―Hello,World―
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バラバラに砕けたミミズの破片が警察によって集められる。今は凍っているからいいが、溶けたら酷い匂いだろうなと思いながら眺めていると、シルビに待っているよう告げて離れていた少年が戻ってきた。
少年の後ろには先程の男性と、偉丈夫な男性が並んでいる。
「まずは少年を助けてくれてありがとう」
「いえ。彼には俺も頼みたいことがあって死なれては困りましたので。それに人命に勝る代替品は無ぇでしょう?」
「全くだ。ところで彼から聞いたんだが、君はクラウス・V・ラインヘルツへ会いたがっていたらしいね」
「俺が所属している組織から、その方へ会いに行く話になっていたんです。彼はMr.ラインヘルツを知っているらしいので、道案内をして欲しいと……」
「所属組織? では君が『復讐者』から?」
言った覚えがないのにシルビの所属組織の名を挙げた男性に、シルビは言葉を続けずに視線を向けた。彼の後ろへ居た偉丈夫が前へと進み出てくる。
「私が秘密結社ライブラの代表。クラウス・V・ラインヘルツです。貴方が本日よりライブラへ派遣されることになっていたMr.グラマトでしょうか?」
礼儀正しく言ってきた彼に、シルビは自分がここまで連れてきた少年を見てからクラウスを見上げた。シルビよりも背の高い彼は目つきが悪いものの、別にシルビへ敵意を向けている訳ではないのだろう。
驚かなかったといえば嘘になる。こんな偶然があるものかと思ったのは、きっとごく当たり前のことだ。でなければ誰がたまたま出会った少年が目的の人物と直接的な知り合いだと思うものか。
「ぁ……っと。失礼しました。イタリア裏社会組織『復讐者』より、本日付けで派遣されてきました。シルビ・T・グラマトです。予定の時間より遅れてしまい、大変申し訳ありません」
「こちらこそこのような場での挨拶となってしまい申し訳ない。それに仲間を助けていただきありがとうございます」
「仲間」
「レオナルドも我々の同士です。ここでは何ですから、どうぞ一緒に事務所へ」
そう言って微笑むように目許を緩めたクラウスへ、彼の人柄を察する。どうやらレオナルドというらしい少年は、先程の男性と小声で何かを話し合っていた。
多分シルビのことを聞いているのだろうとは推測できたが、果たしてシルビの情報はどこまで彼らへ伝わっているのか。そういう事は今回人任せにしてしまったのでよく分からない。
唯一つ言える事は、随分遅刻してしまったがやっとライブラと接触出来たということだ。
『異界と交じり合ってしまった街だ』
『向こう側が盛り上がったのさ。いつか私がやったように』
『危ないよ』
『今の君が行って、何が出来る?』
『行かないで』
『ボクのせいだ』
『行ってらっしゃい』
元は『血界の眷属』、いわゆる吸血鬼といったこちらの世界へ有害な生物の討伐を目的としていた、牙狩りの面々が集まって結成された秘密結社ライブラ。その目的は今後千年の世界の未来を決めてしまうであろうヘルサレムズ・ロットの中で、世界の均衡を保ち続けることだ。
そんなシルビの知人達が注目するのも尤もな組織に、シルビが一番先に接触するというのも何だか妙な話である。
『復讐者』との提携に関しての、改めて提携内容や書類の確認を終えてシルビは向かいの椅子へ腰を降ろしている二人を見た。一人はライブラの代表であるクラウスで、もう一人はスティーブン・A・スターフェイスといって、このライブラの副官的存在らしい。『復讐者』からの書類へ目を通して少し機嫌が良さそうなのは、多分提携を組んだことで『復讐者』もスポンサーになったからだろう。日ごろからあんな騒動に飛び込んでいては、確かに金はあって困る事はない。
その代わり面倒事を抱き込んだことに、気付いていないよなぁと思いつつシルビは意を決して二人へ声を掛けた。
「少しよろしいですか」
「何かね」
「これから話す事は私事なのですが、念の為前もって話しておいてもよろしいでしょうか」
「私事?」
二人が不思議そうな顔をするのに、あんな騒動に身を費やしていてもあまり精神が擦り切れてはいないのだなとすこし感心する。『とある事件』直後にそんな目に遭っていたら、シルビはきっとただ泣いていただけだ。
「――……俺は、奪われた眼を探しています」
眼、と聞いて二人の反応はいささか過剰だった。
「眼、とは? 失礼ですが貴方の目はちゃんと見えているのでは」
「ああ、この眼は運良く奪われなかった眼なんです。ちょっと失礼」
椅子から立ち上がって、テーブルを避けてから四足の【白澤】の姿へと転換する。低くなった視界に床の汚れを見つけながら二人を振り返れば、二人は椅子を蹴倒す勢いで驚いていた。
それも当然と言えば当然だ。目の前で人が『化け物』になったのだから。
「それ、は……」
「このように俺は多くの眼があって、元は全部で九つの眼が揃っていました」
スティーブンの言葉を遮るように説明して、わき腹の“眼球の無い眼窩”を鼻先で示す。傍に来てそれを覗き込んだ二人が、信じられないとばかりに顔を見合わせてからシルビを見た。
「ですが残り三つの眼が足りない現状、俺は本来の実力を発揮出来ません。ライブラの皆様へご迷惑をお掛けすると思いますので、その事だけはお伝えしておきたく」
そんな眼で見られても、ちっとも嬉しくもない。
「君は、あ、いや、“貴方”は」
「……ええ、化け物です」
少年の後ろには先程の男性と、偉丈夫な男性が並んでいる。
「まずは少年を助けてくれてありがとう」
「いえ。彼には俺も頼みたいことがあって死なれては困りましたので。それに人命に勝る代替品は無ぇでしょう?」
「全くだ。ところで彼から聞いたんだが、君はクラウス・V・ラインヘルツへ会いたがっていたらしいね」
「俺が所属している組織から、その方へ会いに行く話になっていたんです。彼はMr.ラインヘルツを知っているらしいので、道案内をして欲しいと……」
「所属組織? では君が『復讐者』から?」
言った覚えがないのにシルビの所属組織の名を挙げた男性に、シルビは言葉を続けずに視線を向けた。彼の後ろへ居た偉丈夫が前へと進み出てくる。
「私が秘密結社ライブラの代表。クラウス・V・ラインヘルツです。貴方が本日よりライブラへ派遣されることになっていたMr.グラマトでしょうか?」
礼儀正しく言ってきた彼に、シルビは自分がここまで連れてきた少年を見てからクラウスを見上げた。シルビよりも背の高い彼は目つきが悪いものの、別にシルビへ敵意を向けている訳ではないのだろう。
驚かなかったといえば嘘になる。こんな偶然があるものかと思ったのは、きっとごく当たり前のことだ。でなければ誰がたまたま出会った少年が目的の人物と直接的な知り合いだと思うものか。
「ぁ……っと。失礼しました。イタリア裏社会組織『復讐者』より、本日付けで派遣されてきました。シルビ・T・グラマトです。予定の時間より遅れてしまい、大変申し訳ありません」
「こちらこそこのような場での挨拶となってしまい申し訳ない。それに仲間を助けていただきありがとうございます」
「仲間」
「レオナルドも我々の同士です。ここでは何ですから、どうぞ一緒に事務所へ」
そう言って微笑むように目許を緩めたクラウスへ、彼の人柄を察する。どうやらレオナルドというらしい少年は、先程の男性と小声で何かを話し合っていた。
多分シルビのことを聞いているのだろうとは推測できたが、果たしてシルビの情報はどこまで彼らへ伝わっているのか。そういう事は今回人任せにしてしまったのでよく分からない。
唯一つ言える事は、随分遅刻してしまったがやっとライブラと接触出来たということだ。
『異界と交じり合ってしまった街だ』
『向こう側が盛り上がったのさ。いつか私がやったように』
『危ないよ』
『今の君が行って、何が出来る?』
『行かないで』
『ボクのせいだ』
『行ってらっしゃい』
元は『血界の眷属』、いわゆる吸血鬼といったこちらの世界へ有害な生物の討伐を目的としていた、牙狩りの面々が集まって結成された秘密結社ライブラ。その目的は今後千年の世界の未来を決めてしまうであろうヘルサレムズ・ロットの中で、世界の均衡を保ち続けることだ。
そんなシルビの知人達が注目するのも尤もな組織に、シルビが一番先に接触するというのも何だか妙な話である。
『復讐者』との提携に関しての、改めて提携内容や書類の確認を終えてシルビは向かいの椅子へ腰を降ろしている二人を見た。一人はライブラの代表であるクラウスで、もう一人はスティーブン・A・スターフェイスといって、このライブラの副官的存在らしい。『復讐者』からの書類へ目を通して少し機嫌が良さそうなのは、多分提携を組んだことで『復讐者』もスポンサーになったからだろう。日ごろからあんな騒動に飛び込んでいては、確かに金はあって困る事はない。
その代わり面倒事を抱き込んだことに、気付いていないよなぁと思いつつシルビは意を決して二人へ声を掛けた。
「少しよろしいですか」
「何かね」
「これから話す事は私事なのですが、念の為前もって話しておいてもよろしいでしょうか」
「私事?」
二人が不思議そうな顔をするのに、あんな騒動に身を費やしていてもあまり精神が擦り切れてはいないのだなとすこし感心する。『とある事件』直後にそんな目に遭っていたら、シルビはきっとただ泣いていただけだ。
「――……俺は、奪われた眼を探しています」
眼、と聞いて二人の反応はいささか過剰だった。
「眼、とは? 失礼ですが貴方の目はちゃんと見えているのでは」
「ああ、この眼は運良く奪われなかった眼なんです。ちょっと失礼」
椅子から立ち上がって、テーブルを避けてから四足の【白澤】の姿へと転換する。低くなった視界に床の汚れを見つけながら二人を振り返れば、二人は椅子を蹴倒す勢いで驚いていた。
それも当然と言えば当然だ。目の前で人が『化け物』になったのだから。
「それ、は……」
「このように俺は多くの眼があって、元は全部で九つの眼が揃っていました」
スティーブンの言葉を遮るように説明して、わき腹の“眼球の無い眼窩”を鼻先で示す。傍に来てそれを覗き込んだ二人が、信じられないとばかりに顔を見合わせてからシルビを見た。
「ですが残り三つの眼が足りない現状、俺は本来の実力を発揮出来ません。ライブラの皆様へご迷惑をお掛けすると思いますので、その事だけはお伝えしておきたく」
そんな眼で見られても、ちっとも嬉しくもない。
「君は、あ、いや、“貴方”は」
「……ええ、化け物です」