―王様のレストランの王様―
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「『アカムツのブリュデホルフフラルトテャックソース』出来ましたぁ! お願いします!」
オーブンやレンジの熱と料理人が出す熱気とで非常に暑い厨房の一角で、シルビは皿へ盛り付けた料理を給仕へ運んでもらい、すぐに次の料理へと着手する。
異界と人界の両方から料理に関し、より高みを目指さんとする精鋭中の精鋭が集まり、多方面から味の頂を拓くべく研鑽の日々を送る者達が集う厨房だ。本来ならシルビのような家庭料理が出来る程度の者が居ていい場所ではないと思うのだが、料理長や何人かの料理人は最初からシルビを歓迎してくれていたので、バイトとはいえシルビもそれへ応えるべく真剣に働いている。
ヘルサレムズ・ロットでも超弩級の超高級レストランであり、味だけではなく格式やサービスも超一流と呼ばれるに相応しく、ヘルサレムズ・ロットの内外に関わらず世界を牛耳るVIPが常連として名を連ねてもいるらしい。
名前を『モルツォグァッツァ』という。
「そういや、今日知り合い達がこの店に来てるらしいんですよ」
「それはそれは、作り甲斐がおありでしょう」
「いえ、彼等には俺がここで料理作ってること教えてねぇんです」
食材を取り出す作業中に手伝ってくれた給仕と雑談すれば、彼はシルビと違って本職だからか心からそう思っているように微笑んだ。ここで働く者の根本的な信念は『より美味しい物を食べさせたい』の一つしかない。
「でもそうですねぇ。どうせなら美味しかったと思って帰って欲しいですねぇ」
シルビ自身もそうだが、自分達が作った料理を食べた者が、少しでも美味しいと幸せを感じられればいいと考えるのは料理をする者の性だろう。
ライブラのメンバーとフリージャ次期国王との宴席が、この『モルツォグァッツァ』で行われると聞いたのは、シルビがバイトを入れた数日後だった。そんな偶然もあるものだなと、宴席へ着ていくスーツの準備や作法の練習でてんやわんやだったレオ達を眺めていたものである。
「おい! 誰か手の空いてる奴いるか!? エントランスのほうで騒ぎがあったらしいぞ!」
「手の空いてる暇人などここにいるか! オレ達の使命は料理を作ることだ!」
「それもそうだな!」
厨房の熱気と器具を扱う騒音に紛れてそんな会話が聞こえた。
誰一人として厨房を出て様子を見に行こうとか助けに行こうという輩は居ない。そんな暇があったら少しでも美味い料理を作り上げることに命を懸けている。
厨房が襲撃されたら彼等は死ぬ気で応戦するのだろうなと、隣で食材の袋を抱えていた給仕と顔を見合わせ、シルビは苦笑した。
シルビも厨房まで侵入してきたら応戦しようとは思うが、エントランスへ向かおうとは思わない当たり、モルツォグァッツァへ毒されている様である。
オーブンやレンジの熱と料理人が出す熱気とで非常に暑い厨房の一角で、シルビは皿へ盛り付けた料理を給仕へ運んでもらい、すぐに次の料理へと着手する。
異界と人界の両方から料理に関し、より高みを目指さんとする精鋭中の精鋭が集まり、多方面から味の頂を拓くべく研鑽の日々を送る者達が集う厨房だ。本来ならシルビのような家庭料理が出来る程度の者が居ていい場所ではないと思うのだが、料理長や何人かの料理人は最初からシルビを歓迎してくれていたので、バイトとはいえシルビもそれへ応えるべく真剣に働いている。
ヘルサレムズ・ロットでも超弩級の超高級レストランであり、味だけではなく格式やサービスも超一流と呼ばれるに相応しく、ヘルサレムズ・ロットの内外に関わらず世界を牛耳るVIPが常連として名を連ねてもいるらしい。
名前を『モルツォグァッツァ』という。
「そういや、今日知り合い達がこの店に来てるらしいんですよ」
「それはそれは、作り甲斐がおありでしょう」
「いえ、彼等には俺がここで料理作ってること教えてねぇんです」
食材を取り出す作業中に手伝ってくれた給仕と雑談すれば、彼はシルビと違って本職だからか心からそう思っているように微笑んだ。ここで働く者の根本的な信念は『より美味しい物を食べさせたい』の一つしかない。
「でもそうですねぇ。どうせなら美味しかったと思って帰って欲しいですねぇ」
シルビ自身もそうだが、自分達が作った料理を食べた者が、少しでも美味しいと幸せを感じられればいいと考えるのは料理をする者の性だろう。
ライブラのメンバーとフリージャ次期国王との宴席が、この『モルツォグァッツァ』で行われると聞いたのは、シルビがバイトを入れた数日後だった。そんな偶然もあるものだなと、宴席へ着ていくスーツの準備や作法の練習でてんやわんやだったレオ達を眺めていたものである。
「おい! 誰か手の空いてる奴いるか!? エントランスのほうで騒ぎがあったらしいぞ!」
「手の空いてる暇人などここにいるか! オレ達の使命は料理を作ることだ!」
「それもそうだな!」
厨房の熱気と器具を扱う騒音に紛れてそんな会話が聞こえた。
誰一人として厨房を出て様子を見に行こうとか助けに行こうという輩は居ない。そんな暇があったら少しでも美味い料理を作り上げることに命を懸けている。
厨房が襲撃されたら彼等は死ぬ気で応戦するのだろうなと、隣で食材の袋を抱えていた給仕と顔を見合わせ、シルビは苦笑した。
シルビも厨房まで侵入してきたら応戦しようとは思うが、エントランスへ向かおうとは思わない当たり、モルツォグァッツァへ毒されている様である。