―Cherchez l’idole―
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「いらっしゃいませぇ」
薬局のドアを開けて入ってきた客は父親と子供と思われる人類の親子だった。他の店でも買い物をしてきたのか既にどこぞの店の紙袋を抱えている。それが重そうだったので、シルビは声を掛けて調剤待ちの客用の丸椅子を運んだ。
「良ければ商品を見ている間は置いてください。重いでしょう?」
「ああ、どうもすみません」
「いえいえ、薬で気になることがあったら気軽にお声掛けください」
カウンターへ戻って、途中だったレジ脇に置いているお菓子の整理を続ける。元々店長の意向でレジの脇へキャンディや小さいガムを置いていたのだが、店長が店番中に勝手に食べる事があるので非常に困っていた。
置き場所を変えればいいのだろうと思わなくも無いが、商品を持ってレジへ来た客がふと目に付いて会計へ加えることを考えると、今の置き場所が絶好のポイントなのである。
目当ての物を見つけたらしい父子がカウンターへとやってきた。レジに置かれる商品は絆創膏と消毒液と眼帯。
「あ、父さんアレ欲しい!」
会計の最中に子供が指差したのは、先程シルビが整理したばかりのお菓子のケースに入っていた、何か色々なキャラクター物のお菓子である。店長が適当に納品させたもので、キャラクター名は何だったか。
「ブリームンだよ。ブリームン・バクスター!」
子供が叫ぶ名前を聞いてもサッパリだ。父親がそれに手を伸ばしてお菓子を手に取り、それから何故かケースの中を何か探している。父親も何か気になるキャラクターがあるのだろうかと不思議に思っていると、父親は残念そうに子供を見下ろした。
「一つしかないよ。これじゃあケインが悲しむだろう?」
「あー、じゃあボクが我慢する。あいつ誕生日だし」
「誕生日?」
思わず口を挟んでしまって、二人が思い出したようにシルビを見る。
「息子がもう一人いまして、今日誕生日なんです」
「それは、ありがたいことですね」
「? 『おめでたい』じゃないの?」
「解釈の違いかなぁ。お父さんお母さんにとっては、自分たちのところへ生まれてくれてありがとうってこと」
あとはその年まで生きてくれてありがとう。誕生日当事者にとっては、生んでくれてありがとうといったところか。
商品の精算をしながらシルビは先程お菓子を補充するのに脇へ置いていた箱を見やる。手を伸ばして箱を漁り、目的のものを見つけて精算済みの商品を入れた紙袋へそれも入れた。
これなら二つだ。
「はい。君の弟の誕生日と君が優しく育った事を祝って。弟さんの誕生日おめでとう」
「うわー、ありがとう!」
「いいんですか?」
「店長へ食われるよりは断然。お大事に」
「ありがとうございます」
手を繋いで帰っていく父子に、少し家族へ会いたくなった。
薬局のドアを開けて入ってきた客は父親と子供と思われる人類の親子だった。他の店でも買い物をしてきたのか既にどこぞの店の紙袋を抱えている。それが重そうだったので、シルビは声を掛けて調剤待ちの客用の丸椅子を運んだ。
「良ければ商品を見ている間は置いてください。重いでしょう?」
「ああ、どうもすみません」
「いえいえ、薬で気になることがあったら気軽にお声掛けください」
カウンターへ戻って、途中だったレジ脇に置いているお菓子の整理を続ける。元々店長の意向でレジの脇へキャンディや小さいガムを置いていたのだが、店長が店番中に勝手に食べる事があるので非常に困っていた。
置き場所を変えればいいのだろうと思わなくも無いが、商品を持ってレジへ来た客がふと目に付いて会計へ加えることを考えると、今の置き場所が絶好のポイントなのである。
目当ての物を見つけたらしい父子がカウンターへとやってきた。レジに置かれる商品は絆創膏と消毒液と眼帯。
「あ、父さんアレ欲しい!」
会計の最中に子供が指差したのは、先程シルビが整理したばかりのお菓子のケースに入っていた、何か色々なキャラクター物のお菓子である。店長が適当に納品させたもので、キャラクター名は何だったか。
「ブリームンだよ。ブリームン・バクスター!」
子供が叫ぶ名前を聞いてもサッパリだ。父親がそれに手を伸ばしてお菓子を手に取り、それから何故かケースの中を何か探している。父親も何か気になるキャラクターがあるのだろうかと不思議に思っていると、父親は残念そうに子供を見下ろした。
「一つしかないよ。これじゃあケインが悲しむだろう?」
「あー、じゃあボクが我慢する。あいつ誕生日だし」
「誕生日?」
思わず口を挟んでしまって、二人が思い出したようにシルビを見る。
「息子がもう一人いまして、今日誕生日なんです」
「それは、ありがたいことですね」
「? 『おめでたい』じゃないの?」
「解釈の違いかなぁ。お父さんお母さんにとっては、自分たちのところへ生まれてくれてありがとうってこと」
あとはその年まで生きてくれてありがとう。誕生日当事者にとっては、生んでくれてありがとうといったところか。
商品の精算をしながらシルビは先程お菓子を補充するのに脇へ置いていた箱を見やる。手を伸ばして箱を漁り、目的のものを見つけて精算済みの商品を入れた紙袋へそれも入れた。
これなら二つだ。
「はい。君の弟の誕生日と君が優しく育った事を祝って。弟さんの誕生日おめでとう」
「うわー、ありがとう!」
「いいんですか?」
「店長へ食われるよりは断然。お大事に」
「ありがとうございます」
手を繋いで帰っていく父子に、少し家族へ会いたくなった。