―ラン! ランチ!! ラン!!!―
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ザップの弟弟子改め、ツェッド・オブライエン。
汁外衛とのメールによれば血界の眷属の間で通称『伯爵』と呼ばれていた男に“造られた”、人と魚との合成生物。エラ呼吸であることと見た目以外は殆ど人間で、知能も高く理性もある。本人に聞いたところ皮膚呼吸の頻度に関しては人間より魚寄りなので、空気中より水中に居る方が楽らしい。
新しくライブラのメンバーになったツェッドの診察を終えて、色々と書きとめたカルテをファイルへしまう。椅子に座って外していたリストバンドを嵌めていた彼は、ふとシルビがそれを眺めていた事に気付くと顔を上げた。
「何か?」
「ううん。何でもねぇよ。気に障ったかぁ?」
「いえ、見られる事は慣れています。この見た目ですから」
「HLじゃ然程珍しくは無ぇだろぉ? むしろ君より眼を引く外見はざらに居る」
このヘルサレムズ・ロットではシルビでも始めて見る見た目の生物が、堂々と往来を行き来している。混沌と不可逆が入り乱れる街では見た目を逐一気にしていてなんていられないし、そんなものより考えるべき事もあった。
しかしツェッドはあまり納得出来なかったらしく、シルビの言葉を聞いても納得し切れていない様子で手を止める。シルビとしては外見の話だけではないのだろうなと気付いてはいた。
彼は、『造られた生命体』故に同族というものが存在しない。
それはシルビ自身にも複雑な心境をさせる問題ではあった。むしろシルビのほうが、普段はごく普通の人間の姿であるだけに難しい問題なのかもしれないと思うのは嫉妬か。かといって見た目ですぐに『周囲は自分とは違うのだ』と認識されるのも微妙なところである。
「ザップさんの弟弟子でも、性格は全然違うなぁって思っただけだぁ」
「兄弟子、ですか?」
「まぁ、似たような性格でも鬱陶しいだけだけどなぁ」
テーブルの上に置かれていたツェッドのリストバンドを取り上げ、ツェッドの手を取ってそこへ嵌めてやった。不思議そうな顔でそれを見ていたツェッドが、嵌め終えて離したシルビの手を見てから顔を上げる。
「ありがとう、ございます」
「どういたしましてぇ」
まだライブラへ来たばかりだからか、シルビとの距離も彼は測りかねていた。でもシルビとしては、彼とはもう少し親しくなりたいと思っている。その気持ちは『同情』というつもりはなく、純粋に。
一緒に医務室を出て執務室へ戻れば、レオとザップがソファで駄弁っていた。今日は騒動が起こらず平和に過ごせるかなと思ったところでシルビの携帯が鳴り出す。
『復讐者』からだと確認して、シルビはツェッドに軽く声を掛けて彼から離れた。
汁外衛とのメールによれば血界の眷属の間で通称『伯爵』と呼ばれていた男に“造られた”、人と魚との合成生物。エラ呼吸であることと見た目以外は殆ど人間で、知能も高く理性もある。本人に聞いたところ皮膚呼吸の頻度に関しては人間より魚寄りなので、空気中より水中に居る方が楽らしい。
新しくライブラのメンバーになったツェッドの診察を終えて、色々と書きとめたカルテをファイルへしまう。椅子に座って外していたリストバンドを嵌めていた彼は、ふとシルビがそれを眺めていた事に気付くと顔を上げた。
「何か?」
「ううん。何でもねぇよ。気に障ったかぁ?」
「いえ、見られる事は慣れています。この見た目ですから」
「HLじゃ然程珍しくは無ぇだろぉ? むしろ君より眼を引く外見はざらに居る」
このヘルサレムズ・ロットではシルビでも始めて見る見た目の生物が、堂々と往来を行き来している。混沌と不可逆が入り乱れる街では見た目を逐一気にしていてなんていられないし、そんなものより考えるべき事もあった。
しかしツェッドはあまり納得出来なかったらしく、シルビの言葉を聞いても納得し切れていない様子で手を止める。シルビとしては外見の話だけではないのだろうなと気付いてはいた。
彼は、『造られた生命体』故に同族というものが存在しない。
それはシルビ自身にも複雑な心境をさせる問題ではあった。むしろシルビのほうが、普段はごく普通の人間の姿であるだけに難しい問題なのかもしれないと思うのは嫉妬か。かといって見た目ですぐに『周囲は自分とは違うのだ』と認識されるのも微妙なところである。
「ザップさんの弟弟子でも、性格は全然違うなぁって思っただけだぁ」
「兄弟子、ですか?」
「まぁ、似たような性格でも鬱陶しいだけだけどなぁ」
テーブルの上に置かれていたツェッドのリストバンドを取り上げ、ツェッドの手を取ってそこへ嵌めてやった。不思議そうな顔でそれを見ていたツェッドが、嵌め終えて離したシルビの手を見てから顔を上げる。
「ありがとう、ございます」
「どういたしましてぇ」
まだライブラへ来たばかりだからか、シルビとの距離も彼は測りかねていた。でもシルビとしては、彼とはもう少し親しくなりたいと思っている。その気持ちは『同情』というつもりはなく、純粋に。
一緒に医務室を出て執務室へ戻れば、レオとザップがソファで駄弁っていた。今日は騒動が起こらず平和に過ごせるかなと思ったところでシルビの携帯が鳴り出す。
『復讐者』からだと確認して、シルビはツェッドに軽く声を掛けて彼から離れた。