―王様のレストランの王様―
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任されていたデザートを作っていると傍に料理長がやって来て、非常に残念だが客の一部があまりの美味にトランス状態へ陥り、とてもデザートまで食べられる状態ではなくなったらしかった。
料理を食べていた客があまりの美味しさにトランス状態へ陥ることは、このモルツォグァッツァではそう珍しいことではなく、故に食べて貰えない可能性の高いデザートを作る作業は比較的人気が無い。コース料理ではなくデザートだけを楽しむという客もいるので、そういう時のデザート作成は人気だが。
それもデザートへ至るまでの料理が美味しすぎるからである。むしろデザート直前まで耐えられた客もある意味では凄いと言ってもいい。
既に完成仕掛けている皿の上を見やって、シルビは少し残念に思った。
たまにこうして出てしまう食べて貰えない料理は、料理店なら当たり前だが良くて店員の賄いか悪くてそのまま廃棄である。
「まぁ、仕方ありませんねぇ」
「■■■。■■■■?」
「持って帰るにしたってせいぜい二人分でしょう? 本当はいけねぇことですしぃ」
「■■■■■■」
「ふふ、そうですねぇ」
料理長自ら『バレなければいい』というのは、茶目っ気のある話だ。無論本気に取るつもりはないが。ともあれ食べて貰える予定のあるデザートを完成させ、給仕が運んでいくのを見送った。
エントランスの方で起こった騒ぎは、たまたま騒ぎを聞きつけた数名の客が手を貸してくれて落着したらしい。騒ぎへ巻き込まれた受付担当と護衛が負傷したらしいが、厨房のメンバー曰く『美味いもの食えば治る!』『それもそうだな!』だった。
全ての怪我が美味しい物を食べるだけで治るのなら医者はいらない。身体へ活力を与えるという点では間違っていないが。
怪我をしたという事で他の給仕と交代して休憩室へいるらしかったので、シルビが仕事明けに残されたデザートを持って医務室へ寄れば、顔を半分喪失した受付担当や、肩が無くなっていた護衛が包帯グルグル巻きで落ち込んでいた。
「ああシルビさん。こんなお恥ずかしい姿で……」
「店を守ろうとした格好いい姿ですよ。これ、お客様に食べて貰えなかったデザートですが」
「ありがとうございます」
この店で働く者は自分の仕事に誇りを持ち過ぎだ。護衛の背後へ回って指を鳴らし、【晴の炎】で肩の再生を促していく。
「料理長も心配はしていましたから、ちゃんと病院へ行ってください」
本当に心配『は』していた。しかし心配しかしていなかったので、誰も様子を見に来たりはしない。そんな暇があったら料理を作る為に、体力回復の為に休むか料理を作り続ける奴らの集まりである。
だがシルビも騒動の最中で助けに行かなかったのだから、人のことは言えなかった。
料理を食べていた客があまりの美味しさにトランス状態へ陥ることは、このモルツォグァッツァではそう珍しいことではなく、故に食べて貰えない可能性の高いデザートを作る作業は比較的人気が無い。コース料理ではなくデザートだけを楽しむという客もいるので、そういう時のデザート作成は人気だが。
それもデザートへ至るまでの料理が美味しすぎるからである。むしろデザート直前まで耐えられた客もある意味では凄いと言ってもいい。
既に完成仕掛けている皿の上を見やって、シルビは少し残念に思った。
たまにこうして出てしまう食べて貰えない料理は、料理店なら当たり前だが良くて店員の賄いか悪くてそのまま廃棄である。
「まぁ、仕方ありませんねぇ」
「■■■。■■■■?」
「持って帰るにしたってせいぜい二人分でしょう? 本当はいけねぇことですしぃ」
「■■■■■■」
「ふふ、そうですねぇ」
料理長自ら『バレなければいい』というのは、茶目っ気のある話だ。無論本気に取るつもりはないが。ともあれ食べて貰える予定のあるデザートを完成させ、給仕が運んでいくのを見送った。
エントランスの方で起こった騒ぎは、たまたま騒ぎを聞きつけた数名の客が手を貸してくれて落着したらしい。騒ぎへ巻き込まれた受付担当と護衛が負傷したらしいが、厨房のメンバー曰く『美味いもの食えば治る!』『それもそうだな!』だった。
全ての怪我が美味しい物を食べるだけで治るのなら医者はいらない。身体へ活力を与えるという点では間違っていないが。
怪我をしたという事で他の給仕と交代して休憩室へいるらしかったので、シルビが仕事明けに残されたデザートを持って医務室へ寄れば、顔を半分喪失した受付担当や、肩が無くなっていた護衛が包帯グルグル巻きで落ち込んでいた。
「ああシルビさん。こんなお恥ずかしい姿で……」
「店を守ろうとした格好いい姿ですよ。これ、お客様に食べて貰えなかったデザートですが」
「ありがとうございます」
この店で働く者は自分の仕事に誇りを持ち過ぎだ。護衛の背後へ回って指を鳴らし、【晴の炎】で肩の再生を促していく。
「料理長も心配はしていましたから、ちゃんと病院へ行ってください」
本当に心配『は』していた。しかし心配しかしていなかったので、誰も様子を見に来たりはしない。そんな暇があったら料理を作る為に、体力回復の為に休むか料理を作り続ける奴らの集まりである。
だがシルビも騒動の最中で助けに行かなかったのだから、人のことは言えなかった。