閑話16
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「へー、テンチョーさんってニューヨーク崩壊前から住んでたんすか」
「おうよ。店は三年前からだがな」
作り置きしていた杏仁豆腐につまみ食いの跡がある事に気付いて、店長の分だけ少な目に盛りつけしたデザートを持って夕食の席へ戻れば、親子丼を食べていたザップと店長がそんな話をしていた。
「前はこれでもブラッドベリ総合病院の薬局長よ。ま、あの病院も大崩落に飲まれちまったみてーだがな」
勤めていた仕事場がなくなっても、危険極まりないこの街へ残った理由はシルビには分からないが、なんとなく未練があるのだろう事は店長の表情から悟る。そうでなくともこの街へ住む人間はそういった未練持ちも多い。
以前に言っていた『分かればいい』という話は、もしかしたらその病院で勤めていた誰かに見つけてほしいとか、そういうことなのだろうか。もう三年も経って、それだけの時間があれば当然見つけて欲しい人へ見つけてもらえもする筈なのに。
異界人とも積極的に接触していたのも、その病院の情報を得ようとしていたのかも知れない。
いや、その割には楽しんでいたからそれは素だろう。かつて勤めていた病院の情報を求めている過程で、異界人との交流が楽しくなった口だ。
聞いていなかった振りをしてテーブルへデザートの杏仁豆腐を置く。さりげなく、量を減らした皿は自分の場所へ置いて席へ着けば、二人は何事もなかったかの如く美味い美味いと言いながら杏仁豆腐を食べ始めた。
シルビよりはヘルサレムズ・ロットでの暮らしが長い二人にとっては、その程度の話は些細な雑談なのだろう。
「おまえ等なんか三年前の大崩落ん時ってぇと、まだ若造もいいとこだったろ。見てたか大崩落? だいぶ地獄だぜありゃ」
「相当酷かったらしーっすね。シルビはテレビで見てた口か?」
急に話を振られて、杏仁豆腐の上のクコの実をスプーンへ乗せたところだった手を止める。
「……三年前は自宅療養中で寝たきりだったから、大崩落の話はあまり聞かせて貰えなかったんだぁ」
「あ? 自宅療養って病気だったのか?」
「どっちかっていうと、怪我ぁ?」
眼を奪われて今よりも少なかった頃。外国の一都市の大崩落など、とシルビを心配させないようにだろうが誰もが教えてくれなかった。
そんな街に現在、シルビだけが居るというのも笑える話である。
「ところで店長。念の為言っておきますが、リクエストされて作りましたけど杏仁豆腐は和食じゃねぇですから」
「はぁん!?」
「あ、それオレも思った」
「マジかよ! ジャパニーズスイーツじゃねーのかよ!」
「おうよ。店は三年前からだがな」
作り置きしていた杏仁豆腐につまみ食いの跡がある事に気付いて、店長の分だけ少な目に盛りつけしたデザートを持って夕食の席へ戻れば、親子丼を食べていたザップと店長がそんな話をしていた。
「前はこれでもブラッドベリ総合病院の薬局長よ。ま、あの病院も大崩落に飲まれちまったみてーだがな」
勤めていた仕事場がなくなっても、危険極まりないこの街へ残った理由はシルビには分からないが、なんとなく未練があるのだろう事は店長の表情から悟る。そうでなくともこの街へ住む人間はそういった未練持ちも多い。
以前に言っていた『分かればいい』という話は、もしかしたらその病院で勤めていた誰かに見つけてほしいとか、そういうことなのだろうか。もう三年も経って、それだけの時間があれば当然見つけて欲しい人へ見つけてもらえもする筈なのに。
異界人とも積極的に接触していたのも、その病院の情報を得ようとしていたのかも知れない。
いや、その割には楽しんでいたからそれは素だろう。かつて勤めていた病院の情報を求めている過程で、異界人との交流が楽しくなった口だ。
聞いていなかった振りをしてテーブルへデザートの杏仁豆腐を置く。さりげなく、量を減らした皿は自分の場所へ置いて席へ着けば、二人は何事もなかったかの如く美味い美味いと言いながら杏仁豆腐を食べ始めた。
シルビよりはヘルサレムズ・ロットでの暮らしが長い二人にとっては、その程度の話は些細な雑談なのだろう。
「おまえ等なんか三年前の大崩落ん時ってぇと、まだ若造もいいとこだったろ。見てたか大崩落? だいぶ地獄だぜありゃ」
「相当酷かったらしーっすね。シルビはテレビで見てた口か?」
急に話を振られて、杏仁豆腐の上のクコの実をスプーンへ乗せたところだった手を止める。
「……三年前は自宅療養中で寝たきりだったから、大崩落の話はあまり聞かせて貰えなかったんだぁ」
「あ? 自宅療養って病気だったのか?」
「どっちかっていうと、怪我ぁ?」
眼を奪われて今よりも少なかった頃。外国の一都市の大崩落など、とシルビを心配させないようにだろうが誰もが教えてくれなかった。
そんな街に現在、シルビだけが居るというのも笑える話である。
「ところで店長。念の為言っておきますが、リクエストされて作りましたけど杏仁豆腐は和食じゃねぇですから」
「はぁん!?」
「あ、それオレも思った」
「マジかよ! ジャパニーズスイーツじゃねーのかよ!」