―The Outlaw of Green―
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クラウスと一緒に九頭見会の事務所を出て階段を降りて行けば、往来はクラウスが暴れた騒動によって多くの野次馬が集まっていた。異界人と人類とが入り乱れて、乱闘があったと思われる建物から出てきたシルビ達を伺っている。
その人混みを掻き分けて前へと飛び出してきた“先生”の姿に、クラウスがシルビの抱いていたメイヴィの背を軽く叩いた。その振動で振り返ったメイヴィが先生を視界へ入れて、シルビが彼女を助けてから初めてその目に涙を溢れさせる。
しゃがんで降ろせば脇目も振らずに先生と駆け寄り、しがみ付く少女を先生のほうも泣きながら抱き締めた。
「負い目ある子供一人守れんで、何が極道じゃ……!」
ひきつる様なその叫びに、シルビは冷静にこの男はやっぱりヤクザだったのかと納得する。納得こそすれ、シルビには今の彼から何かを追求する気にはなれない。緑の目の化け物の話も彼へ聞けば分かるのだろうが、今は流石にそんな無粋な発言は出来なかった。
だって彼は悔いている。極道になった事になのか、はたまた別の何かになのかはシルビには分からないが、きっとこの人は裏社会で生きるには少しばかり優しすぎたのだろう。
遠くから聞こえてくるパトカーのサイレンの音に、周囲の野次馬が慌てて散開していく。クラウスが遠くに見えたランプを見やってから先生と少女を見下ろした。しかし言葉を掛けることは無い。
後は彼らの問題だ。それが分かっていたからシルビも何も言わなかった。
代わりにクラウスの腕を掴み、少し離れた場所へ見えたスティーブンの乗る車へ向かって走り出す。
「戻ったらその怪我治療しますからね」
「う、うむ」
「こっちだ。二人とも」
窓から片手を出したスティーブンが呼ぶのに、シルビはクラウスの腕を掴んで走る足を速めた。警察のサイレンが九頭見会の事務所の前に到着したのを背後に確認しながら、クラウスを車に押し込んで、その隣へ乗り込む。やってきた警察の向こうに、先生と少女の姿は見えなくなっていた。
「――全く。やりすぎだよ」
走らせだした車の運転席からスティーブンがクラウスへ話しかける。
「九頭見会もさぞやビックリした事だろう。事実上解散だねあれじゃ」
そして九頭見会の持っていた縄張りの奪い合いが起こるのだろう。このまま滑塵組が吸収ということだけは無いだろうから、暫くはその奪い合いで勃発するだろう騒ぎに忙しくなるかもしれない。
遠ざかる現場を振り返って眺めていれば、隣でクラウスが申し訳無さそうに身を縮こまらせた。
「……奴らは彼女の、大切な花を踏みにじったのだ」
それは極道同士の抗争とかライブラが問題視していた緑の目の化け物とか、そういったものとは全く関係ない理由で。
バックミラー越しにスティーブンが目許を緩めたのが見えた。それを見て直ぐに鏡越しに目が合い、シルビも笑みを浮かべてしまう。
「違うよ。単独で突っ込むなんていくら君でも無茶だって話。次からは呼んでくれ」
「出来れば怪我も程ほどにしてくださいね」
「う……ああ。……すまない」
本当にすまなそうにするクラウスはだからシルビが弱いタイプであり、どうやらスティーブンも同じようだった。
その人混みを掻き分けて前へと飛び出してきた“先生”の姿に、クラウスがシルビの抱いていたメイヴィの背を軽く叩いた。その振動で振り返ったメイヴィが先生を視界へ入れて、シルビが彼女を助けてから初めてその目に涙を溢れさせる。
しゃがんで降ろせば脇目も振らずに先生と駆け寄り、しがみ付く少女を先生のほうも泣きながら抱き締めた。
「負い目ある子供一人守れんで、何が極道じゃ……!」
ひきつる様なその叫びに、シルビは冷静にこの男はやっぱりヤクザだったのかと納得する。納得こそすれ、シルビには今の彼から何かを追求する気にはなれない。緑の目の化け物の話も彼へ聞けば分かるのだろうが、今は流石にそんな無粋な発言は出来なかった。
だって彼は悔いている。極道になった事になのか、はたまた別の何かになのかはシルビには分からないが、きっとこの人は裏社会で生きるには少しばかり優しすぎたのだろう。
遠くから聞こえてくるパトカーのサイレンの音に、周囲の野次馬が慌てて散開していく。クラウスが遠くに見えたランプを見やってから先生と少女を見下ろした。しかし言葉を掛けることは無い。
後は彼らの問題だ。それが分かっていたからシルビも何も言わなかった。
代わりにクラウスの腕を掴み、少し離れた場所へ見えたスティーブンの乗る車へ向かって走り出す。
「戻ったらその怪我治療しますからね」
「う、うむ」
「こっちだ。二人とも」
窓から片手を出したスティーブンが呼ぶのに、シルビはクラウスの腕を掴んで走る足を速めた。警察のサイレンが九頭見会の事務所の前に到着したのを背後に確認しながら、クラウスを車に押し込んで、その隣へ乗り込む。やってきた警察の向こうに、先生と少女の姿は見えなくなっていた。
「――全く。やりすぎだよ」
走らせだした車の運転席からスティーブンがクラウスへ話しかける。
「九頭見会もさぞやビックリした事だろう。事実上解散だねあれじゃ」
そして九頭見会の持っていた縄張りの奪い合いが起こるのだろう。このまま滑塵組が吸収ということだけは無いだろうから、暫くはその奪い合いで勃発するだろう騒ぎに忙しくなるかもしれない。
遠ざかる現場を振り返って眺めていれば、隣でクラウスが申し訳無さそうに身を縮こまらせた。
「……奴らは彼女の、大切な花を踏みにじったのだ」
それは極道同士の抗争とかライブラが問題視していた緑の目の化け物とか、そういったものとは全く関係ない理由で。
バックミラー越しにスティーブンが目許を緩めたのが見えた。それを見て直ぐに鏡越しに目が合い、シルビも笑みを浮かべてしまう。
「違うよ。単独で突っ込むなんていくら君でも無茶だって話。次からは呼んでくれ」
「出来れば怪我も程ほどにしてくださいね」
「う……ああ。……すまない」
本当にすまなそうにするクラウスはだからシルビが弱いタイプであり、どうやらスティーブンも同じようだった。