―人狼大作戦―
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まだ中に水の入っているグラスを店長へ押し返し、カウンターの上へ手を伸ばして携帯を掴む。もう平気なのかと心配してくる店長に、申し訳ないと思いつつも無視してアドレス帳を提示した。Aから順に名前を追いつつ顔を思い出していく。
そうして全部を確認し終わったところで、一人の女性の名前が出てこないことが分かった。
ヘルサレムズ・ロットへ来てから出会った人だ。記憶の中ではシルビはその人から水のボトルを受け取っている。少し前には一緒に食事もした。
でも名前が出てこない。
「……いや、“顔も分からなくなってる”!?」
「ハァ?」
寸前に思い出してその姿を認識していたはずが、その姿すら思い出せなくなっていっている。水のボトルは自分で買ったもの。そう記憶が、世界が『書き換え』られた。
未だに身体を重くさせている頭痛を堪えてシルビは立ち上がる。そうしてカウンターに置いたままだったノートパソコンの画面を確認し、打ち上げられたミサイルが弾頭破壊されたのを見た。
シルビはまだそこまでハッキングしていない。だからこれは他の何者かがやったことだろう。女性が思い出せなくなったのは、この弾頭が破壊される寸前。
ということはその人物はこの弾頭破壊に関わっていたのだろう。では一体どこの組織がそれを行なったのか。
倒れた椅子をそのままにキーボートの上へ指先を滑らせる。弾頭を破壊された某国は、少し前に『人狼』について調べていたらしい。
「『不可視の人狼』……――“チェイン”さん?」
水のボトルをシルビへ差し出してきた『誰か』を。その名前を呟く。
「うっ――」
また激しい頭痛がして、今度は座り込みこそしなかったが飲んだばかりの水が逆流してくる感覚に襲われた。必死に唾液を嚥下してそれをやり過ごし、再び起こった『世界の書き換え』によって書き換わった事柄をもう一度確認する。
店長が脇でさっきから体調不良なシルビを心配しているが、それに構っていられる余裕がちょっと無かった。頭を抑えて、水のボトルを差し出される記憶を脳内で繰り返し思い出す。
そうやって記憶が修正されていくのは、いっそ劇的だった。
「……すいません。俺ちょっと出掛けてきます」
「出掛けるって、大丈夫なのかよ」
「ここで吐かれるよりはマシでしょう? 土産に本物の江戸切り子買ってきてあげますね」
「本物?」
「それ、メイドインチャイナ」
店長がずっと持ったままだった切子グラスを指差して言えば、店長は信じられないとばかりにグラスを確認し始める。水が入っているのに傾けようとしたので、手を伸ばしてその傾きを抑えた。
まだ頭痛はしているが大分収まってきている。携帯の充電がしたかったが、諦めて途中で携帯充電器を手に入れることにした。
そうして全部を確認し終わったところで、一人の女性の名前が出てこないことが分かった。
ヘルサレムズ・ロットへ来てから出会った人だ。記憶の中ではシルビはその人から水のボトルを受け取っている。少し前には一緒に食事もした。
でも名前が出てこない。
「……いや、“顔も分からなくなってる”!?」
「ハァ?」
寸前に思い出してその姿を認識していたはずが、その姿すら思い出せなくなっていっている。水のボトルは自分で買ったもの。そう記憶が、世界が『書き換え』られた。
未だに身体を重くさせている頭痛を堪えてシルビは立ち上がる。そうしてカウンターに置いたままだったノートパソコンの画面を確認し、打ち上げられたミサイルが弾頭破壊されたのを見た。
シルビはまだそこまでハッキングしていない。だからこれは他の何者かがやったことだろう。女性が思い出せなくなったのは、この弾頭が破壊される寸前。
ということはその人物はこの弾頭破壊に関わっていたのだろう。では一体どこの組織がそれを行なったのか。
倒れた椅子をそのままにキーボートの上へ指先を滑らせる。弾頭を破壊された某国は、少し前に『人狼』について調べていたらしい。
「『不可視の人狼』……――“チェイン”さん?」
水のボトルをシルビへ差し出してきた『誰か』を。その名前を呟く。
「うっ――」
また激しい頭痛がして、今度は座り込みこそしなかったが飲んだばかりの水が逆流してくる感覚に襲われた。必死に唾液を嚥下してそれをやり過ごし、再び起こった『世界の書き換え』によって書き換わった事柄をもう一度確認する。
店長が脇でさっきから体調不良なシルビを心配しているが、それに構っていられる余裕がちょっと無かった。頭を抑えて、水のボトルを差し出される記憶を脳内で繰り返し思い出す。
そうやって記憶が修正されていくのは、いっそ劇的だった。
「……すいません。俺ちょっと出掛けてきます」
「出掛けるって、大丈夫なのかよ」
「ここで吐かれるよりはマシでしょう? 土産に本物の江戸切り子買ってきてあげますね」
「本物?」
「それ、メイドインチャイナ」
店長がずっと持ったままだった切子グラスを指差して言えば、店長は信じられないとばかりにグラスを確認し始める。水が入っているのに傾けようとしたので、手を伸ばしてその傾きを抑えた。
まだ頭痛はしているが大分収まってきている。携帯の充電がしたかったが、諦めて途中で携帯充電器を手に入れることにした。