―震撃の血槌―
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死傷者数百数万。正確な数は不明だと発表された後日、ブローディ&ハマーは入院していた。なんでもモンスタートラックを殴る際に、予定と違う殴り方をして負傷したらしい。
ちなみに救出されたレオは後頭部を五針縫う怪我だった。
「だからな嬢ちゃん。血液生活ってのは意外と楽しいっちゃ楽しいんだよ」
「流石に血液にはなったこと無ぇなぁ。あと嬢ちゃんって呼ぶの止めろぉ」
「ねえなんで仲良くなってんの? なんで仲良くなってんの!?」
「あ、抜糸終わったのかぁ?」
重症患者として入院しているハマーの見た目は包帯だらけだが、その中身であるデルドロは到って元気なものである。レオの後頭部の抜糸をするというので念の為に同行して、抜糸をしている間にハマーの病室へ来てデルドロと話していたら、抜糸を終えてきたレオに突っ込まれた。
一応デルドロは重罪犯罪者で、シルビは微妙に違うものの看守のような立場である。なのでデルドロの監視要員という意味合いもあって頻繁に訪れてはいた。
そうして何度も来ていると、自然と話し相手としてハマーかデルドロと話すことになる。そしてハマーは療養の為にも寝る必要があった。となると自然と話し相手が互いにデルドロとシルビしか居ない。
長い監獄生活で話し相手がハマーしかいなかったからか、デルドロは相手がシルビであっても気にせず喋り捲る。話題が犯罪歴自慢なのは物申したいが、聞き手に回るのは別に苦ではないので聞いていたら、どうやらそれで気に入られたらしかった。
「なんだよ。もう帰るのか?」
「レオ君の経過診察について来ただけだしなぁ。お前もハマーさん疲れさせねぇように少し休めよぉ」
「オレが休んだらこいつが死ぬだろーが」
「マグロか」
動きを止めたら死ぬというのは厄介だ。レオと一緒にハマーの病室を出て、ライブラの事務所へと帰る為に停めていたスクーターへ向かう。流石に抜糸したばかりの人間に運転させるわけにもいかず、シルビが運転席へと跨った。
そうしてレオを振り返れば、レオは所体無さげに立ったままだ。
「レオ君?」
「んー……シルビ、ってさ」
「ん?」
「……やっぱり何でもない」
何故か落ち込んでいるらしいレオに、身体を少し仰け反らせて考えてからシルビは口を開いた。
「俺が犯罪者と楽しげに話せるのは犯罪者を見慣れているからで、あの破壊作戦も実際のところ君の眼が無けりゃ成立しなかった作戦だぜぇ」
「え?」
「トラックのコース変更に俺の『第八の炎』……空間転移を使ったとしたら、あそこまで速度を落とす事は出来なかったんだよ。むしろスピードを落とせなかったと思う」
説明した話を繰り返すことになってしまうが、第八の炎で繋いだ空間は、勢いを保存してその先の空間へ繋がる。なので走ったままのトラックをそのまま普通に空間転移でコースへ侵入させた場合、加速していた可能性もあった。
それをレオが『神々の義眼』の力で強制的にでも“自力で進路変更”させた場合、進路変更の為に速度を自然と落とす事になる。つまりレオの行なった事は単なる進路変更でもなかったのだ。
「だからレオ君。君は役に立たなかったなんて事は全く無ぇんだよ」
何も言わないレオを見ながら言う。コレばっかりはシルビだけではなくライブラの他のメンバーだって分かっている筈だ。ただし、シルビの空間転移にそういう法則が働いている事までを知っているかどうかは不明だが。
だが知らずとも『進路を変えた』という点だけで彼らはきっと評価してくれる。ライブラとシルビはまだ短い付き合いだが、それはもう分かっていた。
「自分が戦えねぇことを厭うてる?」
「足手まといだろ?」
「少なくとも俺は足手まといだなんて思ってねぇよ。居るだけ『で』いいだなんて言わねぇけど、居るだけ『でも』良いとは俺なら言う」
「……ふーん」
「感動うっすいなぁおい。五年前に俺がコレ言われた時は感動したぞぉ?」
「五年前ったって、シルビは元からそーいう力があったんだろ?」
「……五年前は誰かに守ってもらわねぇと、一歩も動けねぇくらい弱かったよ」
それをどうにか眼を残り三個まで取り返して、ヘルサレムズ・ロットへ来たのだ。行かなくて良いと皆が言った。
それでも残りの『眼』の情報を求めて来たのは、やはり全ての力を『取り戻したい』からなのだろう。自分を、今のレオのように『足手まとい』の様に思ったから。
あれだけ『自分は求めていない』と主張していたものを、今は取り返す為に動いているのも滑稽な話だった。ハンドルへ寄りかかって、組んだ腕に額を押し付ける。
「足手まといだって悩む気持ちも分からねぇでもねぇけど、誰かが直接君に『足手まといだ』なんて言ったかぁ?」
「そりゃ言われてないけど……」
「言わないって事は、それは確実ってことじゃないってことだろぉ。だったら言われた時にもっと悩みなさい」
ちらりと見ればレオは釈然としない顔をしていた。
「……メンドクセーって思ってない?」
「……実は思ってる」
「ヒデーなオイ!」
「だって足手まといって思ってねぇんだもん。思ってねぇことにそう深く良い事なんて言えねぇよ」
正直に言ったら本気だと分かってもらえたのか、レオが呆れたように笑う。身体を起こして促せば、今度は素直にスクーターの後ろへと跨った。
ちなみに救出されたレオは後頭部を五針縫う怪我だった。
「だからな嬢ちゃん。血液生活ってのは意外と楽しいっちゃ楽しいんだよ」
「流石に血液にはなったこと無ぇなぁ。あと嬢ちゃんって呼ぶの止めろぉ」
「ねえなんで仲良くなってんの? なんで仲良くなってんの!?」
「あ、抜糸終わったのかぁ?」
重症患者として入院しているハマーの見た目は包帯だらけだが、その中身であるデルドロは到って元気なものである。レオの後頭部の抜糸をするというので念の為に同行して、抜糸をしている間にハマーの病室へ来てデルドロと話していたら、抜糸を終えてきたレオに突っ込まれた。
一応デルドロは重罪犯罪者で、シルビは微妙に違うものの看守のような立場である。なのでデルドロの監視要員という意味合いもあって頻繁に訪れてはいた。
そうして何度も来ていると、自然と話し相手としてハマーかデルドロと話すことになる。そしてハマーは療養の為にも寝る必要があった。となると自然と話し相手が互いにデルドロとシルビしか居ない。
長い監獄生活で話し相手がハマーしかいなかったからか、デルドロは相手がシルビであっても気にせず喋り捲る。話題が犯罪歴自慢なのは物申したいが、聞き手に回るのは別に苦ではないので聞いていたら、どうやらそれで気に入られたらしかった。
「なんだよ。もう帰るのか?」
「レオ君の経過診察について来ただけだしなぁ。お前もハマーさん疲れさせねぇように少し休めよぉ」
「オレが休んだらこいつが死ぬだろーが」
「マグロか」
動きを止めたら死ぬというのは厄介だ。レオと一緒にハマーの病室を出て、ライブラの事務所へと帰る為に停めていたスクーターへ向かう。流石に抜糸したばかりの人間に運転させるわけにもいかず、シルビが運転席へと跨った。
そうしてレオを振り返れば、レオは所体無さげに立ったままだ。
「レオ君?」
「んー……シルビ、ってさ」
「ん?」
「……やっぱり何でもない」
何故か落ち込んでいるらしいレオに、身体を少し仰け反らせて考えてからシルビは口を開いた。
「俺が犯罪者と楽しげに話せるのは犯罪者を見慣れているからで、あの破壊作戦も実際のところ君の眼が無けりゃ成立しなかった作戦だぜぇ」
「え?」
「トラックのコース変更に俺の『第八の炎』……空間転移を使ったとしたら、あそこまで速度を落とす事は出来なかったんだよ。むしろスピードを落とせなかったと思う」
説明した話を繰り返すことになってしまうが、第八の炎で繋いだ空間は、勢いを保存してその先の空間へ繋がる。なので走ったままのトラックをそのまま普通に空間転移でコースへ侵入させた場合、加速していた可能性もあった。
それをレオが『神々の義眼』の力で強制的にでも“自力で進路変更”させた場合、進路変更の為に速度を自然と落とす事になる。つまりレオの行なった事は単なる進路変更でもなかったのだ。
「だからレオ君。君は役に立たなかったなんて事は全く無ぇんだよ」
何も言わないレオを見ながら言う。コレばっかりはシルビだけではなくライブラの他のメンバーだって分かっている筈だ。ただし、シルビの空間転移にそういう法則が働いている事までを知っているかどうかは不明だが。
だが知らずとも『進路を変えた』という点だけで彼らはきっと評価してくれる。ライブラとシルビはまだ短い付き合いだが、それはもう分かっていた。
「自分が戦えねぇことを厭うてる?」
「足手まといだろ?」
「少なくとも俺は足手まといだなんて思ってねぇよ。居るだけ『で』いいだなんて言わねぇけど、居るだけ『でも』良いとは俺なら言う」
「……ふーん」
「感動うっすいなぁおい。五年前に俺がコレ言われた時は感動したぞぉ?」
「五年前ったって、シルビは元からそーいう力があったんだろ?」
「……五年前は誰かに守ってもらわねぇと、一歩も動けねぇくらい弱かったよ」
それをどうにか眼を残り三個まで取り返して、ヘルサレムズ・ロットへ来たのだ。行かなくて良いと皆が言った。
それでも残りの『眼』の情報を求めて来たのは、やはり全ての力を『取り戻したい』からなのだろう。自分を、今のレオのように『足手まとい』の様に思ったから。
あれだけ『自分は求めていない』と主張していたものを、今は取り返す為に動いているのも滑稽な話だった。ハンドルへ寄りかかって、組んだ腕に額を押し付ける。
「足手まといだって悩む気持ちも分からねぇでもねぇけど、誰かが直接君に『足手まといだ』なんて言ったかぁ?」
「そりゃ言われてないけど……」
「言わないって事は、それは確実ってことじゃないってことだろぉ。だったら言われた時にもっと悩みなさい」
ちらりと見ればレオは釈然としない顔をしていた。
「……メンドクセーって思ってない?」
「……実は思ってる」
「ヒデーなオイ!」
「だって足手まといって思ってねぇんだもん。思ってねぇことにそう深く良い事なんて言えねぇよ」
正直に言ったら本気だと分かってもらえたのか、レオが呆れたように笑う。身体を起こして促せば、今度は素直にスクーターの後ろへと跨った。