―Zの一番長い一日―
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三年前、前触れも無く一夜にして崩壊、再構成が行なわれ、かつてニューヨークと呼ばれていた大都市は、現在異界と人間界の入り混じる不可逆の混沌と融合する街『ヘルサレムズ・ロット』となった。厚い霧に覆われた都市は何かに守られているのか隔離されているのか、決して“穏やか”とは言いがたい日常に埋め尽くされている。
その街で世界の均衡を守る事を目的とした秘密結社『ライブラ』へ所属するシルビは、人の姿をした『“元”神』であった。
世界の魔術的社会を往く者の言葉で表すのなら、おそらくは『神性存在』と呼ばれるのだろう。次元を自身の到底人間には理解出来ない論理や思考でかき乱し、傍観する存在。
シルビにその自覚はあまり無いが、この前友人達に会いに行ったら『人間として生まれたから仕方ないとはいえ、自覚無かったのお前だけだよ』と言われたくらいには、そうだったらしい。ただし今は、前述した通り『元』なのである。
そもそもシルビは日頃から友人たちと同じ『人間でありたい』と思っているし、今は『とある事件』のせいで能力の四割が失われたままだ。だからせいぜいが『化け物』だと主張する。
何故そんな事を今更説明したのかというと、今現在、目の前にその『神性存在』の一つであるタコの足があるからだ。正確にはタコではなくイカなのかもしれないが、ヘルサレムズ・ロットの住人はタコだと言うので安直にタコだと思っている。全貌は大き過ぎて見えない。
霧に覆われたヘルサレムズ・ロットの、海へ面した公園。その手すりへ寄りかかって海へ向かって伸ばしたシルビの手に、ヌルリと触手の先端のような足が絡み付いている。
「吸盤が付いたら絶対痛てぇよなぁコレ」
そもそもこれがヘルサレムズ・ロットを、外から飛んでくるものから守るタコの足かどうかすら分かっていない。ただ一つ言える事はどうやらこのタコ足も、シルビの持つ動植物へ好かれる性質に引き寄せられたらしいという事だ。
昨日の深夜にたまたまここへ立ち寄って、海へ引きずり込まれそうになったのは正直怖かった。
「お前さんは、『神性存在』なのかぁ?」
どうも一番細くて小さいらしい足をシルビの手へ絡めてご機嫌らしいタコは、シルビの言葉を一応は理解しているらしい。というかシルビのすげない言葉にも愛想良く返してくる辺り、シルビより格下なのか。階級というものがあるとすれば、の話だが。
「そろそろライブラの事務所に行きてぇんだけどなぁ。いい子だから放してくれねぇ?」
先端をイヤイヤと拒否を示すように振るタコ足へため息を吐いた所で、ポケットに入れていた携帯が鳴り出した。
その街で世界の均衡を守る事を目的とした秘密結社『ライブラ』へ所属するシルビは、人の姿をした『“元”神』であった。
世界の魔術的社会を往く者の言葉で表すのなら、おそらくは『神性存在』と呼ばれるのだろう。次元を自身の到底人間には理解出来ない論理や思考でかき乱し、傍観する存在。
シルビにその自覚はあまり無いが、この前友人達に会いに行ったら『人間として生まれたから仕方ないとはいえ、自覚無かったのお前だけだよ』と言われたくらいには、そうだったらしい。ただし今は、前述した通り『元』なのである。
そもそもシルビは日頃から友人たちと同じ『人間でありたい』と思っているし、今は『とある事件』のせいで能力の四割が失われたままだ。だからせいぜいが『化け物』だと主張する。
何故そんな事を今更説明したのかというと、今現在、目の前にその『神性存在』の一つであるタコの足があるからだ。正確にはタコではなくイカなのかもしれないが、ヘルサレムズ・ロットの住人はタコだと言うので安直にタコだと思っている。全貌は大き過ぎて見えない。
霧に覆われたヘルサレムズ・ロットの、海へ面した公園。その手すりへ寄りかかって海へ向かって伸ばしたシルビの手に、ヌルリと触手の先端のような足が絡み付いている。
「吸盤が付いたら絶対痛てぇよなぁコレ」
そもそもこれがヘルサレムズ・ロットを、外から飛んでくるものから守るタコの足かどうかすら分かっていない。ただ一つ言える事はどうやらこのタコ足も、シルビの持つ動植物へ好かれる性質に引き寄せられたらしいという事だ。
昨日の深夜にたまたまここへ立ち寄って、海へ引きずり込まれそうになったのは正直怖かった。
「お前さんは、『神性存在』なのかぁ?」
どうも一番細くて小さいらしい足をシルビの手へ絡めてご機嫌らしいタコは、シルビの言葉を一応は理解しているらしい。というかシルビのすげない言葉にも愛想良く返してくる辺り、シルビより格下なのか。階級というものがあるとすれば、の話だが。
「そろそろライブラの事務所に行きてぇんだけどなぁ。いい子だから放してくれねぇ?」
先端をイヤイヤと拒否を示すように振るタコ足へため息を吐いた所で、ポケットに入れていた携帯が鳴り出した。