―Day In Day Out―
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「はい。一日五食に合わせて食後に三錠。お大事に」
「よーネエチャン! 風邪引いちゃって震えが止まんなくてよー。アンタの身体でぇえええ!」
「――震える身体が無くなりゃ平気だなぁ。良かった良かった一昨日来やがれぇえええええ!」
指を鳴らして幻覚の炎で燃やした客が店の外へと逃げ出していく。薬の処方を待っていた他の客がそれを見て爆笑し過ぎて咳き込んでいた。
シルビが副業で勤め始めた薬局『WATABEドラッグストア』は、異次元と交じり合った都市ヘルサレムズ・ロットへある店である。
ヘルサレムズ・ロットの薬局は異界と交じり合っているが故に客の種類も多彩で、人類にだけではなく異界の者へも効く薬を作らねばならない。そういう点では現在『×××』が上手く使えないシルビも未熟者扱いかと思ったのだが、意外にも【白澤】だった頃に営んでいた漢方薬屋での経験で全てがどうにかなった。
やはり知識は溜め込むだけでは駄目である。というか普通は、鬼や天女へ効く薬を作れるスキルを思っているほうがおかしいという事か。
今日も今日とて朝に『復讐者』として提携を組んでいる秘密結社ライブラの事務所へ顔を出し、世界の危機的騒動も無かったのでこちらへ来たのである。何かあれば呼び出されるのだが、今日は今のところ呼び出されていなかった。
「はい。こちらのクリームはお風呂上りに薄く伸ばしながら塗ってくださいね。お大事にぃ」
「このお店は夜遅くまで開いてるから助かるわ。どうもありがとう」
ほのぼのと微笑んだ客が礼を言って店を出て行く。どう考えてもカマキリみたいな顔だが手は別にカマではなかった。その客を見送って時間を確認すれば、もう夜もそれなりな店仕舞いの時間である。
裏の住居部になっている部屋に行けば、この店の店長であるワタベが相変わらず日本の時代劇のDVDを観賞していた。
「飽きねぇんですか」
「飽きたら見てねえ。……もうそんな時間か」
時計を見上げてシルビを振り返った店長が近くにあったせんべいを手に取る。
「今日は客が多かったな。飯食ってねえだろ」
「一度も店に出てねぇのによく分かりますねぇ」
「馬鹿ヤロウ。ニンジャは気配で全部を察知してんだぞ」
「アンタは忍者じゃなくて薬局の店長だろぉ」
「分かってねえなー。ニンジャは普段は一般人を装って情報収集とかオンミツ行動してんだ。普段はごく普通の生活送ってんだよ」
シルビも秘密結社で同じ事をしていると言ったらこいつはどうするつもりなのか。
無駄話をしている気分にもなれなかったので、店を閉めた報告をして帰りの支度をする。店を出る前に店長を見たら間違って借りたらしい『学校の怪談』を観始めていた。きっと店長はあれが時代劇ではないことも子供向けとはいえ恐怖映画であることも知らない。
何も言わずに店を出て、HLの地理を覚える為に遠回りしながら道を歩いていると、直ぐ横の道路を変な二人乗りをしたスクーターがシルビを追い越していって停まった。
「よーネエチャン! 風邪引いちゃって震えが止まんなくてよー。アンタの身体でぇえええ!」
「――震える身体が無くなりゃ平気だなぁ。良かった良かった一昨日来やがれぇえええええ!」
指を鳴らして幻覚の炎で燃やした客が店の外へと逃げ出していく。薬の処方を待っていた他の客がそれを見て爆笑し過ぎて咳き込んでいた。
シルビが副業で勤め始めた薬局『WATABEドラッグストア』は、異次元と交じり合った都市ヘルサレムズ・ロットへある店である。
ヘルサレムズ・ロットの薬局は異界と交じり合っているが故に客の種類も多彩で、人類にだけではなく異界の者へも効く薬を作らねばならない。そういう点では現在『×××』が上手く使えないシルビも未熟者扱いかと思ったのだが、意外にも【白澤】だった頃に営んでいた漢方薬屋での経験で全てがどうにかなった。
やはり知識は溜め込むだけでは駄目である。というか普通は、鬼や天女へ効く薬を作れるスキルを思っているほうがおかしいという事か。
今日も今日とて朝に『復讐者』として提携を組んでいる秘密結社ライブラの事務所へ顔を出し、世界の危機的騒動も無かったのでこちらへ来たのである。何かあれば呼び出されるのだが、今日は今のところ呼び出されていなかった。
「はい。こちらのクリームはお風呂上りに薄く伸ばしながら塗ってくださいね。お大事にぃ」
「このお店は夜遅くまで開いてるから助かるわ。どうもありがとう」
ほのぼのと微笑んだ客が礼を言って店を出て行く。どう考えてもカマキリみたいな顔だが手は別にカマではなかった。その客を見送って時間を確認すれば、もう夜もそれなりな店仕舞いの時間である。
裏の住居部になっている部屋に行けば、この店の店長であるワタベが相変わらず日本の時代劇のDVDを観賞していた。
「飽きねぇんですか」
「飽きたら見てねえ。……もうそんな時間か」
時計を見上げてシルビを振り返った店長が近くにあったせんべいを手に取る。
「今日は客が多かったな。飯食ってねえだろ」
「一度も店に出てねぇのによく分かりますねぇ」
「馬鹿ヤロウ。ニンジャは気配で全部を察知してんだぞ」
「アンタは忍者じゃなくて薬局の店長だろぉ」
「分かってねえなー。ニンジャは普段は一般人を装って情報収集とかオンミツ行動してんだ。普段はごく普通の生活送ってんだよ」
シルビも秘密結社で同じ事をしていると言ったらこいつはどうするつもりなのか。
無駄話をしている気分にもなれなかったので、店を閉めた報告をして帰りの支度をする。店を出る前に店長を見たら間違って借りたらしい『学校の怪談』を観始めていた。きっと店長はあれが時代劇ではないことも子供向けとはいえ恐怖映画であることも知らない。
何も言わずに店を出て、HLの地理を覚える為に遠回りしながら道を歩いていると、直ぐ横の道路を変な二人乗りをしたスクーターがシルビを追い越していって停まった。