閑話4
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スティーブン視点
「前から気になってたんだけどよ」
「んぁ?」
「その炎って何なワケ?」
スティーブンは今まさに飲もうとしていた珈琲が気管に入って噎せた。不可視の人狼であるチェインがザップの頭すらない場所でこけている。
紅茶を淹れていたギルベルトの肩が震えた。爪にマニキュアを施していたK・Kの手元が狂う。
動じなかったのは分かっていないらしいレオと、会話が聞こえない程集中してパソコンでチェスをしているらしいクラウスと、会話の当事者であるザップとシルビだった。
「炎って、コレのことかぁ?」
「それ以外に何かあるかよ。空間転移で炎出すけど、それ以外にも色々カラフルな炎出してんだろお前」
ザップに言われてシルビが自分の手元、ザップの怪我をした手へ押し当てている炎を見下ろす。黄色い炎のそれは、ザップだけではなくライブラの皆が前々から疑問に思っていたものだった。
シルビは『空間転移能力者』だ。指を鳴らして炎の輪を発生させ、そこではない空間と空間を繋ぐ。炎の輪を作らずとも、自分の身一つくらいは簡単に転移させる事もしてしまうし、その力の限度は未だに計り知れない。
聞けば『復讐者』だけが使い方を知る事の出来る特有の能力らしいが、本来であれば空間転移は高度な術式を必要とするものだ。あの血界の眷属だって術式として展開をしなければ使えない。それを『復讐者』はどうやら簡単に使ってしまうらしかった。
牙狩りよりも古い歴史を持つと言われている組織だから、そのくらいは朝飯前なのかもしれない。シルビも詳しくは話さないものの、ライブラの為でなくとも頼めば湯水のように使ってくれている。
それはいい。それはもう『復讐者』へ属していることを理由に説明が付く。
問題は、ザップも言ったがシルビが頻繁に灯す『カラフルな炎』だ。
「綺麗だろぉ?」
「そーいう話じゃなくてよ。何なのソレ? お前『空間転移』以外も使えんの?」
「? うん」
あっけらかんと答えるシルビに、『あ、聞いてよかったんだ』ときっと聞いていた全員が思ったに違いない。そしてザップに内心グッジョブと親指を立てた。
前々から全員気になっていたのだ。だが訊いていいのかどうか分からず聞けないでいた。
ザップの腕から黄色い炎を消して手を離したシルビが指を鳴らす。途端シルビの指先へ橙色の炎が灯った。
「俺は元々ザップさんと同じ炎属性……なのかなぁ?」
「知らねーし」
「というか自分が何の属性なのかも良く分かんねぇ?」
コテン、と首をかしげたシルビのポニーテールが気になったのか、レオの肩にいたソニックが走り寄ってシルビのポニーテールへしがみ付き、滑り落ちて遊び始める。それを気にした様子も無くシルビは指先へ灯していた炎を消した。
「『復讐者』のあれも炎だけど、ザップさんの血法みてぇな使い方はしねぇし、逆にザップさんが俺みてぇな使い方も出来ねぇだろぉ?」
「まぁ、回復とかは出来ねーわな」
「だから多分炎属性なんだけど、その炎の中でも更に分類があって、俺はその分類の幾つかを使えるって考えりゃいいんじゃねぇ?」
「……ナルホド」
駄目だそこで納得するなと内心でスティーブンは思う。きっとK・Kも同じ事を考えている筈だ。炎一つでそんな分類があるとしても、その分類をいくつも使えることを突っ込めと突っ込みたい。
現在確認出来ているだけでもシルビは『復讐者』の炎の他に三色の炎を扱っている。そのどれもが違う効果を持っているのだ。正直な話、多属性だといってもおかしくは無いのだろう。
スティーブンにとっては、まぁそれも納得出来なくは無い。シルビがライブラへ加わることについての詳細を話し合った時、既に彼の『正体』を見せられている。暇を見て調べてはいるが未だにあの『正体』の名前が分からないが、本来が人類ではないのならまぁ細分化された能力も扱えなくは無いだろう。
それで弱体化しているとほざく事には腹が立たなくもないが、とりあえず炎に関してはザップ以上のスペシャリストなのかもしれない。
「あれ?」
「なんだよ犬女」
ザップとシルビの間で話がまとまりかけたところで、チェインが声を上げる。捲くっていた袖を治しながら面倒そうにザップがチェインを振り返った。
「でもシルビ、『存在希釈』してたよね?」
元から静かだった場が更に静まり返る。クラウスのキーボードを叩く音しか響かない。
「……ふへへ?」
さっきとは逆の方向へ首をかしげたシルビが誤魔化しの笑みを浮かべた。これはもう疑うことなく誤魔化しの笑みである。
「――っ確保!」
「されるかぁっ!」
踏み込んだ足でシルビの足元を凍らせようとしたら飛んでかわされた。代わりにザップの脚が凍ってしまったが、近くに居たのが悪いという事にする。
宙で一回転して離れた場所へ着地したシルビへK・Kが銃を撃つも、『空間転移』でそれも避けられた。チェインが指を鳴らしたシルビの背後へ現れて、腕を回して捕まえようとするも、その姿がチェインの『存在希釈』同様に掻き消える。
代わりにひらりと舞い落ちた紙に、『追求したら契約不履行!』と書かれていた。
「……くそっ。それを言われたら何も出来ないっ! 金ヅルは逃がしたくない!」
「そんなに『復讐者』って高額スポンサーなんすか。つか脚! 脚溶かしてくださいよ!」
「前から気になってたんだけどよ」
「んぁ?」
「その炎って何なワケ?」
スティーブンは今まさに飲もうとしていた珈琲が気管に入って噎せた。不可視の人狼であるチェインがザップの頭すらない場所でこけている。
紅茶を淹れていたギルベルトの肩が震えた。爪にマニキュアを施していたK・Kの手元が狂う。
動じなかったのは分かっていないらしいレオと、会話が聞こえない程集中してパソコンでチェスをしているらしいクラウスと、会話の当事者であるザップとシルビだった。
「炎って、コレのことかぁ?」
「それ以外に何かあるかよ。空間転移で炎出すけど、それ以外にも色々カラフルな炎出してんだろお前」
ザップに言われてシルビが自分の手元、ザップの怪我をした手へ押し当てている炎を見下ろす。黄色い炎のそれは、ザップだけではなくライブラの皆が前々から疑問に思っていたものだった。
シルビは『空間転移能力者』だ。指を鳴らして炎の輪を発生させ、そこではない空間と空間を繋ぐ。炎の輪を作らずとも、自分の身一つくらいは簡単に転移させる事もしてしまうし、その力の限度は未だに計り知れない。
聞けば『復讐者』だけが使い方を知る事の出来る特有の能力らしいが、本来であれば空間転移は高度な術式を必要とするものだ。あの血界の眷属だって術式として展開をしなければ使えない。それを『復讐者』はどうやら簡単に使ってしまうらしかった。
牙狩りよりも古い歴史を持つと言われている組織だから、そのくらいは朝飯前なのかもしれない。シルビも詳しくは話さないものの、ライブラの為でなくとも頼めば湯水のように使ってくれている。
それはいい。それはもう『復讐者』へ属していることを理由に説明が付く。
問題は、ザップも言ったがシルビが頻繁に灯す『カラフルな炎』だ。
「綺麗だろぉ?」
「そーいう話じゃなくてよ。何なのソレ? お前『空間転移』以外も使えんの?」
「? うん」
あっけらかんと答えるシルビに、『あ、聞いてよかったんだ』ときっと聞いていた全員が思ったに違いない。そしてザップに内心グッジョブと親指を立てた。
前々から全員気になっていたのだ。だが訊いていいのかどうか分からず聞けないでいた。
ザップの腕から黄色い炎を消して手を離したシルビが指を鳴らす。途端シルビの指先へ橙色の炎が灯った。
「俺は元々ザップさんと同じ炎属性……なのかなぁ?」
「知らねーし」
「というか自分が何の属性なのかも良く分かんねぇ?」
コテン、と首をかしげたシルビのポニーテールが気になったのか、レオの肩にいたソニックが走り寄ってシルビのポニーテールへしがみ付き、滑り落ちて遊び始める。それを気にした様子も無くシルビは指先へ灯していた炎を消した。
「『復讐者』のあれも炎だけど、ザップさんの血法みてぇな使い方はしねぇし、逆にザップさんが俺みてぇな使い方も出来ねぇだろぉ?」
「まぁ、回復とかは出来ねーわな」
「だから多分炎属性なんだけど、その炎の中でも更に分類があって、俺はその分類の幾つかを使えるって考えりゃいいんじゃねぇ?」
「……ナルホド」
駄目だそこで納得するなと内心でスティーブンは思う。きっとK・Kも同じ事を考えている筈だ。炎一つでそんな分類があるとしても、その分類をいくつも使えることを突っ込めと突っ込みたい。
現在確認出来ているだけでもシルビは『復讐者』の炎の他に三色の炎を扱っている。そのどれもが違う効果を持っているのだ。正直な話、多属性だといってもおかしくは無いのだろう。
スティーブンにとっては、まぁそれも納得出来なくは無い。シルビがライブラへ加わることについての詳細を話し合った時、既に彼の『正体』を見せられている。暇を見て調べてはいるが未だにあの『正体』の名前が分からないが、本来が人類ではないのならまぁ細分化された能力も扱えなくは無いだろう。
それで弱体化しているとほざく事には腹が立たなくもないが、とりあえず炎に関してはザップ以上のスペシャリストなのかもしれない。
「あれ?」
「なんだよ犬女」
ザップとシルビの間で話がまとまりかけたところで、チェインが声を上げる。捲くっていた袖を治しながら面倒そうにザップがチェインを振り返った。
「でもシルビ、『存在希釈』してたよね?」
元から静かだった場が更に静まり返る。クラウスのキーボードを叩く音しか響かない。
「……ふへへ?」
さっきとは逆の方向へ首をかしげたシルビが誤魔化しの笑みを浮かべた。これはもう疑うことなく誤魔化しの笑みである。
「――っ確保!」
「されるかぁっ!」
踏み込んだ足でシルビの足元を凍らせようとしたら飛んでかわされた。代わりにザップの脚が凍ってしまったが、近くに居たのが悪いという事にする。
宙で一回転して離れた場所へ着地したシルビへK・Kが銃を撃つも、『空間転移』でそれも避けられた。チェインが指を鳴らしたシルビの背後へ現れて、腕を回して捕まえようとするも、その姿がチェインの『存在希釈』同様に掻き消える。
代わりにひらりと舞い落ちた紙に、『追求したら契約不履行!』と書かれていた。
「……くそっ。それを言われたら何も出来ないっ! 金ヅルは逃がしたくない!」
「そんなに『復讐者』って高額スポンサーなんすか。つか脚! 脚溶かしてくださいよ!」