―拳客のエデン―
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血界の眷属、というのは有り体に言ってしまえばいわゆる『吸血鬼』である。細胞の奥底へ魔術式を書き込み、急激な再生能力と戦闘力を有した異界の存在。
こちら側を守る秘密結社ライブラの確実なる敵だ。ザップやクラウス、スティーブンは元々ヘルサレムズ・ロッドが出来る前からその吸血鬼退治の専門家、通称『牙狩り』だったらしい。
シルビも『牙狩り』という者達へ関与した経験が、過去に何度かあったと思う。些細過ぎる関与で確かな記憶ではないし、この場合の過去とは『百年前』も含めているのだがそれはさておき。
「つまりザップさんはその地下闘技場へ通っていながらも、オーナーに扮してた血界の眷属に気付かなかったと」
「そーなんじゃない? でもオレもクラウスさんが殴って出てくるまで気付かなかったし」
「でもその闘技場は閉鎖でしょ?」
「らしいっす」
となればオーナーに扮していたという血界の眷属は、暫くはその界隈へ姿を出さないだろう。話によればステゴロが好きな血界の眷属だったようだし、それならば尚更近付かずに時間を置いて戻ってくる気がした。静かに、こっそりと、正しく楽しみたいが為に。
そう考えたのはシルビだけではなかったらしく、スティーブンとクラウスも今は追求する意思は無さそうだった。
「他に痛てぇ場所はありませんか?」
「ありがとう。大丈夫だ」
「痛みを少し沈静化させただけですから、痛みが長引くようだったら病院へ行ってちゃんと診察を受ける事をお勧めします」
「ザップは……」
袖を治しながらクラウスが振り返った先のザップは、まだ屍のままである。多分彼の診察もクラウスはシルビへ求めているのだろうが、話を聞いた後では自業自得な気配が強くて診てやる気になれない。
そもそも、医療知識があると言うだけでシルビは医者ではないのだが。薬剤師だけれども。
「……後で絆創膏を渡しておくので大丈夫です! そうだクラウスさん。レモンパイがあるのですがどうですか?」
「絆創膏で治る怪我じゃねーし! いやまぁ気持ちは分かるけど」
「そうだクラウス。シルビがレモンパイを作ってきてくれたんだ。彼の料理の腕はいいね」
「とっても美味しかったですよ」
「二人も華麗にスルーっすね……。レモンパイって僕の分もありますか?」
突っ込むレオとやはり疲れていたらしいクラウスがレモンパイへ興味を示すのに、チェインが支度をしてもらおうとギルベルトの元へ向かう。スティーブンもチェインも絶賛してくれたが、アレは使ったレモンが良かったのだ。
「レモンパイって初めて食べるかも」
「そう? 普通のパイとあんま変わんねぇよ」
レオと話しているとギルベルトがレモンパイとお茶を二人の為に運んでくる。ザップの分は半分に切って、今日の努力者であるレオとクラウスの二人へ食べてもらった。
平和である。
こちら側を守る秘密結社ライブラの確実なる敵だ。ザップやクラウス、スティーブンは元々ヘルサレムズ・ロッドが出来る前からその吸血鬼退治の専門家、通称『牙狩り』だったらしい。
シルビも『牙狩り』という者達へ関与した経験が、過去に何度かあったと思う。些細過ぎる関与で確かな記憶ではないし、この場合の過去とは『百年前』も含めているのだがそれはさておき。
「つまりザップさんはその地下闘技場へ通っていながらも、オーナーに扮してた血界の眷属に気付かなかったと」
「そーなんじゃない? でもオレもクラウスさんが殴って出てくるまで気付かなかったし」
「でもその闘技場は閉鎖でしょ?」
「らしいっす」
となればオーナーに扮していたという血界の眷属は、暫くはその界隈へ姿を出さないだろう。話によればステゴロが好きな血界の眷属だったようだし、それならば尚更近付かずに時間を置いて戻ってくる気がした。静かに、こっそりと、正しく楽しみたいが為に。
そう考えたのはシルビだけではなかったらしく、スティーブンとクラウスも今は追求する意思は無さそうだった。
「他に痛てぇ場所はありませんか?」
「ありがとう。大丈夫だ」
「痛みを少し沈静化させただけですから、痛みが長引くようだったら病院へ行ってちゃんと診察を受ける事をお勧めします」
「ザップは……」
袖を治しながらクラウスが振り返った先のザップは、まだ屍のままである。多分彼の診察もクラウスはシルビへ求めているのだろうが、話を聞いた後では自業自得な気配が強くて診てやる気になれない。
そもそも、医療知識があると言うだけでシルビは医者ではないのだが。薬剤師だけれども。
「……後で絆創膏を渡しておくので大丈夫です! そうだクラウスさん。レモンパイがあるのですがどうですか?」
「絆創膏で治る怪我じゃねーし! いやまぁ気持ちは分かるけど」
「そうだクラウス。シルビがレモンパイを作ってきてくれたんだ。彼の料理の腕はいいね」
「とっても美味しかったですよ」
「二人も華麗にスルーっすね……。レモンパイって僕の分もありますか?」
突っ込むレオとやはり疲れていたらしいクラウスがレモンパイへ興味を示すのに、チェインが支度をしてもらおうとギルベルトの元へ向かう。スティーブンもチェインも絶賛してくれたが、アレは使ったレモンが良かったのだ。
「レモンパイって初めて食べるかも」
「そう? 普通のパイとあんま変わんねぇよ」
レオと話しているとギルベルトがレモンパイとお茶を二人の為に運んでくる。ザップの分は半分に切って、今日の努力者であるレオとクラウスの二人へ食べてもらった。
平和である。