閑話8
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チェイン視点
「いやぁもう、やりがいがありましたねぇ」
そう言って綺麗になったチェインの部屋を見回して、シルビは捲くっていた袖を下ろした。
某国でのミサイル弾頭破壊作戦の際、チェインが【存在希釈】をし過ぎた事によって存在を戻す為に使われた、『スティーブンが急にチェインの(汚い)部屋へ来る』という符牒が正確に機能したのはまだ記憶に新しい。憧れの人へ自堕落な汚い部屋を見られたくないという羞恥心を利用した、チェインにとってはある意味捨て身の符牒だった。
無論その符牒はそのまま再び使う事だって出来ない事は無かったのだが、符牒として使い続けるにしても流石に一度掃除しなさいと人狼局の先輩であるエメ姐に言われてしまったのである。
だがそこは符牒に組み込んで考えるほどチェインは掃除の出来ない女な訳で。
「何が多かったって酒瓶ですよチェインさん。酒瓶無けりゃもう少しマシでしたよ」
「お酒好きなの」
「可愛く言っても駄目ですぅ」
『家族に潔癖症が居る』らしいシルビに手伝いを頼んだのは、殆ど何も考えの無い行動だった。チェインが世界から居なくなったという事実を何故か覚えていたらしいシルビは、チェインへ向けて堂々と心配なのだと言ってのけた男である。
ライブラという同じ組織に属しているが親しさで言えば普通で、チェインはその時までシルビのことをただ自分と同じ派遣構成員だと思っていた程度だった。
『自分の中から誰かの記憶が消えていく感覚がどんなに怖ぇか分かりますか?』
感情に任せてとばかりに言われたその言葉の意味を、チェインは未だによく分からない。けれどもその言葉の通りシルビが誰かが消えていく事を認識していたのだとしたら、悪い事をしたなとは思った。詳しくは無いが普通人狼が希釈しすぎて消える際は、誰も何が消えたのか分からないらしい。だがシルビはそれを覚えているのだろう。何故か。
綺麗になった部屋の、ゴミが落ちていない床を久しぶりに見た気がする。この部屋本当はこんなに広かったのかと感動すらちょっと覚えた。
その中心で最後のゴミを収めたゴミ袋の封を縛っていたシルビがチェインを振り返る。
「コレ捨てたら、何か食べに行きましょうか。チェインさんも疲れたでしょう?」
「あんまり疲れてないかな。殆どシルビがやってたし」
シルビに掃除を手伝ってもらったのは、何も考えてなかったからだ。手伝いを頼んだシルビは少しだけ驚いた後やっぱり微笑んで『俺のこと男だと思ってねぇでしょうマジで』と言ってきて、チェインはやっとスティーブンには見せたくなかった部屋をシルビには掃除させようとしている自分に気付いた。
恥ずかしくなかった訳ではない。ただシルビになら、見られても怒られたり失望されたりはしないなと、漠然と信用していたのだろう。既に、存在を希釈する前から。
そしてシルビは案の定チェインのゴミだらけの部屋を見ても、ちょっと笑っただけだった。
「じゃあ腹減ってたり」
「それはしてる」
「何食べましょうか。俺中華がいいと思ってるんですけど」
ゴミ袋を提げて玄関へ向かうシルビの後を追いかける。
「シルビ。ありがとう」
「今後は酒瓶出来るだけ飲んだら直ぐに捨てましょうねぇ」
「……そういう意味じゃないんだけど」
「ふふ、冗談です」
「いやぁもう、やりがいがありましたねぇ」
そう言って綺麗になったチェインの部屋を見回して、シルビは捲くっていた袖を下ろした。
某国でのミサイル弾頭破壊作戦の際、チェインが【存在希釈】をし過ぎた事によって存在を戻す為に使われた、『スティーブンが急にチェインの(汚い)部屋へ来る』という符牒が正確に機能したのはまだ記憶に新しい。憧れの人へ自堕落な汚い部屋を見られたくないという羞恥心を利用した、チェインにとってはある意味捨て身の符牒だった。
無論その符牒はそのまま再び使う事だって出来ない事は無かったのだが、符牒として使い続けるにしても流石に一度掃除しなさいと人狼局の先輩であるエメ姐に言われてしまったのである。
だがそこは符牒に組み込んで考えるほどチェインは掃除の出来ない女な訳で。
「何が多かったって酒瓶ですよチェインさん。酒瓶無けりゃもう少しマシでしたよ」
「お酒好きなの」
「可愛く言っても駄目ですぅ」
『家族に潔癖症が居る』らしいシルビに手伝いを頼んだのは、殆ど何も考えの無い行動だった。チェインが世界から居なくなったという事実を何故か覚えていたらしいシルビは、チェインへ向けて堂々と心配なのだと言ってのけた男である。
ライブラという同じ組織に属しているが親しさで言えば普通で、チェインはその時までシルビのことをただ自分と同じ派遣構成員だと思っていた程度だった。
『自分の中から誰かの記憶が消えていく感覚がどんなに怖ぇか分かりますか?』
感情に任せてとばかりに言われたその言葉の意味を、チェインは未だによく分からない。けれどもその言葉の通りシルビが誰かが消えていく事を認識していたのだとしたら、悪い事をしたなとは思った。詳しくは無いが普通人狼が希釈しすぎて消える際は、誰も何が消えたのか分からないらしい。だがシルビはそれを覚えているのだろう。何故か。
綺麗になった部屋の、ゴミが落ちていない床を久しぶりに見た気がする。この部屋本当はこんなに広かったのかと感動すらちょっと覚えた。
その中心で最後のゴミを収めたゴミ袋の封を縛っていたシルビがチェインを振り返る。
「コレ捨てたら、何か食べに行きましょうか。チェインさんも疲れたでしょう?」
「あんまり疲れてないかな。殆どシルビがやってたし」
シルビに掃除を手伝ってもらったのは、何も考えてなかったからだ。手伝いを頼んだシルビは少しだけ驚いた後やっぱり微笑んで『俺のこと男だと思ってねぇでしょうマジで』と言ってきて、チェインはやっとスティーブンには見せたくなかった部屋をシルビには掃除させようとしている自分に気付いた。
恥ずかしくなかった訳ではない。ただシルビになら、見られても怒られたり失望されたりはしないなと、漠然と信用していたのだろう。既に、存在を希釈する前から。
そしてシルビは案の定チェインのゴミだらけの部屋を見ても、ちょっと笑っただけだった。
「じゃあ腹減ってたり」
「それはしてる」
「何食べましょうか。俺中華がいいと思ってるんですけど」
ゴミ袋を提げて玄関へ向かうシルビの後を追いかける。
「シルビ。ありがとう」
「今後は酒瓶出来るだけ飲んだら直ぐに捨てましょうねぇ」
「……そういう意味じゃないんだけど」
「ふふ、冗談です」