―ラン! ランチ!! ラン!!!―
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ツェッド視点
空腹のあまりにか狂い始めたレオを連れていったカフェテリアは、今までに見てきた店に比べとてもごく普通の店だった。カウンター席へ並んで座り、直ぐに出来て腹が満たされるメニューを注文する。
そうしてその注文した品が揃いイザ食べようとした瞬間、店を半壊させて突っ込んできた謎の巨体機体に襲われた。レオを助けて、カフェテリアのビビアンというらしい店員を助けたところで、瓦礫の破片が背中にぶつかり、倒れて頭上に落ちかかってきた巨大機体から助けられて。
店の出入り口も壊れてしまったので開いた大穴から店の外へ出たところで、ツェッドの直ぐ脇にシルビが降ってきた。
「あれ、Ciao?」
「チャオ、じゃねーよ!」
両手に四方八方へと伸びている鎖を巻きつけたシルビが、ツェッド達の姿に眼を丸くする。居たのはシルビだけではなく、ライブラのリーダーであるクラウスもだった。
「ちょうど良かった! 手伝ってくれ給え二人とも!」
既に武装している彼が対峙している先には、店を襲ったのと同じ機体を腕へと装着した異界人の群れ。それを見てしまっては空腹でも断れる訳が無く。
血の三叉槍を作り上げるツェッドの隣でザップも血の刀を作り上げる。異界人の群れは一体どれほどいるのか分からないが、その半分ほどに鎖が巻き付いて動きを制限していた。鎖に拘束されずにいる異界人から倒していくクラウスに倣い、ツェッドも自由に動けている異界人を目指す。レオやあの店員は無事に逃げられただろうかと考えていられたのは、この鎮圧活動を始めて五時間ほど経つまでだった。
人類の中では大きいと思われるクラウスより何倍も大きいその異界人達は、片手に装着していた機体を何かの機械としてではなく単純に鈍器として扱ってきていた。巨体に振り回されるそれは下手に受け止める事も出来ない。その上基本の体力が違うのか予想以上に動きが早いのだ。
そんな異界人が百人以上居れば、それは血法を使えるツェッド達にとっても当然ながら脅威である。更には空腹で、活力も無い。
「これは、堪えるな……っ」
左右から来た異界人を返り討ちにしたところで頭上が暗くなり、ツェッドが振り返れば片手の機体を振り上げた異界人の姿。避けように倒したばかりの異界人が邪魔で避ける場所が無かった。
これは受け止めるしかないかと思ったところで、目の前を銀色の鎖が通過する。ジャラリという音さえせずに宙を走ったそれが、ツェッドの頭上へ振り下ろされた鈍器を受け止めた。
そうして炎の輪を経由して異界人へ絡み付いていく光景に、背後から声が掛けられる。
「大丈夫かぁ!?」
倒れていた異界人を足場にツェッドを見下ろすシルビの両手からは、まるで操り人形師のように鎖が何本も伸びていた。時折引っ張られて揺れるそれに、この拘束は彼が行なっているのだと理解する。
シルビはその鎖を引っ張り返すように腕を引いたかと思うと、ツェッドの傍へと降りてきた。
「大丈夫かぁ?」
「はい。ありがとうございます」
「この辺一帯の鎮圧は終わったから、次はあの先をお願いしていいかぁ? ザップさん達も行ってるんだけど、まだあの辺りは多いなぁ」
「分かりました」
シルビの手は鎖がきつく巻きつき擦れもしたのか赤くなっている。鎖も赤いように見えたのはもしかしたら血が出てしまっているのかもしれない。
そうでなくとも既に十時間以上という長い間、シルビは大勢の異界人をたった一人で拘束し続けていた。隣に並んでまだ爆音の響く方角を見やる彼の肩が普段よりも上下している。
手当てと休憩をした方がいいと思うのだが、こんな状況では暴れる異界人達を拘束しているのであろう彼に抜けられるのはまずい。未だに大人数を拘束しているシルビに抜けられたら、一気に形勢逆転される可能性だってあった。
「不甲斐ないですね」
「何がぁ?」
「もっと強ければもっと早く鎮圧出来るだろうにと思いました」
シルビが騒がしい方向からツェッドへと視線を向ける。
「過ぎた強さは『孤独』だぁ。人は足りねぇくらいで丁度いいんだぁ」
まるで自分へ言い聞かせるような言い方だった。
瓦礫の向こうで異界人が宙へと放り投げられているのが見える。その後にザップの怒鳴り声が聞こえてその言葉の下品さに呆れ、加勢に行こうと歩き出す。
後ろで音がして振り返ればシルビがよろけたのか瓦礫へ寄りかかっていた。やはり疲れているのだろう。
「大丈夫ですか」
「能力使い過ぎただけだから、終わったら休めば大丈夫。さほど前線にいる訳じゃねぇし今は前衛でもねぇしなぁ。ツェッド君こそ疲れてんだろぉ?」
「そうは言ってられません」
「頑張るなぁ。そんな新入り君へプレゼントだぁ」
そう言ってポケットから何かを取り出したシルビが、それをツェッドへ向けて投げてきた。うまく掴んで見れば子供向けのキャンディだ。
投げてきたシルビは悪戯を仕掛けた子供のように笑って、自分の分らしいキャンディを指先で摘まむ。
「疲れた時には甘めぇもの、だろぉ?」
「ありがとう、ございます」
やはりなんというか、彼は『不思議』だ。リストバンドを嵌めてもらった時のようなこそばゆい気分になり、それを誤魔化すように貰ったキャンディを見る。
忘れていた空腹を思い出してしまった。
空腹のあまりにか狂い始めたレオを連れていったカフェテリアは、今までに見てきた店に比べとてもごく普通の店だった。カウンター席へ並んで座り、直ぐに出来て腹が満たされるメニューを注文する。
そうしてその注文した品が揃いイザ食べようとした瞬間、店を半壊させて突っ込んできた謎の巨体機体に襲われた。レオを助けて、カフェテリアのビビアンというらしい店員を助けたところで、瓦礫の破片が背中にぶつかり、倒れて頭上に落ちかかってきた巨大機体から助けられて。
店の出入り口も壊れてしまったので開いた大穴から店の外へ出たところで、ツェッドの直ぐ脇にシルビが降ってきた。
「あれ、Ciao?」
「チャオ、じゃねーよ!」
両手に四方八方へと伸びている鎖を巻きつけたシルビが、ツェッド達の姿に眼を丸くする。居たのはシルビだけではなく、ライブラのリーダーであるクラウスもだった。
「ちょうど良かった! 手伝ってくれ給え二人とも!」
既に武装している彼が対峙している先には、店を襲ったのと同じ機体を腕へと装着した異界人の群れ。それを見てしまっては空腹でも断れる訳が無く。
血の三叉槍を作り上げるツェッドの隣でザップも血の刀を作り上げる。異界人の群れは一体どれほどいるのか分からないが、その半分ほどに鎖が巻き付いて動きを制限していた。鎖に拘束されずにいる異界人から倒していくクラウスに倣い、ツェッドも自由に動けている異界人を目指す。レオやあの店員は無事に逃げられただろうかと考えていられたのは、この鎮圧活動を始めて五時間ほど経つまでだった。
人類の中では大きいと思われるクラウスより何倍も大きいその異界人達は、片手に装着していた機体を何かの機械としてではなく単純に鈍器として扱ってきていた。巨体に振り回されるそれは下手に受け止める事も出来ない。その上基本の体力が違うのか予想以上に動きが早いのだ。
そんな異界人が百人以上居れば、それは血法を使えるツェッド達にとっても当然ながら脅威である。更には空腹で、活力も無い。
「これは、堪えるな……っ」
左右から来た異界人を返り討ちにしたところで頭上が暗くなり、ツェッドが振り返れば片手の機体を振り上げた異界人の姿。避けように倒したばかりの異界人が邪魔で避ける場所が無かった。
これは受け止めるしかないかと思ったところで、目の前を銀色の鎖が通過する。ジャラリという音さえせずに宙を走ったそれが、ツェッドの頭上へ振り下ろされた鈍器を受け止めた。
そうして炎の輪を経由して異界人へ絡み付いていく光景に、背後から声が掛けられる。
「大丈夫かぁ!?」
倒れていた異界人を足場にツェッドを見下ろすシルビの両手からは、まるで操り人形師のように鎖が何本も伸びていた。時折引っ張られて揺れるそれに、この拘束は彼が行なっているのだと理解する。
シルビはその鎖を引っ張り返すように腕を引いたかと思うと、ツェッドの傍へと降りてきた。
「大丈夫かぁ?」
「はい。ありがとうございます」
「この辺一帯の鎮圧は終わったから、次はあの先をお願いしていいかぁ? ザップさん達も行ってるんだけど、まだあの辺りは多いなぁ」
「分かりました」
シルビの手は鎖がきつく巻きつき擦れもしたのか赤くなっている。鎖も赤いように見えたのはもしかしたら血が出てしまっているのかもしれない。
そうでなくとも既に十時間以上という長い間、シルビは大勢の異界人をたった一人で拘束し続けていた。隣に並んでまだ爆音の響く方角を見やる彼の肩が普段よりも上下している。
手当てと休憩をした方がいいと思うのだが、こんな状況では暴れる異界人達を拘束しているのであろう彼に抜けられるのはまずい。未だに大人数を拘束しているシルビに抜けられたら、一気に形勢逆転される可能性だってあった。
「不甲斐ないですね」
「何がぁ?」
「もっと強ければもっと早く鎮圧出来るだろうにと思いました」
シルビが騒がしい方向からツェッドへと視線を向ける。
「過ぎた強さは『孤独』だぁ。人は足りねぇくらいで丁度いいんだぁ」
まるで自分へ言い聞かせるような言い方だった。
瓦礫の向こうで異界人が宙へと放り投げられているのが見える。その後にザップの怒鳴り声が聞こえてその言葉の下品さに呆れ、加勢に行こうと歩き出す。
後ろで音がして振り返ればシルビがよろけたのか瓦礫へ寄りかかっていた。やはり疲れているのだろう。
「大丈夫ですか」
「能力使い過ぎただけだから、終わったら休めば大丈夫。さほど前線にいる訳じゃねぇし今は前衛でもねぇしなぁ。ツェッド君こそ疲れてんだろぉ?」
「そうは言ってられません」
「頑張るなぁ。そんな新入り君へプレゼントだぁ」
そう言ってポケットから何かを取り出したシルビが、それをツェッドへ向けて投げてきた。うまく掴んで見れば子供向けのキャンディだ。
投げてきたシルビは悪戯を仕掛けた子供のように笑って、自分の分らしいキャンディを指先で摘まむ。
「疲れた時には甘めぇもの、だろぉ?」
「ありがとう、ございます」
やはりなんというか、彼は『不思議』だ。リストバンドを嵌めてもらった時のようなこそばゆい気分になり、それを誤魔化すように貰ったキャンディを見る。
忘れていた空腹を思い出してしまった。