに呪いを掛けられ、その呪いを解いて欲しければ居なくなった猫を探して来いという話で、レオはレオでゴロツキに絡まれたのだという。二人して乱れまくっているというか、世知辛い一日だったようだ。
「まぁ、とりあえずレオ君のその顔はどうにかしよう」
「オレもどうにかしてくれぇ……」
「はいはいザップさんはちょっと待ってろぉ」
レオの顔へ手を伸ばして指を鳴らす。途端に燃え上がった黄色い炎にレオが驚いていたが、火傷をするような炎でもないのでそのままレオの変形した頬へと押し当てた。
みるみるうちに治っていく顔の変形に、自分でも分かるのかレオが驚いている。もしかしてこれ説明しなけりゃいけねぇかと思ったが、終わってもレオは追求せずに御礼を言ってきただけだった。
次の問題は、とスクーターの荷台に座っていたザップを見れば、ザップは股間を押さえて顔の穴と言う穴から液体を零している。いったいどうすればこんな醜態を晒せるのかとそっちのほうが気になってしまった。
「というかHLって猫いるのかぁ?」
「いるよ。外から連れてくる人も居るみたいだし」
こんな異界と入り乱れた場所でも愛玩動物の需要はあるらしい。それとも食用だろうか。
どうも呼び捨てを許してからシルビへ敬語も使わなくなったレオは、『神々の義眼』を持っていても流石に見たことの無い猫は探せないらしい。かく言うシルビも『×××』が使えない現状、ハイ分かりましたと探してやる事も出来なかった。
かと言って、股間の呪いのほうも解く以前に解けるかどうか確かめる為に確認するのも嫌だ。何が楽しくて他人のイチモツを見なければならないのか。
だからもしかしたら解けるかもしれない事は隠しておく。
「チクショー……この能無しモン共めええぇええ……」
「人に助けを請う態度じゃねーよ」
「自業自得だなぁ。世界の為にムスコさん家出してもらえぇ」
「イヤだああぁあああぁあ」
「仕方ねぇなぁ。俺も探すの手伝うから、ほら、正気に戻りなさいってぇ」
地面に頭が付くほど仰け反っているザップの上半身を起こしてやり、スクーターの荷台のザップの更に後ろへ足を掛けた。つま先で引っかかっているような体勢だが、三人も乗っているスクーターからなら落ちても平気だろう。
「ああぁああああもーだめだー」
「ちょっ、ザップさん落ちる俺落ちるぅ! つか探せよアンタもぉ!」
「テメーだって呼んでるだけだろー」
「俺はこれで出てくるからいいんだよ! さっきからハズレばっかりだけどぉ」
シルビの動植物に好かれやすい体質は“残っていた”から、探し始めてからはそれを利用して猫を呼んでみていたものの、目的の猫は見つかっていなかった。オスの三毛猫は居たが今の目的ではないので帰ってもらっている。シルビが珍しがっているのを二人はどうでも良さげにしていたから、多分知らないのだろうが。
「もうザップさん捨てて探したほうが早ぇんじゃねぇ?」
「オレもそう思う! スピード出ねえじゃんこれじゃ! ……あれ?」
本来三人も乗せるなんて馬鹿げている乗り方でも、それなりのスピードが出ているこのスクーターは結構優秀かもしれない。走行中も時々猫が居ないかを確かめているシルビと違い、自分の事の癖にうだうだ泣き言をほざいているだけのザップを捨てる提案をしたところでレオが何かに気付いて声を上げた。
レオが見ているほうをシルビも見れば、知り合いなのか触手系の異界人の親子と談笑しているスティーブンの姿がある。夜風に当たりたくてちょっと散歩程度のラフな格好で、けれども別に酔っているとかそんな風ではない。
「おおなんだ。今日は夜遊びする知り合いの多い日だな」
「俺はバイト帰りなんですが。こんばんは」
停まったスクーターから降りて挨拶をする。シルビが降りた途端ザップがスクーターから落ちたが、ここまでの行ないで心配してやるつもりは無い。
「夜の散歩とは風情ですねぇ」
「ホームパーティが終わった後なんだ。ちょっと夜風に当たりたくてね」
欄干へ寄りかかっているスティーブンは、まだ少しどういう関係を築けばいいのか分かっていなかった。傍にいた触手系異界人が気まずげにしているのに振り向く。
「ああ、こちらはミセス・ヴェデット。うちの家政婦をやってくれているんだ」
「こんにちは。レオナルドです」
「シルビです」
「まあこんにちは」
「ミセス・ヴェデットは優秀でな」
「俺は自分の事は自分で全部出来る様に叩き込んだんで、家政婦さんを雇った事って無ぇんですけど……家政婦っていう職には興味あります。知ってます? 『家政婦は見た』」
「なんだいそれ?」
日本人なら内容は知らずともそのタイトルくらいは知っている人が多いドラマだが、当然だがスティーブンもレオも知らないらしい。店長はもしかしたら知っている。
ヴェデットへも知っているかと尋ねて、首を傾げあっている三人に、説明しようと口を開きかけると後ろでザップの叫び声が聞こえた。振り返ればヴェデットの子供が抱きかかえていた猫へ手を伸ばしながら泣いている。
「オレの、オレのっ、フリーダムマグナム!」
シルビはとりあえず無言でザップを蹴り飛ばした。その間に怯えていたヴェデットの子供が抱いていた猫をレオが確かめる。
「どうだぁ?」
「オリエンタルショートヘアーだ。でも……」
「名前はなんだっけぇ?」
「確かミザリアだったかな」
「……君がミザリアなら鳴いてくれるかぁ」
話しかけた途端甘えたような声で鳴いた猫に、どうやらビンゴだと悟った。猫を抱いたままの子供の傍へ行って、目線を合わせながら話しかける。
「その猫、君の猫?」
「ううん。……おねーさんの猫なのぉ?」
「おね……“お兄さん”の猫じゃねぇんだけど、飼い主に頼まれて探してた猫なんだぁ」
隣と後ろでレオとスティーブンが吹き出しかけていたが、今は怒るまい。ヴェデットの子供は抱えていた猫とシルビ達を交互に見やっていたが、やがて寂しそうながらも猫を差し出してきた。
「飼い主の人、寂しがってるもんねぇ」
「ありがとう。ほらザップさん、アンタもお礼言っとけぇ!」
「なんだ。ザップの頼みだったのか?」
「自業自得ですよ自業自得」
子供達へ聞こえないようにレオがスティーブンへ話している間に、受け取った猫を地面に座り込んでいたザップに渡してやる。膝の上で鳴いた猫に正気を取り戻したのか猫を抱えて訳の分からない事を叫びながら立ち上がったザップは、しかし一応ちゃんと話は聞いていたのかヴェデットの子供へ礼を言って走り去っていった。
これでレオもシルビもお役御免だろう。
「それでは旦那様。私達もそろそろ」
「そうだね。明日もよろしく頼むよ」
「さよならおねーさんたち」
「おね……お兄さんなぁ。おやすみ。いい夢を」
「さよならー」
車で走り去っていくヴェデット親子を三人揃って軽く手を振りながら見送り、車がみえなくなったところでレオが疲れたように深く息を吐いた。
「あー、今日はもう疲れたー」
「俺は腹減ったなぁ。夕食食ってねぇよそういえばぁ」
薬局での仕事中は店長が働かないからシルビ一人で切り盛りしなければならず、客が多い時は食事を摂っている時間も無い。そして今日は客が多かった。
シルビが言ったせいでもないだろうが、レオの腹まで鳴って空腹を訴える。恥ずかしげに腹を押さえたレオに、どうせなら一緒に何処かで食べて帰るかと提案しようとしたところで、スティーブンがシルビ達を見た。
「良ければウチに寄ってくか? パーティの料理がまだ余ってるんだ。残飯処理じゃないが、どうせなら食べてくれた方が……」
「行きます!」
「早ぇなぁおい」
即答したレオと違い、シルビはそんな簡単にスティーブンの申し出を受け入れられない。何度も言うが彼との関係性がまだよく掴めないのだ。
スティーブンはシルビを見て笑った。
「嫌ならいいさ。別に無理強いはしないよ」
寂しげに。
「あー、……あー、行きます。ご馳走になります」
「おや、いいのかい?」
「貴方が思うほど、俺はメンタル強くねぇんですよ」
「……僕もさ」
スティーブンのマンションで、レオは気付かなかったがホームパーティが終わった後と言うわりに残っていた料理の数々。それから何故か外よりも僅かに冷たい部屋の温度に気付いたがスティーブンは何も言わない。
だからシルビも何も言わなかった。今話を掘り返して更に嫌われるのは御免だ。
「このローストビーフ美味いっすね!」
「レシピください。あとこっちのサラダのドレッシングってお手製ですか?」
「はは、レシピはあとでヴェデットに頼んでおくよ」
「オリエンタルショートヘアーだって」
「それよりレオ君はその顔平気なのかぁ?」
「シルビはやっぱザップさんと違うね!」
殴られでもしたのか顔を腫らしたレオと、泣きながら股間を押さえて仰け反っているザップという組み合わせは、正直普段であれば見慣れたものだが状況が分からない。
聞けばザップはセフレだか何だかに呪いを掛けられ、その呪いを解いて欲しければ居なくなった猫を探して来いという話で、レオはレオでゴロツキに絡まれたのだという。二人して乱れまくっているというか、世知辛い一日だったようだ。
「まぁ、とりあえずレオ君のその顔はどうにかしよう」
「オレもどうにかしてくれぇ……」
「はいはいザップさんはちょっと待ってろぉ」
レオの顔へ手を伸ばして指を鳴らす。途端に燃え上がった黄色い炎にレオが驚いていたが、火傷をするような炎でもないのでそのままレオの変形した頬へと押し当てた。
みるみるうちに治っていく顔の変形に、自分でも分かるのかレオが驚いている。もしかしてこれ説明しなけりゃいけねぇかと思ったが、終わってもレオは追求せずに御礼を言ってきただけだった。
次の問題は、とスクーターの荷台に座っていたザップを見れば、ザップは股間を押さえて顔の穴と言う穴から液体を零している。いったいどうすればこんな醜態を晒せるのかとそっちのほうが気になってしまった。
「というかHLって猫いるのかぁ?」
「いるよ。外から連れてくる人も居るみたいだし」
こんな異界と入り乱れた場所でも愛玩動物の需要はあるらしい。それとも食用だろうか。
どうも呼び捨てを許してからシルビへ敬語も使わなくなったレオは、『神々の義眼』を持っていても流石に見たことの無い猫は探せないらしい。かく言うシルビも『×××』が使えない現状、ハイ分かりましたと探してやる事も出来なかった。
かと言って、股間の呪いのほうも解く以前に解けるかどうか確かめる為に確認するのも嫌だ。何が楽しくて他人のイチモツを見なければならないのか。
だからもしかしたら解けるかもしれない事は隠しておく。
「チクショー……この能無しモン共めええぇええ……」
「人に助けを請う態度じゃねーよ」
「自業自得だなぁ。世界の為にムスコさん家出してもらえぇ」
「イヤだああぁあああぁあ」
「仕方ねぇなぁ。俺も探すの手伝うから、ほら、正気に戻りなさいってぇ」
地面に頭が付くほど仰け反っているザップの上半身を起こしてやり、スクーターの荷台のザップの更に後ろへ足を掛けた。つま先で引っかかっているような体勢だが、三人も乗っているスクーターからなら落ちても平気だろう。
「ああぁああああもーだめだー」
「ちょっ、ザップさん落ちる俺落ちるぅ! つか探せよアンタもぉ!」
「テメーだって呼んでるだけだろー」
「俺はこれで出てくるからいいんだよ! さっきからハズレばっかりだけどぉ」
シルビの動植物に好かれやすい体質は“残っていた”から、探し始めてからはそれを利用して猫を呼んでみていたものの、目的の猫は見つかっていなかった。オスの三毛猫は居たが今の目的ではないので帰ってもらっている。シルビが珍しがっているのを二人はどうでも良さげにしていたから、多分知らないのだろうが。
「もうザップさん捨てて探したほうが早ぇんじゃねぇ?」
「オレもそう思う! スピード出ねえじゃんこれじゃ! ……あれ?」
本来三人も乗せるなんて馬鹿げている乗り方でも、それなりのスピードが出ているこのスクーターは結構優秀かもしれない。走行中も時々猫が居ないかを確かめているシルビと違い、自分の事の癖にうだうだ泣き言をほざいているだけのザップを捨てる提案をしたところでレオが何かに気付いて声を上げた。
レオが見ているほうをシルビも見れば、知り合いなのか触手系の異界人の親子と談笑しているスティーブンの姿がある。夜風に当たりたくてちょっと散歩程度のラフな格好で、けれども別に酔っているとかそんな風ではない。
「おおなんだ。今日は夜遊びする知り合いの多い日だな」
「俺はバイト帰りなんですが。こんばんは」
停まったスクーターから降りて挨拶をする。シルビが降りた途端ザップがスクーターから落ちたが、ここまでの行ないで心配してやるつもりは無い。
「夜の散歩とは風情ですねぇ」
「ホームパーティが終わった後なんだ。ちょっと夜風に当たりたくてね」
欄干へ寄りかかっているスティーブンは、まだ少しどういう関係を築けばいいのか分かっていなかった。傍にいた触手系異界人が気まずげにしているのに振り向く。
「ああ、こちらはミセス・ヴェデット。うちの家政婦をやってくれているんだ」
「こんにちは。レオナルドです」
「シルビです」
「まあこんにちは」
「ミセス・ヴェデットは優秀でな」
「俺は自分の事は自分で全部出来る様に叩き込んだんで、家政婦さんを雇った事って無ぇんですけど……家政婦っていう職には興味あります。知ってます? 『家政婦は見た』」
「なんだいそれ?」
日本人なら内容は知らずともそのタイトルくらいは知っている人が多いドラマだが、当然だがスティーブンもレオも知らないらしい。店長はもしかしたら知っている。
ヴェデットへも知っているかと尋ねて、首を傾げあっている三人に、説明しようと口を開きかけると後ろでザップの叫び声が聞こえた。振り返ればヴェデットの子供が抱きかかえていた猫へ手を伸ばしながら泣いている。
「オレの、オレのっ、フリーダムマグナム!」
シルビはとりあえず無言でザップを蹴り飛ばした。その間に怯えていたヴェデットの子供が抱いていた猫をレオが確かめる。
「どうだぁ?」
「オリエンタルショートヘアーだ。でも……」
「名前はなんだっけぇ?」
「確かミザリアだったかな」
「……君がミザリアなら鳴いてくれるかぁ」
話しかけた途端甘えたような声で鳴いた猫に、どうやらビンゴだと悟った。猫を抱いたままの子供の傍へ行って、目線を合わせながら話しかける。
「その猫、君の猫?」
「ううん。……おねーさんの猫なのぉ?」
「おね……“お兄さん”の猫じゃねぇんだけど、飼い主に頼まれて探してた猫なんだぁ」
隣と後ろでレオとスティーブンが吹き出しかけていたが、今は怒るまい。ヴェデットの子供は抱えていた猫とシルビ達を交互に見やっていたが、やがて寂しそうながらも猫を差し出してきた。
「飼い主の人、寂しがってるもんねぇ」
「ありがとう。ほらザップさん、アンタもお礼言っとけぇ!」
「なんだ。ザップの頼みだったのか?」
「自業自得ですよ自業自得」
子供達へ聞こえないようにレオがスティーブンへ話している間に、受け取った猫を地面に座り込んでいたザップに渡してやる。膝の上で鳴いた猫に正気を取り戻したのか猫を抱えて訳の分からない事を叫びながら立ち上がったザップは、しかし一応ちゃんと話は聞いていたのかヴェデットの子供へ礼を言って走り去っていった。
これでレオもシルビもお役御免だろう。
「それでは旦那様。私達もそろそろ」
「そうだね。明日もよろしく頼むよ」
「さよならおねーさんたち」
「おね……お兄さんなぁ。おやすみ。いい夢を」
「さよならー」
車で走り去っていくヴェデット親子を三人揃って軽く手を振りながら見送り、車がみえなくなったところでレオが疲れたように深く息を吐いた。
「あー、今日はもう疲れたー」
「俺は腹減ったなぁ。夕食食ってねぇよそういえばぁ」
薬局での仕事中は店長が働かないからシルビ一人で切り盛りしなければならず、客が多い時は食事を摂っている時間も無い。そして今日は客が多かった。
シルビが言ったせいでもないだろうが、レオの腹まで鳴って空腹を訴える。恥ずかしげに腹を押さえたレオに、どうせなら一緒に何処かで食べて帰るかと提案しようとしたところで、スティーブンがシルビ達を見た。
「良ければウチに寄ってくか? パーティの料理がまだ余ってるんだ。残飯処理じゃないが、どうせなら食べてくれた方が……」
「行きます!」
「早ぇなぁおい」
即答したレオと違い、シルビはそんな簡単にスティーブンの申し出を受け入れられない。何度も言うが彼との関係性がまだよく掴めないのだ。
スティーブンはシルビを見て笑った。
「嫌ならいいさ。別に無理強いはしないよ」
寂しげに。
「あー、……あー、行きます。ご馳走になります」
「おや、いいのかい?」
「貴方が思うほど、俺はメンタル強くねぇんですよ」
「……僕もさ」
スティーブンのマンションで、レオは気付かなかったがホームパーティが終わった後と言うわりに残っていた料理の数々。それから何故か外よりも僅かに冷たい部屋の温度に気付いたがスティーブンは何も言わない。
だからシルビも何も言わなかった。今話を掘り返して更に嫌われるのは御免だ。
「このローストビーフ美味いっすね!」
「レシピください。あとこっちのサラダのドレッシングってお手製ですか?」
「はは、レシピはあとでヴェデットに頼んでおくよ」