―ラン! ランチ!! ラン!!!―
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「中華製の人体追随機動歩兵? ……また随分ローテクなモンを」
『復讐者』からの連絡は、新興ファミリーヤクザがヘルサレムズ・ロッドできな臭い動きをしているというものだった。きな臭いというか可愛く言えば『自分達最強になりたい!』だろうか。ヤクザだけに限った事ではないが大抵の組織の永遠の夢である。
だがそのヤクザが属する裏社会にもルールというものは存在していた。三年前にヘルサレムズ・ロットが現れ、異界人による裏社会的組織が設立されてもそれは変わらず、むしろそういった組織が増えたからこそルールはより強固に厳守される。
そうして『復讐者』は元々、裏社会の規律を守る組織だった。
「そのヤクザの名前はぁ? 『レギオカ千兄弟』? それもうヤクザじゃなくて種族的な名称に思えるの俺だけかなぁ?」
『レギオカ千兄弟』を名乗る新興ヤクザが、その機動歩兵を大量入手したらしい。入手したからには使うだろうが、相手はヤクザなので当然ゴミ拾いや交通安全にそれを使うわけが無く、千人居るらしいその異界人集団が持てば、ローテクな機動歩兵だって危険な武器に変わる。
高層ビルの屋上の縁に立って携帯へ話しかける。視線の先にはこのヘルサレムズ・ロットの規律と安全を守る警察署。当然だが屋内の様子は流石に見えない。
シルビ以外はヘルサレムズ・ロットの外にいる『復讐者』でも分かった情報が、ヘルサレムズ・ロットの中へある警察が掴んでいない訳がないと考えて、彼らが調べた情報を覘き見させてもらうと思ったのである。横から掻っ攫う形になってしまうが対処法はシルビへ一任されたので、その『レキオカ千兄弟』が矮小なものであったなら警察に任せてしまってもいい。
何はともあれ情報収集だなと指を鳴らして屋上から飛び降りる。着地した先である警察署内の廊下で、シルビは資料室を求めて歩き出した。
レオの持つ『神々の義眼』は誤魔化せないシルビの幻覚はしかし、通常の人なら余裕で騙すことが出来る。なので現在堂々と警察署内を歩き回ったところで、周囲の警備員や警察にシルビの姿は見えていなかった。
受付に子供用か置いてあったキャンディを数個失敬して口に放り込み、警官の会話から資料室の場所を割り出してここだと思われる扉を開ける。中には何故か警察ではなくライブラである筈のクラウスとスティーブンがいて、テーブルの上に書類を広げて髪で片目を隠した刑事と話し込んでいた。
何の案件だろうかとちょっと好奇心で身を乗り出して、テーブルへ広げられていた書類を覗き込む。
「……んぁ?」
思わず声が出てしまって、クラウスが何かに気付いたようにシルビが居る辺りを見た。だが直ぐに視線を戻したので、多分幻覚はちゃんと効いている。
広げられていた資料にあるのは、シルビが探していた人体追随式機動歩兵『人民華製3型』だった。写真で見る全体図は予想していたものより大きく、隣に立っている人の三倍近くある。
「『調整屋』周りは張り込み済み?」
「当然だ。人間用に作られたパワードスーツを異界人が使うなら必須だからな」
スティーブンと刑事の会話を聞いて、この機動歩兵は人が乗るのかとシルビは写真を二度見した。シルビの感覚ではコレは無人稼動だと思ったのだ。
だが人が乗って操縦するのなら考え方も変わってくる。再びテーブルへ広げられていた資料を見回し、この機動歩兵の性能が書かれているものを探した。
やがて見つけた資料へ眼を通して考える。材質からして非常に頑丈な造りとなっており、その事が話題となって一世を風靡した事もあったようだ。頑丈なだけで売れるというのも中華製らしいといえばらしいが。
その非常に頑丈な機動歩兵は、人より数倍大きい見た目だが、その稼動部分は下のほうへと集中していた。つまり人が乗る操縦席を頑丈に覆い、歩行の為の足や物を掴んだりする為の手、更には稼動に必要なエンジン部分も機体の下のほうへまとめて配置されており、これでは何があっても内部の操縦士は無事かもしれないが、地雷でも踏んで下からの攻撃を受ければ直ぐに動けなくなってしまう。
つまりバランスが悪い。その代わり横方向や上からの衝撃には強いのかと理解したところで、テーブルに置かれていたボールペンが資料を取ろうとした刑事の手に当たって床に転がり落ちる。
「おっと」
しゃがんで拾い上げた刑事はそれをテーブルへは戻さずに資料へ視線を落とし、無意識にだろうがボールペンでテーブルを叩き始めた。コツコツと響く音に携帯を手にしていたスティーブンが眉を潜めているが、彼だってライブラの事務所で書類を片付ける時にやっている。
だが確かに煩いなと思い、シルビはテーブルを回り込んで刑事が持っているボールペンの先を掴んで止めた。一瞬だけ掴んだのだが刑事の感覚はしっかりと違和感を覚えたらしく、手元を見てボールペンを持つ手へ力を込める。そのタイミングでシルビが放したものだから、ボールペンが強くテーブルを叩いた。
「何してるんですか」
「いや……?」
不思議そうにボールペンを見る刑事に、シルビは違う意味で刑事の持っているボールペンを見つめる。それからテーブルへ広げられていた資料から、『レギオカ千兄弟』について書いてあるものを探した。
『復讐者』からの連絡では、その『レギオカ千兄弟』というヤクザが異界人であるということしか聞いていない。そして機動歩兵も写真で見る限り人が乗る大きさのものである。
「……でけぇなぁ」
だからシルビはその『レギオカ千兄弟』というのは人と同じか、もう少し大きい程度の異界人だと思っていた。だが資料の中にある『レギオカ千兄弟』は、予想以上に大きく到底機動歩兵へ乗れるとは思えない。
スティーブンや刑事はだから人間用のものを異界人用にカスタムする調整屋を探しているのだろうが、単純に、そんなことをする必要が無い場合だってある。
「医者……? いや、技師だなぁ」
次の目的を決めてシルビはだいぶ小さくなったキャンディを噛み砕き、資料室の窓から外へ出た。資料室ではまだクラウス達がああだこうだと言っているので、確認出来次第連絡してやろうとは思う。
『復讐者』からの連絡は、新興ファミリーヤクザがヘルサレムズ・ロッドできな臭い動きをしているというものだった。きな臭いというか可愛く言えば『自分達最強になりたい!』だろうか。ヤクザだけに限った事ではないが大抵の組織の永遠の夢である。
だがそのヤクザが属する裏社会にもルールというものは存在していた。三年前にヘルサレムズ・ロットが現れ、異界人による裏社会的組織が設立されてもそれは変わらず、むしろそういった組織が増えたからこそルールはより強固に厳守される。
そうして『復讐者』は元々、裏社会の規律を守る組織だった。
「そのヤクザの名前はぁ? 『レギオカ千兄弟』? それもうヤクザじゃなくて種族的な名称に思えるの俺だけかなぁ?」
『レギオカ千兄弟』を名乗る新興ヤクザが、その機動歩兵を大量入手したらしい。入手したからには使うだろうが、相手はヤクザなので当然ゴミ拾いや交通安全にそれを使うわけが無く、千人居るらしいその異界人集団が持てば、ローテクな機動歩兵だって危険な武器に変わる。
高層ビルの屋上の縁に立って携帯へ話しかける。視線の先にはこのヘルサレムズ・ロットの規律と安全を守る警察署。当然だが屋内の様子は流石に見えない。
シルビ以外はヘルサレムズ・ロットの外にいる『復讐者』でも分かった情報が、ヘルサレムズ・ロットの中へある警察が掴んでいない訳がないと考えて、彼らが調べた情報を覘き見させてもらうと思ったのである。横から掻っ攫う形になってしまうが対処法はシルビへ一任されたので、その『レキオカ千兄弟』が矮小なものであったなら警察に任せてしまってもいい。
何はともあれ情報収集だなと指を鳴らして屋上から飛び降りる。着地した先である警察署内の廊下で、シルビは資料室を求めて歩き出した。
レオの持つ『神々の義眼』は誤魔化せないシルビの幻覚はしかし、通常の人なら余裕で騙すことが出来る。なので現在堂々と警察署内を歩き回ったところで、周囲の警備員や警察にシルビの姿は見えていなかった。
受付に子供用か置いてあったキャンディを数個失敬して口に放り込み、警官の会話から資料室の場所を割り出してここだと思われる扉を開ける。中には何故か警察ではなくライブラである筈のクラウスとスティーブンがいて、テーブルの上に書類を広げて髪で片目を隠した刑事と話し込んでいた。
何の案件だろうかとちょっと好奇心で身を乗り出して、テーブルへ広げられていた書類を覗き込む。
「……んぁ?」
思わず声が出てしまって、クラウスが何かに気付いたようにシルビが居る辺りを見た。だが直ぐに視線を戻したので、多分幻覚はちゃんと効いている。
広げられていた資料にあるのは、シルビが探していた人体追随式機動歩兵『人民華製3型』だった。写真で見る全体図は予想していたものより大きく、隣に立っている人の三倍近くある。
「『調整屋』周りは張り込み済み?」
「当然だ。人間用に作られたパワードスーツを異界人が使うなら必須だからな」
スティーブンと刑事の会話を聞いて、この機動歩兵は人が乗るのかとシルビは写真を二度見した。シルビの感覚ではコレは無人稼動だと思ったのだ。
だが人が乗って操縦するのなら考え方も変わってくる。再びテーブルへ広げられていた資料を見回し、この機動歩兵の性能が書かれているものを探した。
やがて見つけた資料へ眼を通して考える。材質からして非常に頑丈な造りとなっており、その事が話題となって一世を風靡した事もあったようだ。頑丈なだけで売れるというのも中華製らしいといえばらしいが。
その非常に頑丈な機動歩兵は、人より数倍大きい見た目だが、その稼動部分は下のほうへと集中していた。つまり人が乗る操縦席を頑丈に覆い、歩行の為の足や物を掴んだりする為の手、更には稼動に必要なエンジン部分も機体の下のほうへまとめて配置されており、これでは何があっても内部の操縦士は無事かもしれないが、地雷でも踏んで下からの攻撃を受ければ直ぐに動けなくなってしまう。
つまりバランスが悪い。その代わり横方向や上からの衝撃には強いのかと理解したところで、テーブルに置かれていたボールペンが資料を取ろうとした刑事の手に当たって床に転がり落ちる。
「おっと」
しゃがんで拾い上げた刑事はそれをテーブルへは戻さずに資料へ視線を落とし、無意識にだろうがボールペンでテーブルを叩き始めた。コツコツと響く音に携帯を手にしていたスティーブンが眉を潜めているが、彼だってライブラの事務所で書類を片付ける時にやっている。
だが確かに煩いなと思い、シルビはテーブルを回り込んで刑事が持っているボールペンの先を掴んで止めた。一瞬だけ掴んだのだが刑事の感覚はしっかりと違和感を覚えたらしく、手元を見てボールペンを持つ手へ力を込める。そのタイミングでシルビが放したものだから、ボールペンが強くテーブルを叩いた。
「何してるんですか」
「いや……?」
不思議そうにボールペンを見る刑事に、シルビは違う意味で刑事の持っているボールペンを見つめる。それからテーブルへ広げられていた資料から、『レギオカ千兄弟』について書いてあるものを探した。
『復讐者』からの連絡では、その『レギオカ千兄弟』というヤクザが異界人であるということしか聞いていない。そして機動歩兵も写真で見る限り人が乗る大きさのものである。
「……でけぇなぁ」
だからシルビはその『レギオカ千兄弟』というのは人と同じか、もう少し大きい程度の異界人だと思っていた。だが資料の中にある『レギオカ千兄弟』は、予想以上に大きく到底機動歩兵へ乗れるとは思えない。
スティーブンや刑事はだから人間用のものを異界人用にカスタムする調整屋を探しているのだろうが、単純に、そんなことをする必要が無い場合だってある。
「医者……? いや、技師だなぁ」
次の目的を決めてシルビはだいぶ小さくなったキャンディを噛み砕き、資料室の窓から外へ出た。資料室ではまだクラウス達がああだこうだと言っているので、確認出来次第連絡してやろうとは思う。