閑話
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「眼が見てぇ」
「は?」
思いっきり訝しげな顔で見られたライブラ事務所の午前中。
先日のライブラメンバーによる歓迎会の最中に、まだ会っていなかった構成員との挨拶やそれぞれの能力の説明を受けた。無論シルビもその時に大まかではあるが自分が出来ることの説明をしている。とはいえシルビは今回『復讐者』として来ているので、殆ど第八の炎による『空間転移』の説明で終わってしまった。
そうして知った事だが、レオナルドの目は『神々の義眼』なのだという。
「いやぁ『義眼』とはいえ『神々の』ものだろぉ? 一体何が出来るのかとか気になるんだぁ」
「だからってオレを壁に追い詰めるのは間違ってるっ!」
シルビより背の低いのをいいことに壁へと追い詰めてみたが、実のところ途中からレオナルドの反応の方が面白かった。
初めて会った時に感じた感覚は、彼の眼が『神々の義眼』だったからなのだろう。神々の、と付く通りシルビの『眼』と似通った部分があるのかもしれない。生憎シルビは異界のモノへ然程興味を持っていなかったので、そんなモノがあるという事も知らなかった。
いや、知り合いの誰かしらは知っていた可能性もあるが。
「別に抉り取るとかはしねぇから、ちょっと見せてくれりゃいいからさぁ」
「いーやーだっ! ギルベルトさん助けてください!」
「仲が宜しいのですね」
「あれ助けてくれない!?」
顔を包帯で覆ったクラウス付きの執事らしいギルベルトは、微笑ましいものでも見るような顔でさっさと立ち去ってしまった。助けが来ない事を悟って肩を落とすレオナルドの顎を掴んで、自分の方へと顔を向けさせる。
「う、ぁ」
「眼を見開いてくれねぇ? 十秒くらいでいいから」
「近い近い!」
恥ずかしがって顔を赤くしながら逃げるように顔を逸らそうとするレオナルドに、さっさと十秒我慢すればいいのにと思わなくも無い。シルビとしては、小一時間は観察してみたいのに十秒だけと譲歩しているつもりだ。
それかレオナルドが口頭で説明してくれれば、今はそれで済む話でもある。だがレオナルドはそれに気付いていない。
「いい加減に――しろっ!」
怒ったのかシルビを見つめ返したレオナルドが眼を見開く。仄かに青く発光している人の目とは違うソレがシルビを映し、その光と同じ青色をした立体画面の様なものが浮かび上がった。
それが科学的にも魔術的にも何重にも組み立てられた魔方陣だと気付いた時には、視界が激しく揺れる。誰が見ているのかも分からない光景が混ざり合う視界に、思わず眼へ力を入れるように細めてレオナルドを見るが、レオナルドはレオナルドでそんなシルビの反応に驚いていた。
「え、あれ?」
「……っ」
「あ、ごめん! いやシルビさんが悪い! んだけど……」
レオナルドから手を離して目許を押さえる。レオナルドは流石にやり過ぎたとばかりにシルビを心配しているが、シルビが思ったのは別の事だ。
目許から手を離して顔を上げ、まだ眼を見開いていたレオナルドへ再び今度は両手を伸ばして顔を押さえつける。そうして青く発光している眼を覗き込んだ。
ごく小さな文字列だが、コレは確実に魔術回路と電気信号の組み合わせである。『義眼』であるからにはこれを作った存在が居るわけで、だとすればその存在は非常に厄介だろう。
人間の目の大きさのそれに、こんなものを何重にも書き込むのだから。
「……負担軽減の呪文列が少ねぇけど、干渉出来ねぇ訳じゃない?」
「!?」
「よく見えねぇなぁ。レオナルド君もうちょっと右に首傾けて……」
「いや、待っ……」
「あっコラ、眼を閉じんじゃねぇ」
「待って……」
「こじ開けられてえぇのかぁ? もう一回――」
「――シルビッ!」
至近距離で怒鳴られて流石に驚き身を離す。レオは顔を赤くして息も荒くしながら、薄く眼を開けてシルビを睨んでいた。
「……あー、ごめん」
「ごめんで済んだら世界は平和だよ!」
「ごめんなさい」
「いや言い方を丁寧にすればいいって話でもないし。ってか、義眼について何か知ってんの!?」
さっきとは逆にレオナルドのほうがシルビへ詰め寄ってくる。しかし『神々の義眼』についてなんて殆ど知らない。
「知らねぇけど?」
「だって今!」
「それは見て分かっただけで知ってる事は何も無ぇんだよ。せいぜい魔術回路の数本がどんな意味を成してるのかが分かるくらいで」
それでもたった数本だ。もし『×××』が使えたならそれらも理解できただろうが、今は魔術回路が走っているということくらいで限度である。
つくづく便利な能力だったのだなと思うのは、『×××』が使えなくなってから道に迷う事が増えたからだろうか。実は方向音痴だったのかと悩んだが、昔はそんな事がなかったのでおそらく単に利便性に慣れてしまったのだろう。
「義眼について何か知りてぇことがあったのかぁ?」
「あ……うん。でも……そっか。分かんないか」
落ち込んでしまったレオナルドにどう声を掛けたものか悩んで、シルビは結局レオナルドの頭を撫でた。何事かと顔を上げるレオナルドの顔をまた掴んで顔を覗き込む。
「シルビ、さん?」
「呼び捨てでいいぜぇ。俺もレオって呼ばせてもらうから」
今度は眼を見開くことなく、けれどもうろたえながらレオナルドがシルビを見返す。
「詳しい事は知らねぇけど、気になるのなら俺も知り合いとかに聞いて調べてみるよ。だから落ち込むのは止めなさい」
「なんかいい事言ってる雰囲気だけど、だから近いって!」
「そうかぁ?」
「は?」
思いっきり訝しげな顔で見られたライブラ事務所の午前中。
先日のライブラメンバーによる歓迎会の最中に、まだ会っていなかった構成員との挨拶やそれぞれの能力の説明を受けた。無論シルビもその時に大まかではあるが自分が出来ることの説明をしている。とはいえシルビは今回『復讐者』として来ているので、殆ど第八の炎による『空間転移』の説明で終わってしまった。
そうして知った事だが、レオナルドの目は『神々の義眼』なのだという。
「いやぁ『義眼』とはいえ『神々の』ものだろぉ? 一体何が出来るのかとか気になるんだぁ」
「だからってオレを壁に追い詰めるのは間違ってるっ!」
シルビより背の低いのをいいことに壁へと追い詰めてみたが、実のところ途中からレオナルドの反応の方が面白かった。
初めて会った時に感じた感覚は、彼の眼が『神々の義眼』だったからなのだろう。神々の、と付く通りシルビの『眼』と似通った部分があるのかもしれない。生憎シルビは異界のモノへ然程興味を持っていなかったので、そんなモノがあるという事も知らなかった。
いや、知り合いの誰かしらは知っていた可能性もあるが。
「別に抉り取るとかはしねぇから、ちょっと見せてくれりゃいいからさぁ」
「いーやーだっ! ギルベルトさん助けてください!」
「仲が宜しいのですね」
「あれ助けてくれない!?」
顔を包帯で覆ったクラウス付きの執事らしいギルベルトは、微笑ましいものでも見るような顔でさっさと立ち去ってしまった。助けが来ない事を悟って肩を落とすレオナルドの顎を掴んで、自分の方へと顔を向けさせる。
「う、ぁ」
「眼を見開いてくれねぇ? 十秒くらいでいいから」
「近い近い!」
恥ずかしがって顔を赤くしながら逃げるように顔を逸らそうとするレオナルドに、さっさと十秒我慢すればいいのにと思わなくも無い。シルビとしては、小一時間は観察してみたいのに十秒だけと譲歩しているつもりだ。
それかレオナルドが口頭で説明してくれれば、今はそれで済む話でもある。だがレオナルドはそれに気付いていない。
「いい加減に――しろっ!」
怒ったのかシルビを見つめ返したレオナルドが眼を見開く。仄かに青く発光している人の目とは違うソレがシルビを映し、その光と同じ青色をした立体画面の様なものが浮かび上がった。
それが科学的にも魔術的にも何重にも組み立てられた魔方陣だと気付いた時には、視界が激しく揺れる。誰が見ているのかも分からない光景が混ざり合う視界に、思わず眼へ力を入れるように細めてレオナルドを見るが、レオナルドはレオナルドでそんなシルビの反応に驚いていた。
「え、あれ?」
「……っ」
「あ、ごめん! いやシルビさんが悪い! んだけど……」
レオナルドから手を離して目許を押さえる。レオナルドは流石にやり過ぎたとばかりにシルビを心配しているが、シルビが思ったのは別の事だ。
目許から手を離して顔を上げ、まだ眼を見開いていたレオナルドへ再び今度は両手を伸ばして顔を押さえつける。そうして青く発光している眼を覗き込んだ。
ごく小さな文字列だが、コレは確実に魔術回路と電気信号の組み合わせである。『義眼』であるからにはこれを作った存在が居るわけで、だとすればその存在は非常に厄介だろう。
人間の目の大きさのそれに、こんなものを何重にも書き込むのだから。
「……負担軽減の呪文列が少ねぇけど、干渉出来ねぇ訳じゃない?」
「!?」
「よく見えねぇなぁ。レオナルド君もうちょっと右に首傾けて……」
「いや、待っ……」
「あっコラ、眼を閉じんじゃねぇ」
「待って……」
「こじ開けられてえぇのかぁ? もう一回――」
「――シルビッ!」
至近距離で怒鳴られて流石に驚き身を離す。レオは顔を赤くして息も荒くしながら、薄く眼を開けてシルビを睨んでいた。
「……あー、ごめん」
「ごめんで済んだら世界は平和だよ!」
「ごめんなさい」
「いや言い方を丁寧にすればいいって話でもないし。ってか、義眼について何か知ってんの!?」
さっきとは逆にレオナルドのほうがシルビへ詰め寄ってくる。しかし『神々の義眼』についてなんて殆ど知らない。
「知らねぇけど?」
「だって今!」
「それは見て分かっただけで知ってる事は何も無ぇんだよ。せいぜい魔術回路の数本がどんな意味を成してるのかが分かるくらいで」
それでもたった数本だ。もし『×××』が使えたならそれらも理解できただろうが、今は魔術回路が走っているということくらいで限度である。
つくづく便利な能力だったのだなと思うのは、『×××』が使えなくなってから道に迷う事が増えたからだろうか。実は方向音痴だったのかと悩んだが、昔はそんな事がなかったのでおそらく単に利便性に慣れてしまったのだろう。
「義眼について何か知りてぇことがあったのかぁ?」
「あ……うん。でも……そっか。分かんないか」
落ち込んでしまったレオナルドにどう声を掛けたものか悩んで、シルビは結局レオナルドの頭を撫でた。何事かと顔を上げるレオナルドの顔をまた掴んで顔を覗き込む。
「シルビ、さん?」
「呼び捨てでいいぜぇ。俺もレオって呼ばせてもらうから」
今度は眼を見開くことなく、けれどもうろたえながらレオナルドがシルビを見返す。
「詳しい事は知らねぇけど、気になるのなら俺も知り合いとかに聞いて調べてみるよ。だから落ち込むのは止めなさい」
「なんかいい事言ってる雰囲気だけど、だから近いって!」
「そうかぁ?」