閑話3
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「ただいま戻りましたぁ」
「ああおかえり。すまないが手伝ってもらえるか?」
ライブラの事務所へ帰るなり、書類の山に囲まれたスティーブンへ声を掛けられる。副官的位置に居るから処理しなければならない書類が多いのが分かるが、流石にちょっと多過ぎる気がした。
土産代わりに買ってきたケーキの入った箱を持ったまま彼の執務机へ近付き、書類の山の中から一枚を抜き取る。ちょうどレオが巻き込まれた集団昏倒の件に関するもので、おそらく山の一つは全てその集団昏倒と記憶喪失に関する調査報告書なのだろう。被害にあった者が多いから、自然と枚数も多くなっていた。
事件発生日から数日経っているが、その捜査は殆ど進んでいない事をシルビは知っている。他の案件もあるからそれにばかり時間を割いていられないというのと、やはり記憶が喪失されているが故に情報が殆どないからだ。
「レオナルドももうすぐ退院するだろう? そしたら彼からも話を聞かなくちゃならない。全く、やる事が多すぎて家に帰る暇も無いね」
「昨日は家へ帰りました?」
「……帰ったと思うかい?」
スティーブンの顔色は、悪い。
「――スティーブンさん」
机の端の辛うじて空いていた空間へケーキの箱を置いて、声を掛ける。書類から眼を逸らすのも時間のロスだとばかりのスティーブンがそれでも顔を上げ、シルビと眼を合わせて何故か頬を引き攣らせた。
書類の山を崩さないように体重を掛けて、スティーブンの隈へと手を伸ばす。こういうすぐ睡眠時間を削る馬鹿を知っている。正確には、『本を読んで睡眠時間を削る馬鹿の副官だった』ことがあった。
「えいっ」
「あぁああああああああ!」
パチン、と指を鳴らすと机の上に構成されていた書類の山が一つ燃えて崩れていく。灰すら残らず消えていくそれにスティーブンが絶叫して、ちょうど部屋へ戻ってきたクラウスが驚いていた。
衝撃的過ぎたのか完全に山が一つ無くなるまで動く事すら出来なくなかったスティーブンが、やがてぎこちなくシルビを見やる。
「な、なんてことを……」
「集団昏倒と記憶喪失の件については、貴方が仮眠を取り終えるまでに報告書を書いておきますね」
「は――?」
「原因にもちゃんと会ってきましたから、大丈夫です。最愛の兄弟に誓って大丈夫です」
スティーブンが間抜け顔を晒しているが、多分それだけ疲れているのだろうと思う事にした。
消したのはその集団昏倒と記憶喪失の件の書類だけだ。原因はもう確かめてきたし、彼に世界へ害をなす思想は無さそうだったので、今後特別問題視する必要も無いと思われる。
だからこんな案件に時間を割く必要は無い。割いてやぶ蛇を出す事も無かった。
「だから寝てください。寝ねぇと強制的に寝かせます」
「……何か誤魔化そうとしてないかい?」
「してるけど誤魔化されてくれると世界は平和です。あと睡眠不足とか俺が許さねぇ」
「……前から気になってたんだが、君のその家庭的な部分は何なんだ」
「ああおかえり。すまないが手伝ってもらえるか?」
ライブラの事務所へ帰るなり、書類の山に囲まれたスティーブンへ声を掛けられる。副官的位置に居るから処理しなければならない書類が多いのが分かるが、流石にちょっと多過ぎる気がした。
土産代わりに買ってきたケーキの入った箱を持ったまま彼の執務机へ近付き、書類の山の中から一枚を抜き取る。ちょうどレオが巻き込まれた集団昏倒の件に関するもので、おそらく山の一つは全てその集団昏倒と記憶喪失に関する調査報告書なのだろう。被害にあった者が多いから、自然と枚数も多くなっていた。
事件発生日から数日経っているが、その捜査は殆ど進んでいない事をシルビは知っている。他の案件もあるからそれにばかり時間を割いていられないというのと、やはり記憶が喪失されているが故に情報が殆どないからだ。
「レオナルドももうすぐ退院するだろう? そしたら彼からも話を聞かなくちゃならない。全く、やる事が多すぎて家に帰る暇も無いね」
「昨日は家へ帰りました?」
「……帰ったと思うかい?」
スティーブンの顔色は、悪い。
「――スティーブンさん」
机の端の辛うじて空いていた空間へケーキの箱を置いて、声を掛ける。書類から眼を逸らすのも時間のロスだとばかりのスティーブンがそれでも顔を上げ、シルビと眼を合わせて何故か頬を引き攣らせた。
書類の山を崩さないように体重を掛けて、スティーブンの隈へと手を伸ばす。こういうすぐ睡眠時間を削る馬鹿を知っている。正確には、『本を読んで睡眠時間を削る馬鹿の副官だった』ことがあった。
「えいっ」
「あぁああああああああ!」
パチン、と指を鳴らすと机の上に構成されていた書類の山が一つ燃えて崩れていく。灰すら残らず消えていくそれにスティーブンが絶叫して、ちょうど部屋へ戻ってきたクラウスが驚いていた。
衝撃的過ぎたのか完全に山が一つ無くなるまで動く事すら出来なくなかったスティーブンが、やがてぎこちなくシルビを見やる。
「な、なんてことを……」
「集団昏倒と記憶喪失の件については、貴方が仮眠を取り終えるまでに報告書を書いておきますね」
「は――?」
「原因にもちゃんと会ってきましたから、大丈夫です。最愛の兄弟に誓って大丈夫です」
スティーブンが間抜け顔を晒しているが、多分それだけ疲れているのだろうと思う事にした。
消したのはその集団昏倒と記憶喪失の件の書類だけだ。原因はもう確かめてきたし、彼に世界へ害をなす思想は無さそうだったので、今後特別問題視する必要も無いと思われる。
だからこんな案件に時間を割く必要は無い。割いてやぶ蛇を出す事も無かった。
「だから寝てください。寝ねぇと強制的に寝かせます」
「……何か誤魔化そうとしてないかい?」
「してるけど誤魔化されてくれると世界は平和です。あと睡眠不足とか俺が許さねぇ」
「……前から気になってたんだが、君のその家庭的な部分は何なんだ」